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2009年04月13日
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是(これ)に於(おい)て先生服部氏(はつとりし)に至(いた)り、君(きみ)の艱(かん)苦(く)を除(のぞ)かん事(こと)必(かなら)ず五年(ねん)の内(うち)にあり。然(しかれ)ども内外(ないぐわい)皆(みな)某(それがし)に任(にん)じ玉(たま)はゞ可(か)なり、聊(いささ)かたりとも君(きみ)の存意(そんい)を加(くは)ふる時(とき)は必(かなら)ず某(それがし)の微(び)志(し)を遂(と)ぐることを得(え)ず、然(しか)らば今日(こんにち)より辞(じ)するにしかざるなりと。服部氏(はつとりし)悦(よろこ)びて曰(いは)く、余(われ)不才(ふさい)にして一家(いつか)を安(やすん)ずることあたはず。衰弊(すいへい)爰(ここ)に至(いた)れり、術尽(じゆつつ)き思慮尽(しりよつき)て以(もつ)て子(し)に依頼(いらい)す。何(なん)ぞ我(わ)が愚(ぐ)意(い)を加(くは)えんや、興廃(こうはい)共(とも)に子(きみ)の一身(しん)にあり。子(きみ)十分(ぶん)に改革(かいかく)せよ、我(われ)唯(ただ)子(きみ)の丹精(たんせい)を仰(あほ)ぐのみ也(なり)と云(い)ふ。先生曰(いは)く、禄(ろく)千石余(ごくよ)にして千両余(りやうよ)の負債(ふさい)あり、是(これ)世禄(せろく)の名(な)有(あ)りと雖(いへど)も其(その)実(じつ)は已(すで)に他人(たにん)の有(もの)となれり。大夫(たいふ)の勢力(せいりよく)を以(もつ)て之(これ)を返(かへ)さず、今日(こんにち)を送(おく)るが故(ゆゑ)に、此(こ)の家(いへ)此(こ)の禄(ろく)を以(もつ)て我(わ)が物(もの)なりと思(おも)ふ事(こと)豈(あに)浅ましからずや。上(かみ)君恩(くんおん)の無量(むりやう)なることを知(し)り、常(つね)に節倹(せつけん)を守(まも)り、家(いへ)を存(そん)して永(なが)く君恩(くんおん)を報(ほう)ずるの忠勤(ちゆうきん)あるを以(もつ)て臣下(しんか)の道(みち)と為(な)すべし。然(しか)るに身(み)の奢侈(しやし)に流(なが)るゝをも知(し)らず、不足(ふそく)を生(しやう)ずと雖(いへど)も猶(なほ)其の本(もと)を顧(かへりみ)ず、他人(たにん)の財(ざい)を借(か)りて之(これ)を補(おぎな)ひ、元利増倍一家廃滅(がんりぞうばいいつかはいめつ)の大患(たいくわん)を慮(おもんばか)らず終(つひ)に家(いへ)を破(やぶ)り君恩(くんおん)を失(うしな)ふに至(いた)る、豈(あに)之(これ)を忠義(ちゆうぎ)の臣(しん)と謂(いは)んや。服部氏(はつとりし)伏(ふ)して以て其(そ)の罪(つみ)を謝(しや)す。先生曰(いは)く、
子(きみ)今(いま)其(そ)の過(あやま)ちを知れり、然(しか)らば其(そ)の過(あやま)ちを補(つぐな)はんことを勤(つと)むべし。其(そ)の事(こと)何(なん)ぞや必ず其(そ)の身(み)を責(せ)むべし。其(そ)の身(み)を責(せ)むること何(なん)ぞ。食(しよく)は必ず飯汁(はんじふ)に限り衣(い)は必ず綿衣(めんい)に限るべし、必ず無用(むよう)の事(こと)を好(この)むべからず。此(この)三箇条(かでう)を守(まも)るや否(いな)や。
曰(いは)く、是(こ)れ我(わ)が甘(あま)んずる所也(ところなり)、此(こ)の如(ごと)くして家(いへ)を興(おこ)すの道(みち)有(あ)らば何(なに)の幸(さいはひ)か之(これ)に如(しか)んや。是(これ)に於(おい)て先生其(そ)の家(いへ)の僕婢(ぼくひ)を呼びて曰(いは)く、
