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2016年06月07日
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平成28年6月8日現在
「報徳記を読む第3集- 報徳は国を興し民を安んずる大業である」(2016年4月発行)
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知床や釧路湿原などの自然をエッセーで書き、2010年に62歳で亡くなった作家の立松和平(わへい)(本名・横松和夫)さんが20年前、栃木県日光市の足尾銅山跡で始めた植樹を、札幌市に住む長男で作家の横松心平さん(43)が引き継いでいる。和平さんの曽祖父は足尾銅山の鉱山労働者だった。近代日本初の公害事件「足尾銅山鉱毒事件」を起こした加害側の責任として、父子2代で緑の再生を目指す。

 見渡す限りのはげ山は2500ヘクタール。4月下旬、心平さんは今年も足尾銅山跡の急斜面を登り、約千人の参加者と楽しそうに苗木を植えた。「息の長い運動。楽しまないと続かない」

 明治期、足尾銅山の鉱毒は緑を死滅させ、渡良瀬川流域の農地を汚染した。流域の農民はオホーツク管内佐呂間町などへの開拓移住を強いられた。和平さんは著書で「(曽祖父は)足尾の鉱山開発の先頭に立っていた。毒を流し続けていた側の人物であった」と書いた。曽祖父は後に宇都宮市に移り、和平さんや心平さんの故郷となった。

 和平さんは宇都宮市職員だった1970年代前半、有志で映画「鉱毒悲歌」を制作した。作家になってからも北海道新聞に連載した小説「恩寵(おんちょう)の谷」や「毒 風聞・田中正造」などで繰り返し鉱毒事件を書き続けた。

 96年に「足尾に緑を育てる会」を結成し、顧問になった。「100年で100万本」の植樹を目標に掲げた。「役所が予算を使って植えた千本より、千人が1本ずつ植えた苗木のほうが貴い」として、市民参加の植樹運動にこだわった。

 植樹を始めた96年は160人が参加して計100本の苗木を植えた。21年目の今年で延べ2万2千人が参加し、計9万2千本を植樹した。和平さんが亡くなってからは、心平さんが「顧問見習い」の肩書で遺志を継いだ。

 和平さんの死去後に起きた2011年の東日本大震災による東京電力福島第1原発事故。放射性物質は足尾の山にも降り、足尾のある日光市でも住宅、学校、農地などで除染が行われた。心平さんは、もし和平さんが生きていて原発事故について談話を求められたら、足尾鉱毒事件と闘った田中正造の言葉を引用したと想像する。「真の文明は山を荒らさず川を荒らさず村を破らず人を殺さざるべし」

 心平さんは北電泊原発(後志管内泊村)の廃炉を求める市民団体「泊原発の廃炉をめざす会」の世話人を務める。「国策や政官財の癒着など、福島の原発事故は足尾鉱毒事件と同じ。泊原発を再稼働することは、足尾や福島の教訓に学ばず、同じ轍(てつ)を踏むことにほかならない」と語気を強める。(東京報道編集委員 岩本茂之)





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最終更新日  2016年06月08日 01時06分19秒



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