山行:翁山(翁峠) (1075.0m)
翁山は、地図では「翁峠」、山形県が立てた山頂標では「翁山」とされている。以前に、宮城県側の商人沼から歩き始め、吹越山から翁山までの尾根を往復したことがあった。その時、国道347号から商人沼までの林道を車で入ったのだが、張り出した薮で車のボディに無数の擦り傷をつけてしまい、修理費が80万円超といわれてへこんだことがあった。車両保険ですませたが、一日の費用が80万円を越す遊びというのは、古いはやり言葉で言えば「階級的裏切り」というものである。 吹越山から翁山への尾根歩きは快適だが、商人沼コースは避けたい。そこで、山形県の尾花沢から吹越峠まで入る予定にした。吹越山の南麓まで車が入れる道があるという情報だったが、それらしい道をかなり奥まで入ったものの、薮に阻まれてしまった。道を間違えたのかもしれないが、以前のことがあるので、無理はしないで引き返し、ハリマ小屋からのコースを取ることにした。 山の匂いがする! (2012/9/26 6:08) 仙台から東北道を大和インターまで、国道4号から国道457号に入り、色麻町から小野田に抜け、国道347号を鍋越峠で県境を越え、尾花沢市の坂本という集落から山刀伐峠を抜けて赤倉温泉に向かう道に入り、高橋小学校を過ぎたところから案内看板に従って林道に入る。 Photo A ハリマ小屋。 (2012/9/26 6:43) 林道の途中、狭いコンクリート橋があって、たぶん私が車で渡ったなかでは最も狭い橋である。そこを通るときはさすがに少しビビったが、それ以外はハリマ小屋までの林道は問題なく走れた。 ハリマ小屋の中の入山届けに記帳して出発である。2週間前の不忘山の時とは季節ががらりと変わり、気温は14度と涼しいくらいである。歩き出しにはちょうどよい。 歩き出してすぐ分岐に出る。右の道、吹越山と翁山の間の尾根に取り付くコースに入る。しばらくはフラットな林の道である。道端のトリカブトの花が美しい。いくつかの細い沢を渡る。その沢のどれにも板が渡され、靴が濡れることがない。 連れ(イオ)はよく沢で水を飲むが、「飲み貯め」ということはしない。そのため、暑いときの山歩きでは、水分補給のタイミングに気を遣わざるをえない。「もっといっぱい飲んでおけばいいのに」と思うのだが、飼い主の心配などに頓着はしないのである。 20分ほどで「不老長寿の泉」に着く。途中の沢に水は充分だったのに、この泉にほとんど水はない。不老長寿の泉を過ぎるとすぐ、尾根まで直登の道に取り付く。ほとんどの個所にロープが張られているブナ林の急斜面である。 25分くらい急坂に喘ぐと、急に低い灌木になったかと思うと、ぽかっと空が広がり、尾根に飛び出る。右は吹越山への道で、手前の950m峰に登山道がはっきりと見える。左が翁山への道で手前の965m峰が広がっている。 吹越山から翁山の尾根筋は風衝帯になっていて、チシマザサ、ススキ、ごく低い灌木などの見晴らしのよい快適な登山道になっている。 Photo B 950m峰から吹越山への尾根。 (2012/9/26 8:10) 965m峰の斜面に取りかかって、後ろを振り返ると、950m峰から吹越山へ連なる山塊、尾根筋には登山道がくっきりと見える。 登山道脇には、アザミ、エゾシオガマ、オヤマリンドウ、ツルリンドウ、キンミズヒキが咲いている。ミヤマコンギクかタカネコンギクか区別が付かないが、小さな花に小さな露をのせて朝日に光っている。 左:ナンブタカネアザミ(たぶん? 後はイヌ科イヌ属イヌである)、 中:エゾシオガマ、左:キツリフネ(これは山麓の林道で)。 Photo C 965mから眺める翁山。、 (2012/9/26 8:16) 尾根道を30分ほど歩くと965m峰の平らな頂きになる。向こうに緩やかな山容が見え、左が翁山(1075.0m)、右が1062m峰である。手前斜面のふところには、尾根道には珍しいやや高い灌木林が見える。風の当たりにくい陽だまりのような場所なのだろう。 Photo D(左) 頂上手前の灌木林の道。 (2012/9/26 8:26) Photo E(右) 頂上での記念スナップ。 (2012/9/26 8:47) 4,5mの灌木の林を潜って15分ほどで頂上に到着する。お決まりのポーズで記念写真を撮る。これもお決まりだが、被ってきたキャップで私の代わりとする。ハリマ小屋の駐車場では私たちの車だけだったが、頂上にも誰もいない。 Photo F(上) 翁山頂から北の眺望。 (2012/9/26 8:48) Photo G(下) 南の眺望。 (2012/9/26 8:49) 頂上からの見晴らしをカメラに納める。遠く、かすかに鳥海山(2,236m)が見える(Photo H)。雲の上に頂上が覗いていて、右側のゆったりとした山裾がうっすらと見えている。月山も探してみたが雲に隠れていて、まったく見えない。 Photo H 霞む鳥海山。 (2012/9/26 8:51) 頂上で朝食である。イオの弁当を開いてやると、今日は素直に食べている。さっさと食べ終わり、いつものように私の弁当の30cmほど近くでじっと観察を始める。気持ち悪いくらい無言で、じっと見つめるだけである。何となく根負けして、肉を分配する。肉で勢いがついて、サラダのキュウリまで口にしたが、さすがに横を向いて吐き出した。連れとはこうやって食事どきも遊ぶのである。 9:25、山頂出発。尾根筋の緩やかな下りである。膝に負担が少なくて、心配がない。林の中の見通しの良い道では、連れは勢いよく先導をしてくれる(ただし、低い灌木の見通しの悪い道では必ず私の後ろを歩く。我が身の安全にたいへん気を遣うのだ)。 緩やかな下りが急坂に差しかかる頃、道は急に折れ、斜面をトラバースしていく。「こぶの王様」という看板があり、斜面のやや上に直径6,7cmの枝の途中に30cmを越えるかと思われるコブができているのだった。どうしてこんなふうになるのか、かいもく見当がつかないが、球形の見事なコブである。 Photo I 見通しの良い道では立派な先導役。 (2012/9/26 8:51) トラバースする道は、沢の頭を越えて沢向かいの緩やかな斜面をふたたび下り始める。「白髪の泉」の看板があったが、水は涸れていた。白髪の泉から20分でハリマ小屋到着である。10:18。 吹越峠に行けずに予定を変更したので、だいぶ早く帰り着いた。帰りは、尾花沢市街に出て、国道13号、東根市で大森工業団地方向に左折して、国道48号に出て、関山峠を越える道をとった。朝の道よりはるかに運転しやすい。 帰りの車中、連れは助手席で爆睡である。私は、連れをほっといて山形の冷たい鶏肉蕎麦を楽しんだ。 爆睡中(いつものこと)。 (2012/9/26 10:58) Map 翁山。A~Iは写真撮影ポイント。地図のベースは、「プロアトラスSV4」、 歩行軌跡は、「GARMIN GPSMAP60CSx」によるGPSトラックデータによる。