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カテゴリ:遠州の報徳運動
三遠農学社の八老農 松嶋授三郎(まつしま・じゅさぶろう)
「翁の余徳」45,46ページにおいて松島十湖が松嶋授三郎について、その事績を述べている。十湖は俳人だけあって、描写が端的・的確で文章がわかりやすい特徴がある。時系列で文章を並べなおし、地文をひらかなにして読みやすくすると次のようになる。 ・松嶋授三郎君は天保7年小笠郡掛川町に生れ、松島家に養われて浜名郡豊西村に成長した。後に故あって引佐郡伊平村に移り薬舗を業とする。資性、剛健壮にして農学と報徳学とを究め、かたわら禅学をおさめる。 ・明治初年、天龍川の堤防が決潰し、沿岸の民がその災いにかかるや、授三郎は神谷與平次氏と共にみずから鍬や鋤をとって督励する事、数月、衆はその指示に頼って初めて安堵した。 ・明治12年居村、伊平の地において野末九八郎氏等とあいはかって農学誠報社を設けて風俗の改進と実業の発達とを図る。 ・明治15年9月西遠農学社を興し、続けて気賀・奥山の両所に支社を設置する。十湖は当時たまたま職を同郡に奉じた。そこでつぶさに調査書を作成し県庁に報告した。時の県令及び書記官は大いに同社の業を称賛し、維持金をたまわった。 ・明治18年7月天竜川の堤防が再び大いに壊れ、良田万頃浸水する事数か月。そのため苗が腐蝕し、農民はみな憂えた。授三郎は卒先して東西に奔走し、苗2万5千把を収集してこれを寄贈した。被害地の民は蘇生の想いをなして、初めて愁眉を開くことができた。 ・以来、社運ますます隆盛におもむき、会員の所在は遠三両州十数群に亘る。そこで改めて三遠農学社と称した。すると1年もしないで長足の進歩をなし、今や会員総て七千、その区域2府16県、至る所として君が徳行に心服しないものはいない。 「翁の余徳」45,46ページ 遠陽ノ土気候煦ニシテ地味肥沃夙ニ農産ヲ以テ著ル。而も人情敦厚動モスレバ旧習ニ泥ムノ弊アリ。君此際ニ立チ斯業ノ改良ヲ以テ献身的事業トナシ孜々トシテ各所ニ講説スルモノ十年一日ノ如ク然リ。宣ナル哉。徳孤ナラズ遂ニ能ク同志ノ士ト共ニ一世ヲ風靡シタル事ヤ。而シテ君ガ生前ノ偉業タル之ヲ訳述スルニ暇アラズト雖モ蓋明治十二年居村伊平ノ地ニ於テ野末九八郎氏等ト相謀リ農学誠報社ヲ設ケテ風俗ノ改進ト実業ノ発達トヲ図リシニ胚胎ス。降テ明治十五年九月西遠農学社ヲ興シ続テ気賀奥山ノ両所ニ支社ヲ設置スルヤ、余当時適々職ヲ同郡ニ奉セリ。故ヲ以テ備ニ状ヲ具ス時ノ県令及ビ書記官大ニ同社ノ業ヲ賛シ、賜ハルニ維持金若干ヲ以テセラル。爾来社運益隆盛ニ趣キ会員ノ所在遠三両州十数群ニ亘ル。依テ改メテ三遠農学社ト称ス。然ルニ期年ナラズシテ長足ノ進歩ヲナシ今ヤ会員総テ七千其区域二府十六県至ル所トシテ君ガ徳行ニ心服セザルハナシ。 是ヨリ先キ明治ノ初年天龍河堤決潰シ、沿岸ノ民、其災ニ罹ルヤ、君神谷與平次氏ト共ニ親ラ耒耟ヲ執リ督励スル事数月衆頼テ初メテ其堵ニ安ズ。後十八年七月再ビ大ニ壊レ良田万頃浸水スル事旬余為メニ早秧腐蝕シ民皆靑色タリ君乃チ卒先東西ニ奔走シ残苗二万五千把ヲ収集シテ之ヲ寄贈ス。被害地ノ民蘇生ノ想ヲナシ初メテ愁眉ヲ開クヲ得タリ。 君天保七年ヲ以テ小笠郡掛川町ニ生レ松島家ニ養ハレテ浜名郡豐西村ニ長ス。後故アリテ引佐郡伊平村ニ移リ薬舗ヲ業トス。資性剛健壮ニシテ農学ト報徳学トヲ究メ、傍ラ禅学ヲ脩ム。而シテ時ニ或ハ道歌俳句ヲ作リ悠々自適セリ。明治三十一年一月病革リ遂ニ起タズ。享年六十有三、茲ニ本日ヲトシ葬儀ノ式ヲ行フ。遠近其訃ヲ伝聞シ来リ会スル者二千人。法名顕功院勸農懋德居士。遺骸ハ不日豊西村羽鳥源長院境内先塋ノ傍ニ瘞ムトイフ。君三男二女孫数人アリ。余君ト交ル事久シ。乃チ君ガ偉業ヲ紹術シ謹ミテ其霊ヲ吊フ。嗟呼顕幽堺ヲ異ニスト雖モ、君ノ神霊遺骨ト共ニ永ク此地ニ留リ農耕及報徳ノ教ヲ冥護シテ天地ト悠久ナラン事ヲ冀望ス敬白。 明治三十一年一月二十五日 松 島 十 湖 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年04月14日 03時59分48秒
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