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2020年03月20日
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カテゴリ:遠州の報徳運動
「南方農地開発の問題」より
 「南方農地開発の問題」は「農林水産技術協会」において講演した記録で昭和19年(1944年)10月25日発行とある。鳥居信平は1938年台湾製糖株式会社の取締役を退任・帰京した。1939年「興亜院技術委員会」水利関係の委員会委員となり、1940年台湾製糖の特別参与として東京支社長を務めた。さらに1941年には「農地開発営団」副理事長に、1942年に「科学技術審議会」に就任している。文中「大東亜戦の幕が切って落とされた」と時代的背景がうかがわれる一節がある。
信平は、大正7年にフランス領インドシナ、オランダ領ジャワ、イギリス領ビルマなどの水利施設を視察し、大正8年から9年にかけても視察している。「話は多少古びておりますが」とあり、その時の視察をベースに、台湾の農地開発50年とタイ、ジャワの農地開発事業、南方諸地域における新たな農地開発について「一考察」を話したいとする。
 台湾の農地開発について、糖業改良の水利事業、河川整理、蓬莱米の生産、製糖会社の農地改良農場建設、大農具の使用、嘉南大圳水利事業について述べ、製糖会社の農地改良農場建設では「サトウキビ耕作地の排水量決定や灌漑用水量の決定は重要で、我が国では水稲用水量の研究は見るべきものがあったが、サトウキビの用水量については研究もデータもなかった。各製糖会社の試験の結果、台湾としての標準をまとめた。」と述べる。大農具の使用では「土地開墾、土地改良のためにスチームプラウやトラクターを用いて成績を上げたのは台湾が第一」とする。嘉南大圳では、「農業土木工事としては屈指の事業」で「三年輪作を灌漑水の理論的配分によって、計画的農業生産を遂行」し「農地の開発利用という見地から実に立派な事業」と評価する。
 タイの農業開発事業については、大河川と農業発達、豊凶常ならざる米作などについて述べ、「自然条件に関して深い考察が払われて経済的に経営されている」と観察する。ジャワの農地開発事業では、「私がジャワを視察したのは大正7年」とある。台湾製糖の山本悌次郎に随伴で、ジャワ島の水利及び農業施設を視察した。ジャワの農業水利は世界的に完備していて、農業水利、制度等を視察した模様が詳しく報告されている。人材の項目では、水利開発については調査、設計、工事に関係する技術者はヨーロッパ本国の大学出身者で技術者・研究者として優秀な人が配置され、各試験場では学術だけでなく応用についても立派な仕事をしている。特に土壌学者が基礎研究を行い、土地利用の基礎的化学技術に参画している。「特に学者も技術家も研究家も世界有数の人たちをこれに当たらしめた」と指摘しつつも「根本問題として、白人自体の利益のための計画開発」とし、日本においては「先住民と農業開発による共栄の目的を貫徹できる施設」を設けるべきと言及していることが注目される。鈴木藤三郎が台湾製糖会社に残した「両得農業法草案」の考え方を受け継いでいることがわかる。





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最終更新日  2020年03月20日 06時17分05秒
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