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2018年02月03日
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カテゴリ:鈴木藤三郎

しかしこのドイツから()機械(きかい)大切(たいせつ)(もの)で、これを(うみ)(おと)したら(かわ)りがないばかり、またドイツへ注文(ちゅうもん)して()ってくるには一(ねん)(ちか)もかかるので(ねん)には(ねん)をいれ()(あつか)わなければならない。藤三郎(とうさぶろう)指揮(しき)をして注意(ちゅうい)をして()あげをした。ようやく、荷物(にもつ)をはしけに(おろ)、ほっととした(とき)社員(しゃいん)一人(ひとり)が「しまった!」と(さけ)んだ。

 

藤三郎  どうしただ?

社員   社長(しゃちょう)、ミル・ローラを一本(いっぽん)()としちゃっただよ。

 

藤三郎(とうさぶろう)は、(つぎ)言葉(ことば)がでなかった。大変(たいへん)なものを()としてしまった。たとえローラ一本(いっぽん)でもなくなれば、せっかく機械(きかい)をすえつけても、運転(うんてん)できない。どうしても、ローラをひきあげなければならない。ローラをひきあげると()っても、内地(ないち)から潜水夫(せんすいふ)()んだりしていては、ふた(つき)もみ(つき)もかかる。土着(どちゃく)(みん)のなかから、(みず)をくぐるのに上手(じょうず)なものを(えら)んで、くぐらせてみたが、(なみ)(あら)いし、潮流(ちょうりゅう)がはげしくて、とてもローラの(しず)んでいるところまで、もぐってゆくことはできない。

(うみ)(うえ)からのぞくと、ローラは、海底(かいてい)マッチ(じく)のように、(ほそ)く、(ちい)さく()える。そしてそのローラのまわりには、フカが、(およ)ぎまわっている。

 

吉川   これア、やっぱり、内地(ないち)から潜水夫(せんすいふ)()れて()にゃいかんなぁ

藤三郎  ふむー

社員   社長(しゃちょう)現地(げんち)労働者(ろうどうしゃ)(なか)に、()(もぐ)りの上手(じょうず)親子(おやこ)がいるみたいだよ

藤三郎  よし、すぐ()わけをして(さが)しまい。(かね)はいくらかかってもかまわん。

ちゃっと()れてこい。

その機械(きかい)大切(たいせつ)なものだった。会社(かいしゃ)では工場(こうじょう)(つく)ったり、鉄道(てつどう)をしいたり、(おお)くのお(かね)使(つか)った(わり)砂糖(さとう)生産(せいさん)(だか)(すく)なく、次第(しだい)(かね)(こま)ってきた。(はや)新式(しんしき)のこの機械(きかい)工場(こうじょう)にすえつけ、さとうきびをしぼらなければならない。(みず)もぐりのうまい親子(おやこ)現地(げんち)労働者(ろうどうしゃ)(さが)だされてきた。父親(ちちおや)二人(ふたり)(たの)もしい兄弟(きょうだい)青年(せいねん)った。

 

藤三郎  (かね)はいくらでもくれてやるから、あれをひきあげてくれんか

 

父親(ちちおや)(しろ)()でにっこり(わら)って、(ふね)(うえ)から海底(かいてい)をのぞきこみ、まっ(ぱだか)になると、ひらりと(うみ)へとびこんだ(うみ)(なか)をまっすぐに(およ)ぎおりてゆく。そしてやがて()かびあがってきた。

 

父親   ダイジョウブ、シンパイナイ

今度(こんど)はすっかり支度(したく)をしてローラにかけるロープを(にぎ)(おとうと)がとびこんでいった。(おとうと)はもうローラの(ところ)まで()ったと(おも)ったのに、(いき)がきれたのか()(かえ)してきた。

(つぎ)には(あに)がとびこんだ。その(つぎ)にはまた(ちち)、といった具合(ぐあい)に、三(にん)フカなどちっとも(おそ)れず、海底(かいてい)へととびこんでいく。藤三郎(とうさぶろう)は、今度(こんど)こそ()(あせ)(にぎ)っていた。

 

藤三郎  この親子(おやこ)がダメならば、内地(ないち)から潜水夫(せんすいふ)()れてくるよりほかにしゃんな

いなぁ。しかしそれじゃ、今度(こんど)の、さとうきびをしぼる()にあやへん。なんとかひきあげてくれんかな

 

 何度(なんど)めか、(おとうと)海底(かいてい)へとびこんでいった。ぐんぐんローラに(ちか)づいてゆく。

 

藤三郎  もうちょっと、もうちょっと、ほら、もうひと(いき)だ。やった!

ついに、(おとうと)はローラにロープをひっかけた。すぐに(ちち)(あに)(うみ)へとびこみ、海底(かいてい)から()きあがってくる(おとうと)(うみ)中途(ちゅうと)()っていて、(おとうと)身体(からだ)(あに)(うえ)へつきあげる。(ちち)がまたその(うえ)()っていて(おとうと)身体(からだ」)をつきあげる。そうしないと、(おとうと)(なが)水中(すいちゅう)にもぐっているので、(みず)へあがってくるまでに(いき)()れてしまうのだ。(にん)の動作は、(かる)わざ()のように、ぴったり呼吸(こきゅう)があっていた。

 

藤三郎  ありがとう。よくやってくれた

 

藤三郎(とうさぶろう)(ふね)へあがってくる(おとうと)()を、強く(つよく)(にぎ)りしめた。






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最終更新日  2018年02月03日 09時40分29秒



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