達居森(262.7m)、笹倉山(507m)
3回続けて七ツ森に通い、七つの峰を歩き終えたころ、七ツ森の全景を見たいと思ったのである。『宮城県の山』 [1] という登山ガイド本に、達居(たっこ)森頂上から七ツ森の全景が見えることがその写真を添えて記されていたので、さっそく達居森を歩くことにした。 また、前に登った笹倉山の眺子ノ石展望台からも七ツ森の全景が見えたのを思いだし、北の達居森、南の笹倉山の両方から七ツ森の全景写真を撮りに向かったのである。 仙台市中心部から達居森へは、まず国道4号線を北上し、大和町の大和中学校や吉岡小学校のあるあたりからおよそ1.3kmで中新田方面に向かう国道457号に左折し、その分岐からさらに1.4kmほどにある牛野ダムへの案内板にしたがって左折する。457号の分岐から6kmでダムサイトの下の駐車場に着く。 土曜日のせいか、その広い駐車場にはたくさんの車が駐車しており、40人ほどの団体が輪を作ってなにかしら打ち合わせをしているようであった。 ダムからの流れ出しに架かる橋を渡っての歩き出しは9:45であった。雑木林の緩やかな上りで、道は登山道と呼ぶにはじつによく整備されていて、いわば快適な遊歩道である。少し急な上りには必ずといっていいほど階段がしつらえられている。しかも、その道のほとんどが尾根伝いのうえ、尾根幅が広くないので、左右の見通しが良く(雑木林に葉が茂っていない時期ということもあるが)、ひたすら気分の良いハイキングコースになっている。黒伏山に登ったときも、福禄山、銭山、白森、黒伏山の周回コースの半分は快適な尾根道で気分が良かったが、スケールは小さいものの、それに良く似た気分の良さである。 歩き始めて10分もしないうちに、左手の斜面の雑木の幹に白木作り、家型の鳥の巣箱が括りつけてあるのが見える。「愛好者があちこちに巣箱を設置しているんだな」と思ったのだが、私が見たのは結局それ一つだけであった。 雑木に松が混じる緩やかなアップダウンの道の途中にはベンチがあったり、案内標も、大きな木製の立派なものが整備されている。 25分ほどで「東屋」への分岐に着く。東屋へは急勾配のアップダウンだが、階段が整備され、しかも一つ一つの坂が短いため、息切れする前に下り坂になり、10分ほどで東屋である。途中に旧道から登ってくる道が合わさる。東屋展望台から大和町方面の見晴らしが良く、達居森の説明案内板には次のように記されている。大衡村の最西端に位置し女達居森(北方約一,五〇〇メートル)と対をなしている村一高い山である。「達居」の地名はアイヌ語で「孤立した丘」を意味する。中世時代 福田太郎左衛門の居館 折口館(東北約一,二〇〇メートル)の見張り所であったと伝えられている。 東屋から引き返し、頂上に向かう。道はさらにさらに尾根道らしさが増し、その尾根が右手に曲がっていて、その先の頂上らしいところまで見通すことができる。 達居森のハイキングコース。 (2012/4/21 10:52) 頂上と間違えそうなピークがあって、そこから大和町吉田へ至る道の標示がある。牛野ダムからの道は南下する道で、吉田は頂上の南の地区である(じつは、頂上往復の予定だったが、時間に余裕があったので、帰り足で吉田への道を途中まで歩いてきたのである)。いくつかの偽ピークを越え、ほぼ直角に曲がる尾根を辿ると三角点のある峰に出る。ここに「達居森頂上」の板標示が松の木の高いところに掲げてある。 三角点のある頂上。 (2012/4/21 10:56) この頂上の少し先に尾根の先端があり、展望所となっていて、七ツ森の全景を見ることができる。あいにくの曇天と私のちゃちなデジカメのせいで、鮮明な写真は無理だったが、目的の半分は、これで達成したのである。 北からの七ツ森全景。(2012/4/21 10:59) 一番右に遂倉山(307m)、はっきりしないがその手前にたがら森(232m)が重なっている。少し離れて鎌倉山(313m)、蜂倉山(293m)、撫倉山(354m)、大倉山(327m)と続いて、大倉山の肩に松倉山(291m)の峰が覗いている。 遂倉山と鎌倉山の谷間から仙台のビル群が見えると、『宮城県の山』に記してあったとおりに、3,4のビルの頭が霞んで見える。 遂倉山と鎌倉山谷間に見えるビル群。(2012/4/21 11:02) 七ツ森の全景写真の写りの悪さに四苦八苦していると、駐車場でミーティングをしていた大集団が到着した。相棒は大勢に囲まれ、いろんな言葉をかけられたり撫でられたりしながら、おおいに戸惑っている。じつは人間が苦手なのである。町場の散歩でも、人間が集まっている場所には行こうとしない犬である。反対に、山歩きに行くことが理解できると、文字通り、狂喜乱舞となる犬である。 リードなしで連れてこられたやや小型のシェルティ(シェットランド・シープドッグ)がいて、連れにまつわりついて少し心配したが、何ごともなく相手をしてくれた。小さい犬に対しては滅多に敵意を見せないが、うるさくまとわりつかれるとすごい形相で追っ払うことがあるのだ(噛みつきはしないが)。 さて、下りは途中で少しばかり脇道の探索をした(じつのところ、立派な杉林のなかの谷筋に山菜を探しに下りたのである。なかったが)ものの、12:00ちょうどくらいに駐車場に戻った。昼食は後回しにして、さっそく笹倉山に向かった。 笹倉山へは、国道4号線には戻らず、457号線を南下し、七ツ森登山の際に入った地点を過ぎてから右に入る道をとる。この道の入口には、交通安全のためか、古いパトカーが道路脇に置かれていて良い目印になっている。 達居森駐車場から笹倉山御門杉登山口には30分ちょっとで着く。この登山口から眺子ノ石展望台までは20分くらいである。ちょうど13:00くらいで、七ツ森の写真を撮ってから、昼食とした。 南から見る七ツ森。(2012/4/21 13:08) 右端の木枝の向こうに見えるのが松倉山で、左に向かって大倉山、撫倉山、蜂倉山、遂倉山、鎌倉山と続いている。たがら森は鎌倉山の蔭になっていて見えない 七ツ森からさらに左に目をやると、先ほど歩いてきた達居森が見える。アイヌ語で「孤立した丘」という名前どおりに周囲から浮き立っている。 南と北の両方から七ツ森の全景写真を撮る、という目的は果たせたので、昼食をゆっくりと食べて、眺子ノ石展望台からそのまま下って帰ることにした。駐車場には6台ほど駐車していて、眺子ノ石展望台までの上りで3組と出会った。下りでは、登り始めた単独登山者と出会った。今日は土曜日なので登山客が多いようだ。週日に登るとせいぜい一人くらいにしか会わない山なのだが。 御門杉登山口には13:40に戻った。[1] 早川輝男『宮城県の山』(山と渓谷社、2004年) p. 104。