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カテゴリ:鈴木藤三郎
「荒地の力をもって荒地をひらく」の報徳仕法の原理を家業に適用 母 才助、才助起きろよ起きろよ 藤三郎 うーむ、うー 母 才助、おとっあんおこってんぞ、早く起きろよ 藤三郎 うーむ 母 報徳もいいが夜遅えじゃあ、こまんのうー おとっあん、ご飯食べねえで待ってんだ、おこってんから早く起きてこいよ 藤三郎 はいよ、又寝坊しちゃったか 父 なあ才助、ゆうべも又遅かったが、報徳も結構だがナ、お前みてえに朝寝坊じゃあしょうがねえ。朝寝の報徳なんてあんめえ 藤三郎 どうもすみません。ただね、お父あん、寝勘弁てことをいいますね、私しゃあこのごろ少し考えてんですが、物事には順序がある。 今年あ一つ、じっくり考えて、来年から計画を立てべえ、理屈いうようです まねえですが、これが私の朝寝の報徳ってやつで 父 馬鹿言うでねえ、報徳に朝寝の報徳なんてありっこねえ二宮さんをみろ 藤三郎 まあ、そうおこらねえでくだせえ、今年のうちに来年の計画を立て、まず私しあ、菜の葉の虫になり切る 母 何だその菜の葉の虫ってなあ! 藤三郎 明治九年、ことしまでのことは、まず先の世のことだとスッパリ切りすて、来年の一月元旦から、私の紀元一年としますよ 父 何も来年なんて言わねえで、今日からやったらよかんべえ! 藤三郎 まあ、いそがねえで下さい。計画と段取りが出来なきゃあ、しょうがねえ。私しあお父さん、お茶は止めますよ。製茶はやめてこの菓子屋一本で、うちの家業を立ててきます。この一本やりで進む決心をしました。 父 そりあいいが! 藤三郎 しばらく見ていて下さいよ、その代り来年からお父つあんあんまり働きすぎるなんて、心配しねえ様にね 母 そんだけどナ、朝寝坊じゃあしようがねえのう 藤三郎 お母さん、このごろね、浜松に「眼覚し時計」ちうのが出たそうだ。浜松の宮代屋って店にあるちうで新村さんと一緒に見にゆくことにしてんだよ 母 何だ、その眼覚し時計ちうなー 藤三郎 朝の五時に起きるならよ、その五時になんとの、時計がひとりでに、何もしねえでも、ヂリヂリヂリって鳴り出しての、その音で眠りをさますように仕掛けてあんそうだ 父 そんなものができたのか 母 ほんとかのー 一年間の菓子屋の売上金を調べると、一三五〇円、一方家の経費は、二六〇円、まず、この家の経費の切つめは出来ないかと、家計整理から始めた。そこで五〇円の節約が出来ることになった。この五〇円に自分の努力を加えて、第一年は一〇〇円を残そうと計画がたった。その結果、その年は一九〇〇円売上げて予定通り一〇〇円残した。 第二年度はこの一〇〇円に、更に一五〇円を増して二五〇円の利益を得ようと計画を立てた。そのためには、二〇〇〇円の売上げをすれば、七分の利益を見込めばよい、ことになる。これを一割の利益として計算すると、品物はうんと安くしても、合う勘定になる。こうして第二年度は、品物を安くしたので、売上げは増えて、二〇〇〇円の予定が三五〇〇円を売上げた。かくして五年目には鈴木菓子屋の売上げは、第一年度の二〇〇〇円の五倍の一万円にのし上った。こうなるとわずかに五分の利益を見込むだけで充分ということになったのである。菜の葉の虫は菜の葉をくいつくしたのである。 菜の葉の分度は、しかと守られて狂いはなかった。森町の菓子屋は、次に煙草の葉にうつる時が来たのである。鈴木藤三郎が氷砂糖の製造を志し、その精製に日夜研究を重ねるに至ったのは、明治一五年、彼が二八歳の時のことである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018年05月06日 07時56分22秒
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