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カテゴリ:報徳記&二宮翁夜話
4.アメリカ精製糖会社にて 社長は藤三郎と会話の中で、氷砂糖や砂糖の精製法をほとんど独力で工夫してやってきたことを知って非常に興味を持った。そこで藤三郎に聞いた。 社長 ミスター鈴木、これは検糖機という砂糖の糖分を検査する道具です。サンプルを決まった濃度の水溶液にしてこの検糖機に入れてのぞくと、サンプルの何パーセントの糖分が含まれているか、すぐ計算できます。あなたは砂糖のサンプルを見て、産地や糖分の含有量はどうやって調べますか 藤三郎 それは眼で見て、なめてみればわかります 社長 えっ、眼で見て、なめてみればわかる?ほんとうですか? 藤三郎 はい、日本人は、嘘はつきません 社長は膝をたたいて言った。 社長 おもしろい、それでは、早速それを一つやってもらおう。技師長、すぐその用意をしてくれたまえ 技師長 社長、そんなことは無理ですよ 社長 なあに君、日本の糖業発達の程度を正確に知っておくのも無駄ではなかろう。技師長、持ってきたまえ 技師長は部下に一つの箱を抱えさせて帰ってきた。その箱の中には三十種類ほどの砂糖の標本ビンが入っている。技師長は藤三郎の前のテーブルに一列に並べる。ビンには、ただ番号を書いた紙がはってある。技師長は並べ終るとその標本の産地と糖分量を記入した検糖表を社長に渡した。 社長 さあ、一つやってください 藤三郎は一番端のビンを取って、中の砂糖をほんの少し手のひらにあけて、じっと見てからちょっとなめる。 藤三郎 これはジャワのなになに工場の製品。純度は89パーセント 藤山氏が通訳し終わるや、藤三郎はすぐ次のビンの中身をいう。藤三郎の実験が十五ほどまでいった時、社長が言葉を発した。 社長 オーライ 藤山 どうしたのです?もういいのですか? 社長 三十のうち、十五まですっかり当たれば、もうよかろうじゃないか。実に不思議だ。不思議な人間だ!この検糖表を見給え。産地はもとより含有の糖分量もミスター鈴木の言ったとおりだ。ミスター鈴木、あなたは一体どうしてこんな不思議な技術を会得されたのですか? 技師長 私たちが緻密な検糖機械で精密な検査をして初めて知ることのできるのと同じ結果が、なんの機械も使わないで即座にわかるということは、どうしても理解できない 藤三郎 私は菓子屋の子として育ち四十年以上砂糖の臭いの中で暮らして来た。氷砂糖でも菓子製造でも主な材料は砂糖である。原料糖に含まれる糖分量の多少を見分けることは、営業の死活に関するほど大切なことです。自分の眼で見て、舌でなめて、永年経験をつんでいるうちに自然と正確にわかるようになったので、この技術は秘法ではない。多年の努力経験の集積の結果です 社長 ミスター鈴木、あなたは砂糖の中から生まれてきた男です お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018年01月20日 00時35分17秒
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