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2021年02月26日
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「旱魃(かんばつ)と水源」
鳥居信平は、徳島県技師時代「徳島県農会報」七二号(一九一三年六月)に「支那国山西省文水葡萄に就て」という寄書、七五号(一九一三年九月)に「旱魃と水源」という「意見」を寄稿しています。「文水葡萄に就て」の前書きには、「先日鈴木君が来訪し果樹園芸の事に及んで感興が尽きなかった。私が明治四三年清国に渡った際の見聞を綴った支那果樹栽培調査書のうち山西文水葡萄の未定稿の書類を鈴木君の請いにまかせ本紙に寄せ書きする。品種については実物の記載にとめ、まだ学理上の研究の域に達しない」とあり、紅葡萄、白葡萄、牛仍(ニウナイ)葡萄、瓶児(ビンルー)葡萄、西洋葡萄、夏葡萄の六種類が精細なスケッチで描写されています。
「旱魃と水源」中、徳島県北方の吉野川流域では「河床より数十尺下げ地下水を聚集すべき桶管を埋設」する方法が行われている、「河床の護岸まで掘削し地下水を下流に流出」させないようにダムを埋設し耕作地に導水するという方法に言及していることが注目されます。これは、後に台湾での地下ダムの設置の発想の原点になったように思料されます。また「揚水機にあっては、その水源が河川あるいは地下水等によるも、帰するところ耕地に接近して水源を得、その工費が河川分水または溜池の設備費よりも三分の一ないし四分の一を以て施行できる場合には揚水機灌漑も適当な一方法と言うことができる。地勢によって数種の水源中ただ一種に帰すより外にやむを得ない場所にあってはその一水源を利用し経済と比較することを得ないが、もし溜池もポンプも各々適当に設置できる地方であればむしろ溜池の設置を第一とする」と、水源は地勢によって合理的に選択すべきとしています。最後に「旱害あれば一面水害あることを忘れてはならない」と排水にも十分留意するように注意を喚起しています。鳥居信平は現代のSDGs(持続可能な開発目標)に通ずる考え即ち持続可能な農業目標を持っていたといえそうです。台湾の二峰圳等での表流水と伏流水を利用した水源と灌漑とを組織的・経済的に最適に運用する信平の考え方を知るうえで、貴重な論文といえます。論文の歴史的仮名づかいなどを改め、必要に応じてルビを施すなど読みやすくしてここに紹介します。(太字は編者)





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最終更新日  2021年02月26日 18時18分11秒
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