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カテゴリ:遠州の報徳運動
『鴻爪痕』(前島密自伝)「遠州中泉奉行に任ず」
「明治二年余は本藩より遠州中泉奉行に任ぜられたり。本職は普通民政を掌るものなれども、江戸より移住すべき七百戸余の無禄士族を統轄するは、誉有る職なると共に亦頗る苦心を要する職たり。同地は往昔徳川家康公ここに陣屋を設置セし振武の要地なりしも、後には代官と称する一小官吏の駐在所となりたる村市にして、寂寞の地なり。されば家屋の如きは官衙(かんが)に接する一軒と、属吏の住する数軒あるのみにして、七百戸の士族に給する一家も無し。故に余は土地の長老を招いて説諭して曰く、是よりここに移住すべき士族は実に赤誠ある徳川の臣僕なり。然らずんば、何ぞ朝廷の給禄を喜ばず、その旧故の名を慕い、無禄を以て随従することあらんや。汝らよくその真志に服し、空室を有する者は、極めて廉価を以て貸与し、これを安住せしめよ。聞く所に依れば、我が公は若干口米を彼らに給与せらると。果して然らば、皆是多少の有禄者なり。ここにこの有禄の士あらんにはこの地の殷賑の基となり、共にその栄を享くべきなり。彼らに新家屋を給する如きは余に腹案あり。汝ら多く労するなかれとと、相互の慰安を示し、次に富豪者を招集し、特に腹案をも説明せるに、直ちに若干金を家屋新築費に献じ、数十戸の長屋を建築せり。而して内にしては彼ら士族の思想を堅実にし、いわゆる三河武士の態を為さしむべく修養せしめざるべからず。これを為すには先ずその家族をして質素労働の風を起こしめざるべからず。故に余は家妻を以て指導者とし、勧工場を設け、繅織の業を習わしめ、上州より労農を招いて、植桑及び夏秋の養蚕法を学ばしめ、或は学校を設け、自身また教職の一員となり、訟廷に隣れる室に於て訴を聴くと共に教授を為し、夜会を開きて、古英雄の事蹟を談話し、以て彼らの志気を作興し、又は養老院を設けて寺僧にその事を任ずる等、日夜孜々として奔走したり。未だ是を以て成功の域に達せずと雖もややその端緒をひらくに至れり。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年06月09日 02時00分57秒
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