主君(しゆくん)の家事(かじ)既(すで)に貧困(ひんこん)に及(およ)び負債(ふさい)千余(よ)金(きん)に至(いた)れり、是汝等(これなんぢら)の明(あきらか)に知る所也(ところなり)、此(こ)の如(ごと)くにして三五年を経(へ)ば主家(しゆか)将(まさ)に覆(くつがへ)らんとす、汝等(なんじら)若(も)し無事(ぶじ)永続(えいぞく)の道(みち)を知らば夫(そ)れ明(あきらか)に予(よ)に告(つげ)よ。皆(みな)曰(いは)く、是(これ)鄙人(ひじん)の知る所にあらず、願(ねが)はくば子(し)それ之(これ)を計(はか)れ。先生曰(いは)く、
汝(なんぢ)主家(しゆか)の無事(ぶじ)を願(ねが)ひ予(よ)一人(いちにん)に計(けい)を請(こ)ふ、其(そ)の忠志(ちゆうし)賞(しやう)すべし、以来(いらい)主君(しゆくん)自(みづか)ら思慮(しりよ)を加(くわ)へず五年間の家事(かじ)を我(われ)に任(まか)せり、汝等(なんじら)も我(わ)が指揮(しき)に随(したが)ひ異存(いぞん)あるべからず、我(われ)と共(とも)に主家(しゆか)の安堵(あんど)を願(ねが)ひ勤(つと)むべきや、若(もし)異存(いぞん)あらば今(いま)速(すみやか)に暇(いとま)を請(こ)ふべしと。僕婢(ぼくひ)曰(いは)く、
主家(しゆか)に仕(つか)ふこと已(すで)に年(とし)あり。今(いま)其(そ)の危(あやう)きを見て退(しりぞ)くこと我等(われら)が願(ねがひ)にあらず、子(きみ)一身(しん)を労(ろう)して主家(しゆか)を安(やす)んぜんとす何(なん)ぞ命(めい)に随(したが)はざらんや。先生此(ここ)に於(おい)て其(そ)の入(い)る物(もの)を量(はか)り分度(ぶんど)を引去(ひきさ)り中分(ちゆうぶん)の活計(くわつけい)を立て無用(むよう)の雑費(ざつぴ)を省(はぶ)き周年(しうねん)の用度(ようど)を制(せい)し、借財(しやくざい)の貸主(かしぬし)を呼(よ)びて実情(じつじよう)を説諭(せつゆ)しこれを償(つぐな)ふに五年を約(やく)し、自(みずか)ら奴婢(ぬひ)に代(かは)りて家事(かじ)を勤(つと)め、服部氏(はつとりし)出(い)づれば若党(わかとう)となり、毎夜(まいよ)家(いへ)を治(をさ)め国(くに)を治(をさむ)る道(みち)を説(と)きて以(もつ)て服部氏(はつとりし)に教ふ。期年(きねん)にして借財(しやくざい)減(げん)じ五年にして千余金(よきん)の積借(せきしやく)皆洗(みなあら)ひ尽(つく)し残金三百両を余(あま)せり、一家の悦(よろこ)び譬(たと)ふるに物なし。先生此(こ)の三百両を持ちて服部(はつとり)夫妻(ふさい)に告(つ)げて曰(いは)く、
五年前(ぜん)子(きみ)の依頼(いらい)を辞(じ)し難(がた)く其(そ)の請(こひ)に応(おう)ぜしより、今日(こんにち)に至(いた)るまで昼夜(ちうや)心(こころ)を尽(つく)し、已(すで)に積(せき)借(しやく)皆済(かいさい)余金三百を残せり。畢竟(ひつきやう)予(われ)に任(にん)ずるに事固(ことかた)きが故(ゆゑ)に此(こ)の困難(こんなん)を除(のぞ)きたり。
依(よつ)て百金は君(きみ)の手元(てもと)へ備(そな)へ、別物(べつもの)として非常(ひじやう)の時(とき)国(こく)君(くん)へ奉仕(ほうし)の用(よう)となせ、又(また)百金は婦君(ふくん)是(これ)まで艱苦(かんく)を尽(つく)し夫家(ふか)の再興(さいこう)を勤(つと)められたる賞(しやう)として婦(ふ)君(くん)に与(あた)へ玉(たま)へ、婦(ふ)君(くん)も亦(また)此(これ)を別途(べつと)に備(そな)へ家(いへ)の再(ふたた)び衰(おとろ)へざるの予備(よび)となせ。猶(なお)百金(きん)を余(あま)せり、是(これ)は子(きみ)の志(こころざ)す所(ところ)の用(よう)に充(あ)てよと。
