「熟睡」に飽きちゃった?小泉・元総理
今日(12月1日)の日本経済新聞で塩野七生氏が、最近「脱原発論」を盛んに唱えている小泉純一郎・元総理に対し、さびの利いた分析、評価をして面白かった。 <小泉さんはお辞めになった後に会ったことがある。どうして辞めたのか聞いたら「僕は疲れちゃった」と。……「首相の当時は時々、夜にがばっと起きるときがあった。今はそういうことがなくなって熟睡しているよ』と言っていらした。(脱原発論を言い出したのは)熟睡に飽きちゃったのだと思う> 聞き手の伊奈久喜・特別編集委員は「思わず膝を打った」と書いているが、私も鋭い観察だと思った。さらに、次の言葉が厳しい。 <もう一つ言いたい。粋な男は焼けぼっくいに火をつけないこと。やめると言ったらやめる> いったん政界、それも総理大臣という玉座から身を引いたら、一切、政治に影響を与えるようなことは言わない。院政を敷く力のありそうな人間ほど、慎みをもって後世に託すのが男の美学ではないか、と言っているのである。 脱原発など俗耳に入りやすいキャッチフレーズで発言するなど未練たらしく、みっともない。晩年を汚すだけである。 小泉氏はこの間まで「引退後は政治にかかわることは言わない」と言っていたではないか。その潔い態度を世間は「粋だ」と評価していた。自分から男を下げるようなことはしない方がいい。 「熟睡に飽きた」のなら、政治とは別のジャンルで「夜にがばっと起きるような趣味を持てばよい。塩野氏は、無類のオペラ好きの小泉氏が「イタリアでオペラを見たことがない」と言っていたことから、「(今度イタリアに)いらしたらお連れする」と言う。 さすがローマ帝国の興亡など、イタリアの政治史と文化に通暁した女流作家である。人臣を極めた老年の男の扱い方を良く心得ている。