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カテゴリ:通信教育・大学、教育、講座、講演会
6月に札幌学院大学のコミュニティカレッジで、佐々木洋(札幌学院大学名誉教授)先生による
「チェルノブイリ30年と福島5年の負の遺産-原子力安全神話の謎の歴史続編」を 4回にわたって受講した。 福島原発事故発生から5年、政府は早々に原子力発電の再稼働や、原子力発電の輸出、 さらには避難している住民の帰還に向けての動きを強めている。 素人の私から見たら、メディアで取り上げられているニュースだけ見聞きしても、 メルトダウンした福島原発が放射能を現在も撒き散らしているのではないかと思うし、 いくら除染作業をしたといっても、福島周辺が住んで安全な地域になったとは考えられない。 原子力の知識が乏しいから、必要以上に不安を感じてしまうのかもしれないと思い、 今回の講義を時間や日程も調整可能なので受講したのだ。 今回の講義は、今まで知らなかったことの連続であり、私自身十分に理解できたとは言えないのだが、 それでも今まで霧の中だったことが、随分と明確になった気がする。 原発事故として有名なのはスリーマイルの事故とチェルノブイリ事故だが、 その前史としての59年前の「ソ連のウラルの核惨事」については全く知らなかった。 当時は現在とは比較にならないような秘密主義のソ連だったから、 この事故についてはずっと隠され続けていたのだが、 この事故隠しと被害隠しの悪しき伝統(?)が、現在の原発事故にもつながっているようだ。 隠された半世紀・ウラルの核汚染(森住卓) 原発の構造やその特徴、それぞれの危険性などについても講義では触れ、 その上で日本がこだわって諦めきれずにいる「核燃料サイクル」についてもお話をされた。 先生はとても慎重に言葉を選んで講義をされて、問題点などははっきりと指摘されるが、 その是非については明言を避けていらっしゃるように感じた。 それは、研究者としての節度なのかもしれないし、 これからも研究を続け、明らかになったことを堂々と発表し、 判断を私たちに問いかけ続けるための布石かもしれない。 しかし、先生が本音ではどのように考えていらっしゃるかは、十分に伝わるものであった。 結果として、「高速増殖原型炉もんじゅ」は完全に無理だと思うし、 チェルノブイリ事故30年を経て「絶対に近づいてはいけない」という基準を、 日本は「安全」とみなし住民を住まわせようとしているのだ。 それは決して住民の気持ちに沿うなどというものではなく、被害者保障を軽くする政治的理由なのだ。 もう、それだけでも私は現在の日本に失望を感じる。 さらに驚いたことがある。 日本は唯一の被爆国であるのだが、アメリカが原子力を軍事兵器として研究するためのきっかけは、 「真珠湾攻撃」であったことだ。 それまでは、アメリカは海外で戦争をしていなかったし、兵士を海外に派遣もしていなかったという。 さらに、原爆の開発も、大量破壊兵器であることから推進するのに二の足を踏んでいたらしい。 その間にドイツでは物理学者たちが、ヒトラー政権で原爆が戦争に使われることの危険性を感じ、 なんとルーズベルト大統領に書簡を送っていたという。 それでもまだ躊躇していたアメリカが、迷いなく原爆開発を進めるようになったのは「真珠湾攻撃」であり、 ヨーロッパやアジアでアメリカが戦争をするきっかけになってしまったらしい。 歴史を知るには色々な見方があることは承知している。 しかし、原子力の戦争利用という視点から見ると、まさに目から鱗のような気がした。 原子力の平和利用ということで推進されてきた原発も、 一歩間違えば人類を破滅に向かわせるものなのだ。 核廃棄物の安全な処理方法も確立されておらず、日本では最終処分場も決まってはいない。 福島原発からはまだまだ放射能が放出され続けており、今後どのような人体への影響がでてくるかわからない。 しかし、原発事故の伝統から言えば、その被害は過少にされるか隠されるかのどちらかであろう。 佐々木先生は元々は農学博士で「生物学・遺伝学」の専門家だ。 その視点で人類の未来を考え警鐘を鳴らされている。 私には、とても説得力のある講義であった。 ネットで検索したら、佐々木洋のページというのがあった。 これから読んでみたいと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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