服部氏(はつとりし)大いに歎称(たんしよう)して曰(いは)く、我(わ)が家(いへ)已(すで)に将(まさ)に転覆(てんぷく)せんとす、子(きみ)の丹精(たんせい)に依(より)て今(いま)全(まつた)く再復(さいふく)せり、何(なに)を以(もつ)て其(そ)の恩(おん)を謝(しや)せんか、未(いま)だ其(そ)の処(しよ)する所(ところ)を得(え)ず。此(こ)の余(よ)金(きん)は我(わ)が金(かね)にあらず、子(し)の丹精(たんせい)に出(いづ)る所(ところ)なり、残(のこ)らず謝恩(しやおん)に充(みた)さんと欲(ほつ)すと雖(いへど)も、子(きみ)今(いま)我(わが)夫妻(ふさい)に別(わか)ちて後来(こうらい)の事(こと)を教(おし)ふ、又(また)辞(じ)すべからず、責(せ)めて此(こ)の百金(きん)は子(し)之(これ)を受(う)けて家業(かげふ)の一助(いちじよ)とせよ、子(し)家(いへ)に在(あ)り業(げふ)を励(はげ)まば許多(いくた)の富優(ふいう)をなさんに、五年家事(かじ)をなげうち我(われ)を危急(ききゆう)に救(すく)ひ永安(えいあん)を得(え)せしむ、此(こ)の百金(きん)何(なん)ぞ謝(しや)するに足(た)らんやと。先生大(おほ)いに悦(よろこ)びて曰(いは)く、
子(し)の言(げん)此(こ)の如(ごと)し、速(すみや)かに貴意(きい)に随(したが)ひ之(これ)を受(う)けん。且(かつ)一旦(たん)の憂(うれひ)は除(のぞ)きたりと雖(いへど)も、後年(こうねん)の定則(ていそく)なくんば又(また)艱難(かんなん)に至(いた)るべし、予(あらかじ)め、之(これ)を憂(うれ)ひ永年(ながねん)の分量(ぶんりやう)を調(しらべ)置(おき)たり。以来(いらい)千石(ごく)を以(もつ)て永年(ながねん)の分量(ぶんりやう)と定(さだ)め、三百石(ごく)を以(もつ)て余外(よぐわい)となし別途(べつと)に備(そな)へ非常(ひじやう)の奉仕(ほうし)の用(よう)に充(あ)てば、此(こ)の家(いへ)有(あら)ん限(かぎ)りは君(くん)公(こう)への忠義(ちゆうぎ)は言(い)ふに及(およ)ばず、一家(か)の貧窮(ひんきゆう)を生(しやう)ずることあるべからず、子(きみ)夫(そ)れ之(これ)を守(まも)れ。言(げん)畢(をは)りて退(しりぞ)き奴婢(ぬひ)を呼(よ)びて曰(いは)く、
主家(しゆけ)の危迫(きはく)已(すで)に極(きわま)り、予(よ)に託(たく)して之(これ)を再(さい)復(ふく)せしむ、汝等(なんじら)五年の間(あひだ)約(やく)を差(たが)へず我(われ)と共(とも)に艱(かん)苦(く)を尽(つく)せり、賞(しやう)するに余(あま)りあり、千余(よ)金(きん)の借債(しやくさい)今(いま)已(すで)に皆済(かいさい)せり猶(なお)百金(きん)を余(あま)せり、主人(しゆじん)予(よ)が愚(ぐ)誠(せい)を賞(しやう)して之(これ)を与(あた)ふ、其(そ)の志(こころざし)辞(じ)すべからず、予(われ)五年の間(あひだ)勤(つとむ)る所(ところ)一身(しん)の為(ため)に非(あら)ず何(なん)ぞ其(そ)の報(むくい)を受(う)けんや。汝等(なんじら)の勤(かん)苦(く)を賞(しやう)し之(これ)を分(わか)ち与(あた)へん。是(これ)我(われ)が与(あた)ふるにあらず、主人(しゆじん)の賜(たま)ものなり、謹(つつし)みて之(これ)を受(う)けよと、百金(きん)を分(わ)けて之(これ)を与(あた)ふ。
奴婢(ぬひ)一度(ど)は驚(おどろ)き一度(ど)は悦(よろこ)び主人(しゆじん)に恩(おん)を感(かん)ずること深(ふか)く、且(かつ)先生の慈心(じしん)限(かぎ)りなきを感動(かんどう)せり。先生服部氏(はつとりし)に辞(じ)して一物(もつ)をも受(う)けず、飄然(へうぜん)として家(いへ)に帰(かえ)れり。其(そ)の所行(しよぎょう)往々(わうわう)斯(か)くの如(ごと)し。





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最終更新日  2009年04月13日 06時00分47秒



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