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カテゴリ:徳島県技師鳥居信平
耕地整理研究会報第3号(明治42年12月号)
本会 編輯は 佐藤主一 となっている。 p.92「幹事鳥居信平君は清国大原府農村学堂に講師として雇聘せらる」 *太原府(たいげんふ)は、中国にかつて存在した府。唐代から民国初年にかけて、現在の山西省中部に設置された。 清のとき、太原府は山西省に属し、直轄の陽曲・太原・楡次・太谷・祁・徐溝・交城・文水と岢嵐州に属する嵐・興の2県の合わせて1州10県を管轄した。 1913年、中華民国により太原府は廃止された。 第2号(明治42年6月号) 灌漑用水動力 会員 S.T.生 近来米国に於て灌漑用揚水機に使用する小原動力中頗る便益あるものとしてガソリン・エンヂン(gasoline engine)の需要を見るに到れり。 同機の特長は設置単簡なると之が費用も頗る小額なるにあり即ち運搬燃料の重量の軽ろきと、機関使用上比較的困難少なきと、運搬費の僅少にして足るが如き皆其特殊の点なり。今間断的に少量の原動力を使用せんとする場合に電動力以外に最も経済的なるは此のガソリン・エンジンなるべし。電気発動機は頗る便利なれども使用法に専門的智識を要し、且其修繕費多額を要するものなるが故に現在に於ては必ずしも一段農家の使用に対して便益的経済的なる能はず。 或はガソリン・エンヂンは使用上多くの困難を有するならず機関の生命も又短きを欠点とすると云ふものあれど此の如き欠点は使用者の注意と経験とを以てすれば全然念頭に置くを要せず。適当に修繕を加へつゝ使用すれば此の機械と雖もよく二十年の激用に堪ゆべし。因に他の原動力用機械の生命は多くは十年乃至十五年なり。尚同機の修繕費に普通機械のスピードに比例するものなり。 此の種のエンヂンにフォーア、サイクル(four cycle)とツー、サイクル(two cycle)の二種あり。之は瓦斯の爆発と爆発の間に四回ストローク、二回ストロークとの区別をなしたるものなり。此の二種のエンヂンの何れか便益多きやは場合によりて一概に云為しがたきも其購入費及其エンヂンに伴ふ建設費は、ツー・サイクルの方遥に低廉なり。然共運転費及燃料はフォーサイクルよりも多額を要す。而して市場に於ける此のエンジンの九十五プロはフォー・サイクルなり。以て其需要の趨勢如何は察知し得べし。次に其のエンヂンの価格の事なるが、二十五馬力以下にして佳良なる機械は大凡一馬力に対して三十五乃至四十弗を価するものなり。左にガソリンエンヂンに関する二三のヒントを掲げ、一端の参考に資せんとす。 〇高度と能率 ガソリン・エンヂンは其製作実験されたる場所より高度を有する所在ではエンヂンが有する丈の全動力を発し得ざるものなり。故に或る高度に対しては常に動力を損失するを見込みて相当の余裕を取らざる可らず。即凡て千呎(フィート*)に対して殆三パーセントの損失なり。即ち五千呎の高度には十馬力のエンヂンは殆八馬力半の効率しかなきなり。一万呎なれば七馬力に減退す。此の損失は高さによって変異を起すものなるは勿論にして気圧の下降と共にエンヂンのシリンダー内に有効なる空気の充満するを防ぐ。之気圧の下降と共に減却するを以て爆発力を弱め引いて効率に影響を来す所以なり。 *1フィートは0.3048メートル(304.8ミリメートル) 〇燃料消費量 十馬力以上の機関に瓦斯一ガロン(二升五合)を以て十時間一馬力を出し得、十馬力以下のものにては一乃至一・二五ガロンを要す。又ジフチレート或は酒精の如きは多くのエンヂン *「ジフチレート」は不明、スレチン?。「酒精」とはエチルアルコールのこと (p.48) に用らるゝものにて其の要する量はガソリンと同一なり。 ガソリン、エンヂンと蒸汽(スチーム)エンヂンに付て比較実験するに 一パウンドのガソリンは一時間一馬力を出し得るのに対して蒸汽機にて此の力を出さしむるには五乃至八パウンドの燃料を要す。尚注意すべきは蒸汽機に於てはボイラー及エンヂンを使用せんとする時スチームを得る為に燃料を大に費やさゞる可らば、又エンヂン使用後にも尚釜の下に可成多くの石炭を残す。此の如きはスチームエンヂン使用上の大欠点なれども、ガソリン、エンヂンにては此損失は免るゝを得るものなり。 〇エンヂンの監視 適当に設計されたるエンヂンの監視には二時間に一回位之れ見舞はゞ充分なるべし。給油器(ルブリテーター)は油充ち、給水設備全き時にして、エンヂンは其ガソリンの尽くるまで運転を継続すべし。 〇揚水用ガソリンエンヂン 揚水用ガソリンエンヂンを購求する場合には充分なる能力(キャパシテー)あることを確め、ポンプ製造所によって示されたる馬力を取り夫れに十五乃至二十パーセントを付加し高度に対しても適当なる余裕を見込みて所要の全馬力を充分に起し得るエンヂンを撰むべし。若し揚水機が理論的に三馬力半を要するものならばポンプ製造所にては大概此の理論馬力の二倍即ち此の場合には七馬力を提供すべし。高度五千呎の処にて十馬力のエンヂンが撰まるれば実効馬力としては八馬力半となる。又燃費が二度に対して二度、四度に対して三度位を起しえ得るエンヂンは揚水機の場合にはエンヂンを購求する際、所要の馬力より小なるものを取るは常に失敗を招くの原因たるを以て之れに関し注意を肝要とす。 〇灌漑費用 灌漑に要するガソリンの量は一定しがたきも概略左の如し。小規模の灌漑設備に対しては一灌漑期間、揚程一呎に付一エーカーに約四乃至十ガロンを要す。大規模の場合(十馬力以上)上記等に位に付四分の一ガロンにて足る。 而して揚水量は土地一エーカールに付一分間五ガロン、一回十時間の運転、百二十回を灌漑期間とす。此の水量は一エーカーに一呎の水量を与ふるものにして、之はコロラドの北部地方に於ける甜菜及馬鈴薯栽培に要する水量よりも遥に大なり。尚一般に云へば揚程二十呎以下なれば灌漑費用は余りに多額を要せず。而して瓦斯一ガロンは現在十五仙に相当するを以て一灌漑期間一エーカーに一呎の水深を与ふる水量にて栽培をなし得る土地にてはガソリンの費価一、二〇弗を要する次第なり。(揚程二十呎、瓦斯は八ガロンを要するものとしての計算) 以上記載せる事柄は凡て米国に於けるガソリン・エンジンの需要及効力等に就き説明せるものなる故に直ちに以て我国に適応しがたきは勿論なり。然れども技術上些か参考に資すべきものなるを信じて上梓することとせり。(四十二年四月)(Irrigation Ag. Vol.ⅩⅩⅣ№4) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年03月24日 05時13分11秒
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