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カテゴリ:つぶやき、人間関係
祖父は、69歳で亡くなった。
私が幼い頃に脳卒中で倒れたので、元気に活躍していた祖父の記憶はない。 半身不随と言語障害の後遺症があり、 最後の頃は、何を言っているのかもよくわからなかったように思う。 祖父の最後の日、呼吸が荒くなった祖父を私達は囲んでいた。 もう最期が近いということは、 毎日のように往診してくれていた医者が言っていたのかもしれない。 少なくても私達は、もう祖父が死ぬのだということを理解し、 そのための準備もしていたように思う。 祖父の呼吸が次第に荒くなり、額には汗というか、塩が吹いていたような気がする。 私はそれをふき取ろうとしたけれど、とてもベッタリしていたように記憶している。 父が時々、脈を確認していた。 祖父の意識はなかったけれど、顔貌は苦しげだった。 しかし誰かが「意識はないのだから、苦しくないのだ」と、 心配する私達に言った。 でも私は、「こんなに苦しそうなのに・・」と釈然としなかった。 同時に、苦しくなければいいのだけれどとも思っていた。 随分長い間寝たきりだったし、 祖父の介護に家族みんなが疲れていたこともあり、 (私たち孫も、祖父のお守は分け持っていた) 祖父の死を待っているわけではないけれど、寂しさとか悲しみの感情はなかったように思う。 いつか来る日だったと、当然のように受け止めていたというか・・。 やがて、呼吸が間遠になっていった。 大きく息をして、それが止まった。 父は、心臓に耳を当てて鼓動が止まったのを確認した。(はずだった) 「よし、止まった」というような言葉を聞いて間もなく、 また祖父が大きなため息のような呼吸をした。 私達はびっくりして、祖父の顔を見る。 「あ、まだ止まってなかったんだ」とかなんとか父が慌てて、 また心臓に耳を当てた。 そんなことのあとに、完全に祖父の心臓は止まった。 不思議なことに、祖父の苦しげな顔は、とても穏やかになっていた。 私達は、祖母が「これから人が来るから、ちゃんと着替えをしなさい」と言われ、身支度を整えた。 祖父が亡くなったのは夜だったので、私達は寝間着だったのだろう。 それから、父の知らせで医者が来たと思う。 多分、死亡診断書を書くためだったのだろう。 やがて、近所の人たちが次々にやってきて、 私達は部屋の隅でその様子を見ていたのだろうと思う。 このように、家族の死にゆく姿をみんなで見守ることは、 今はとても少ないことだろう。 幸いなことに私は、祖母の死の瞬間にも立ち会うことができた。 母方の祖父母については、亡くなったという知らせがあってからだったが。 今日は祖父の命日。 記憶している祖父は随分と年老いているが、まだ69歳だったのだ。 もう少し、元気に老後を過ごさせてあげたかったと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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