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テーマ:スポーツあれこれ(11395)
カテゴリ:スポーツ関連
今年の甲子園も大詰めになりましたので、スポーツ名実況の第4回も、高校野球から取り上げます。
1996年の夏の甲子園決勝戦、松山商業対熊本工業の一戦です。 この時は、公立高校同士の決勝戦となりました。 2022年の現在まで、夏の甲子園で公立高校同士の決勝戦は、この時が最後になっています。 共に戦前から甲子園に出場している名門校同士の決勝戦は、松山商業が3対2とリードして9回裏を迎えます。 その9回裏も2者連続三振で2アウトとなり、松山商業の優勝は目前でした。 そこにまず1回目の奇跡が起きました。 熊本工業のバッターは、1年生の6番、澤村選手です。 澤村選手は、松山商業のエース新田投手の初球を、何とレフトへ同点ホームランを放ちます。 マウンドの新田投手は愕然と崩れ落ち、澤村選手はガッツポーズでホームインします。 この同点ホームランで延長戦となり、流れは俄然、熊本工業に傾きます。 そして延長10回裏の熊本工業は、ノーアウトから二塁打が飛び出します。 ここで松山商業はピッチャー交代、新田投手をライトに回し、背番号1の渡部投手がライトからマウンドに上がります。 次の打者が送りバンドを決めてワンアウトでランナー3塁です。 守る方も、打つ方も、どうするのか、緊迫の場面です。 NHKの実況アナウンサーの高山典久さんは、解説の原田富士雄さんに、「満塁策でしょうか?」と問いかけます。 原田さんは「満塁策は考えにくいのではないでしょうか。満塁にすると3番の左打者とサイドスローの投手ですので」という主旨の答えをします。 しかし、松山商業がとった作戦は満塁策でした。 2人を敬遠し、1アウト満塁で3番の本多選手との勝負になります。 ここで松山商業は、迷った挙句ライトを控えの矢野選手に代えます。 突然の交代となった矢野選手が、ライトに向かって走っていき、試合が再開されます。 「松山商業、一つのミスも許されない状況です」 高山アナウンサーが話した直後の初球、本多選手は鋭いスイングでライトに大きいフライを打ちます。 誰もが熊本工業のサヨナラ勝ちで優勝、と思いました。 高山アナウンサーも「行ったー!これは文句なし」と叫びます。 しかし打球は風に戻され、ライトの代わった矢野選手が掴みます。 3塁ランナーの星子選手はタッチアップ、優勝へのホームへ全力疾走します。 矢野選手はライトからダイレクトに送球します。 その送球がキャッチャーの石丸選手の構えたミットに吸い込まれ、走ってきた星子選手はスライディングして、セーフ、と両手を広げます。 全ての条件が一致して、何とホームはタッチアウトになりました。 高山アナウンサーが「アウト!アウト!何とダブルプレー!ライト代わった矢野がやりました!」と絶叫します。 グラウンドの熱狂にアナウンサーも暫く声が出ず、そして解説の原田さんに話しかけます。 原田さんは「私ですね、今、鳥肌が立っているんです」と応えます。 この奇跡のバックホームの次の11回表、先頭打者の矢野選手は、レフトに痛烈な打球を放ちます。 この打球をレフトの澤村選手が取れず、二塁打となります。 正に奇跡の立役者が交代したことを表すようなシーンでした。 試合は松山商業がこの回に3点をあげ、6対3で勝って優勝します。 数々の奇跡を生んだ名勝負、80メートルのストライクは、今思い出しても身体が震えます。 あの時の矢野さんは、地元愛媛県のテレビ局で活躍され、三塁ランナーだった星子さんは「たっちあっぷ」というお店を経営されているそうです。 お二人はその後再会され、友情が続いているということです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022年08月18日 18時17分45秒
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