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カテゴリ:尊徳先生の世界
二宮翁夜話【70】ある人が、道を論じて筋道が通っていなかった。尊徳先生がおっしゃった。
「あなたの説は、悟道と人道と混同している。悟道をもって論ずるのか、人道をもって論ずるのか、悟道は人道に混同してはならない。なぜかといえば、人道のよしとするところは、悟道にいわゆる三界城(迷いの世界)である。悟道を主張すれば、人道は軽蔑すべきである。その間を隔てること、天地と雲泥のようである。だから先にその居場所を定めて、それから後に論ずるがよい。居場所を定めないと、目がなき秤(はかり)で重さを量るようで、終日弁論しても、その当否を知ることはできない。悟道というのは、たとえば今年は不作であろうと、まだ耕さない前に観ずるようなことをいう。これを人道に用いて不作であるから、耕作を休もうというのは、人道ではない。田畑は開拓してもまた荒れるのは自然の道であると見るのは、悟道である。そして荒れるからといって開拓しないのは、人道ではない。川のそばの田畑は洪水があれば流失するということを平日に見るのは悟道である。そうかといって耕さず肥料をやらないのは、人道ではない。 悟道とはただ自然の行くところ見るだけであり、人道は行き当る所まで行くべきものである。論語に、父母につかえては繰り返しいさめ、その志が通じないときは、敬って違わない、努力して怨まない、とある。これが人道の極地を尽したというべきだ。俳句にも「いざさらば雪見にころぶ所まで」という。これがその心である。だから私は常に言うのだ。親を看病して、もはやおぼつかないなどと見るものは、親子の至情を尽すことはできない。魂が去って体が冷えて後も、まだ全快あろうかと思う者でなければ、尽すと言ってはならない。だから悟道と人道とは混合してはならない。悟道はただ、自然の行くところ観じ、そして勤めるところは、人道にある。人間の道とするところは、仏教にいわゆる三界城裏(迷いの世界)の事である。十方空を唱える時は、人道は滅するであろう。善知識(僧侶)を尊び、娼妓(しょうぎ)を賤しむのは迷いである。そうはいってもこのように迷わなければ人倫は行われない。迷うが故に人倫は立つのである。だから悟道は人倫に益はない。そうであっても、悟道でなければ、執着を脱する事はできない。これが悟道の妙である。人倫はたとえば繩をなうようなものだ。よりがかかるのをよしとする、悟道はよりを戻すようなものだ。だからよりを戻すことをもって善とする、人倫は家を造るようなものだ、だから丸木を削って角材とし、曲ったのをためて直とし、長いのを切って短かくし、短いのを継いで長くし、穴をうがって溝を掘り、そして家を作るのである。これはすなわち迷うが故に三界城内の仕事である。それを本来なき家なりと破るのは悟道である。破って捨てる故に十方空に帰するのである。しかし、迷いといい悟りというのは、まだ徹底していない。その本源を極めるならば迷いも悟りもともとない。迷いといえば悟りと言わざる事を得ない。悟りといえば迷いと言わざる事を得ない。本来迷いと悟りで一円の世界である。たとえば草木のように、一粒の種から生じて、あるいは根を生じて土中の潤いを吸って、あるいは枝葉を発して大気の空気を吸い、花を開いて実を結ぶ、これを種から見るときは迷いというべきだ。そうかといって、秋風にあえば枯れはて本来の種に帰る。種に帰ったといっても、また春陽にあえば枝葉花実を発生する、そうであれば、種となったのが迷いか、草となったのが迷いか、草に成ったのか本体か、種になったのが本体か、これに因ってこれを観るに、生ずるのも生ずるのではない、枯れるのも枯れるのではない。そうであれば無常も無常ではなく有常も有常ではない。皆旋転して止まない世界に住するものであるからである。私の歌に「咲けばちりちれば又さく年毎に詠(ナガ)め尽せぬ花のいろいろ」と詠んだのもその心だ。一笑するがよい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019年05月31日 01時44分03秒
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