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2018年05月06日
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カテゴリ:鈴木藤三郎
 
 
 
 荒地あれちちからをもって荒地あれちをひらく」の報徳ほうとく仕法しほう原理げんり家業かぎょう適用てきよう

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母    才助(さいすけ)(さい)(すけ)()きろよ()きろよ

藤三郎  うーむ、うー

母    才助(さいすけ)、おとっあんおこってんぞ、(はや)()きろよ

藤三郎  うーむ

母    報徳(ほうとく)もいいが(よる)(おそ)えじゃあ、こまんのうー

おとっあん、ご(はん)()べねえで()ってんだ、おこってんから(はや)()きてこいよ

藤三郎  はいよ、(また)寝坊(ねぼう)しちゃったか

父    なあ才助(さいすけ)、ゆうべも(また)(おそ)かったが、報徳(ほうとく)結構(けっこう)だがナ、お(まえ)みてえに朝寝坊(あさねぼう)じゃあしょうがねえ。朝寝(あさね)報徳(ほうとく)なんてあんめえ

藤三郎  どうもすみません。ただね、お(とっ)あん、()勘弁(かんべん)てことをいいますね、(わた)しゃあこのごろ(すこ)(かんが)えてんですが、物事(ものごと)には順序(じゅんじょ)がある。

今年(ことし)(ひと)つ、じっくり(かんが)えて、来年(らいねん)から計画(けいかく)()てべえ、理屈(りくつ)いうようです

まねえですが、これが(わたし)朝寝(あさね)報徳(ほうとく)ってやつで

父    馬鹿(ばか)()うでねえ、報徳(ほうとく)朝寝(あさね)報徳(ほうとく)なんてありっこねえ二宮(にのみや)さんをみろ

藤三郎  まあ、そうおこらねえでくだせえ、今年(ことし)のうちに来年(らいねん)計画(けいかく)()て、まず(わた)しあ、()()(むし)になり()

母    (なん)だその()()(むし)ってなあ!

藤三郎  明治(めいじ)(ねん)、ことしまでのことは、まず(さき)()のことだとスッパリ()りすて、来年(らいねん)の一(がつ)元旦(がんたん)から、(わたし)紀元(きげん)(ねん)としますよ

父    (なに)来年(らいねん)なんて言わねえで、今日(きょう)からやったらよかんべえ!

藤三郎  まあ、いそがねえで(くだ)さい。計画(けいかく)段取(だんど)りが出来(でき)なきゃあ、しょうがねえ。(わた)しあお(とう)さん、お(ちゃ)()めますよ。製茶(せいちゃ)はやめてこの菓子屋(かしや)一本(いっぽん)で、うちの家業(かぎょう)を立ててきます。この一本(いっぽん)やりで(すす)決心(けっしん)をしました。

父    そりあいいが!

藤三郎  しばらく()ていて(くだ)さいよ、その(かわ)来年(らいねん)からお(とっ)つあんあんまり(はたら)きすぎるなんて、心配(しんぱい)しねえ(よう)にね

母    そんだけどナ、朝寝坊(あさねぼう)じゃあしようがねえのう

藤三郎  (かあ)さん、このごろね、浜松(はままつ)に「眼覚(めざま)時計(とけい)」ちうのが()たそうだ。浜松(はままつ)宮代屋(みやしろや)って(みせ)にあるちうで新村(しんむら)さんと一緒(いっしょ)()にゆくことにしてんだよ

母    (なん)だ、その眼覚(めざま)時計(とけい)ちうなー

藤三郎  (あさ)の五()()きるならよ、その五()になんとの、時計(とけい)がひとりでに、(なに)もしねえでも、ヂリヂリヂリって()()しての、その(おと)(ねむ)りをさますように仕掛(しか)けてあんそうだ

父    そんなものができたのか

母    ほんとかのー

 一年間(ねんかん)菓子屋(かしや)売上金(うりあげきん)調(しら)べると、一三五〇(えん)一方(いっぽう)(いえ)経費(けいひ)は、二六〇(えん)、まず、この(いえ)経費(けいひ)(きり)つめは出来(でき)ないかと、家計(かけい)整理(せいり)から(はじ)めた。そこで五〇(えん)節約(せつやく)()()ることになったこの五〇(えん)自分(じぶん)努力(どりょく)(くわ)えて、(だい)(ねん)一〇〇(えん)(のこ)そう計画(けいかく)がたった。その結果(けっか)、その(とし)一九〇〇(えん)売上(うりあ)げて予定(よてい)(どお)一〇〇(えん)(のこ)した

 (だい)年度(ねんど)はこの一〇〇(えん)に、(さら)一五〇(えん)()して二五(えん)利益(りえき)()ようと計画(けいかく)()てた。そのためには、二〇〇〇(えん)売上(うりあ)げをすれば、七分(しちぶ)利益(りえき)見込(みこ)めばよいことになる。これを一(わり)利益(りえき)として計算(けいさん)すると、品物(しなもの)はうんと(やす)くしても、()勘定(かんじょう)になる。こうして(だい)年度(ねんど)は、品物(しなもの)(やす)くしたので、売上(うりあ)げは()えて二〇〇〇(えん)()(てい)三五〇〇(えん)売上(うりあ)げた。かくして五年目(ねんめ)には鈴木(すずき)菓子屋(かしや)売上(うりあ)げは、(だい)年度(ねんど)二〇〇〇(えん)の五(ばい)の一万円(まんえん)にのし(のぼ)った。こうなるとわずかに五(ふん)利益(りえき)見込(みこ)むだけで充分(じゅうぶん)ということになったのである。()()(むし)()()いつくしたのである。

()()分度(ぶんど)は、しかと(まも)られて(くる)いはなかった。森町(もりまち)菓子屋(かしや)は、(つぎ)煙草(たばこ)()にうつる(とき)()たのである。(すず)木藤(きとう)三郎(さぶろう)(こおり)砂糖(ざとう)製造(せいぞう)(こころざ)し、その精製(せいせい)日夜(にちや)研究(けんきゅう)(かさ)ねるに至ったのは、明治(めいじ)一五(ねん)(かれ)二八(さい)(とき)のことである






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最終更新日  2018年05月06日 07時56分22秒



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