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テーマ:旅のあれこれ(10276)
カテゴリ:旅行、おでかけ
8:22分の列車で釧路に向うため、8時10分頃に根室駅へ。
そういえば、根室土産は何も買っていなかったなと、 駅の売店で何かないかと物色していたら、 背中を「おはよう!」と叩かれた。 Nさんが見送りに来てくれたのだ。 朝早いから見送りはしないでと昨夜別れたのに、 彼女は手土産持参で来てくれたのだ。 ということで、買おうと思っていた根室土産は陳列棚に戻す。 昨夜は、花咲ガニとおしゃべりに夢中になって、 せっかくカメラを持っていったのに、彼女の写真の一枚も撮っていなかった。 大慌てで、駅前で彼女の写真を撮り、 列車をバックにして、駅員さんに二人並んだ写真を撮ってもらった。 座席に荷物を置いてから、 列車の窓を開けて発車まで声をかけあう。 札幌近郊を走っている電車なら、このようなことはできないし、 なにより「入場券なし」で、見送りの人がホームになんて入ることができない。 駅員さんが何の抵抗もなく「いいですよ」と言ってくださったことが、 とても嬉しかった。 このような臨機応変とふれあいが当たり前の社会が、 ここには残っているのだと思った。 きっと、日本全国のローカルな地域では、 まだまだこのような風土が残っているのだろう。 だからまだ、日本は大丈夫ではないのかと思ったりした。 釧路に着いたのは十時半。 まずは駅前の和商市場へ。 噂の「勝手丼」は、あちこちのお店で競い合っているような感じ。 時間的におなかもすいていないので、 電車に乗る前にまた来ようかなと思いつつ、 市場内をぐるっと回ってから外に出る。 今回、行ってみたいなと思っていたのは、 石川啄木ゆかりの港文館である。 テクテクと幣舞橋を渡り、大きな釧路市商工会議所の建物の脇を右に向う。 雲ひとつない快晴で、幣舞橋からの風景もとても美しかった。 港文館は想像していたよりもこぢんまりとした建物で、 一階はカウンターもあるレトロで小さな喫茶店の雰囲気。 二階が石川啄木に関する資料などが展示されている。 一階の喫茶室では、地元の中高年の男性たちが4~5名おしゃべりをしていた。 ざーっと二階を見学してから、せっかくここに来たのだからと、 カウンター席でコーヒーを注文する。 やけに座席が高くて、足の短い私は足がぶらぶらしてしまう。 脇にあった石川啄木関係のスクラップ(主に新聞記事など)を読みながら、 港文館のマドンナであろう女性と お客である男性たちとのやりとりを聞くともなしに聞いていた。 きっとここに集まってくる男性たちは、 彼女と会話するのが楽しみなのだろうな・・と思った。 ホンワリと柔らかく暖かい雰囲気の女性で、 同性の私からみても好感がもてる人だった。 スクラップを見ていて、つくづく思った。 石川啄木はたった76日間しか釧路にいなかったのに、 今はこれほど釧路の人たちに大切にされて、幸せなヤツだ・・と。 生前の啄木は、はた迷惑な傲慢な青年だったであろうが、 あの可愛らしい顔立ちもあり、 わがままだけどメンコイと憎まれなかったのかもしれない。 それに、彼の短歌は、やっぱり人の心をひきつける。 私自身、小学生の高学年の頃に啄木に出会い、 中学生から高校生の頃までは大ファンだった。 「一握の砂」や「悲しき玩具」の主な短歌は、 ほとんど暗記していたくらいだ。 しかしそれだけに、彼の実像を知った時にはショックだった。 魅力的な人かもしれないが、 こんな人と結婚した節子さんが本当に気の毒だと思ったものだ。 そして今は、人が生きて果たす役割というものは、 自分自身ではわからないものなのだとつくづく思っている。 彼は彼なりに、多分精一杯「石川啄木」を生きたのだろう。 だからこそ、人を感動させる歌が詠めたのだろうし、 死んでからはその足跡すら、多くの人の役に立っている。 スクラップによると、釧路では「石川啄木講座」のようなものが、 大変長期間にわたって開催されたようだ。 今、ネットで探したら「啄木くしろ76日物語」というのがあった。 この解説をしている北畠立朴氏が講師だったような気がする。 近くに住んでいたら、私も受講してみたがったな。 少しばかり隣に座った男性や喫茶部の女性とおしゃべりしたあと、 釧路川をはさんで向かい側にある釧路フィッシャーマンズワーフMOOへ。 ここで釧路土産なんぞを少し買い、 適当な店があったら昼食でもと思いつつ、ブラブラする。 すると、何だか美味しそうなにおいが漂ってきた。 ふと見ると「さんまんま」というのぼりが立っている。 実演販売をしているらしいが、 どれがそれなのかよくわからなかったので、 「『さんまんま』って何ですか?」と聞くと、 「サンマまるごとで味つけご飯を包み、炭火で焼いたもの」という説明。 何だか美味しそうだなと値段を聞くと、400円という。 あ、これを買っていって電車の中で食べようと思って脇を見ると、カウンターがある。 幸いなことに一箇所だけ椅子が空いていたので、食べていくことにする。 注文してからメニューをあらためて見ると、 「わかめラーメン」とか「さんまぶっかけ丼」とか(正しい名称かどうか、少し怪しい) みんな400円だった。 隣の男性の前に置かれたものは、 サンマの刺身のようなものがご飯に乗っているもので、 これで400円とは安い!!と思った。 さて、私の注文した「さんまんま」もとても美味しかった。 それで、夫へのお土産用として一本購入。 おなか一杯で満足したので、 和商市場の「勝手丼」は次の機会とすることにして、釧路駅へ。 指定席を取って「スーパーおおぞら8号」に乗り込み帰路につく。 ずっと「各駅停車」ばかり乗っていたので、 特急列車のスピードにあらためて驚く。 各駅停車ならば一つ一つの駅を確かめることができるが、 特急だとビューッと通り過ぎてしまうので、 私の動体視力では、駅名はもとより駅舎も確認することができない。 「あれ、今の駅だったような・・」という感じだ。 こうなると、乗車している間の楽しみは読書となる。 実は、長時間列車に乗っているのだからと、 単行本を二冊持っていっていたのだが、 各駅停車の旅の途中では、駅名や駅舎、そこに乗り降りする人、 車窓から見える地元の人たちの姿などに想像力が刺激され、 まったく本を開かなかったのだ。 (開いたのは時刻表とガイドブックだけ) それを思うと、ローカル線の旅は本当に旅人になれるのだと思う。 私にとっては、多分初めての「旅を目的とした一人旅」であった。 今までは、何か用事があってとか、 夫や家族と一緒の旅ばかりであった。 宿も決めずに出発したのは、絶対に今回が初めて。 50代半ばでこれが初体験とは、遅すぎるかもしれない。 でも、私にとってはとても貴重な初体験だった。 足腰や頭がそこそこしっかりしていたら、 年をとってもこのような楽しみがある。 今度は、どこに行こうかな・・。 (10.17/記) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年10月17日 10時32分48秒
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