「自閉症のうた」東田直樹
エッセイ、彼の著書を英訳したデイビッド・ミッチェルとの往復書簡、短編小説「自閉症のうた」という内容。
彼の本を読むたびに思う。
自閉症で言葉で会話ができない人とは何人も出会ったけれど、
彼らの内部にはこのような豊かな思考や感情があったのだろうと。
彼らは私には理解できない行動や、パニックになることもたびたびあり、
若かった私は途方にくれるばかりだった。
落ち着かせようと抱きしめたらさらに興奮したりすることもあるし、
私は彼らが何に怖がり、何を嫌がっているのかを知りたいと心から思っていた。
そんな彼ら(幼児から学齢まで)のことを、東田さんの本を読むたびに思い浮かべる。
彼らに内面の言葉を表現する手段があったなら、絶望と孤独の日々からどれほど解放されただろうか。
そんな切なさを感じながら読むのだけれど、いつも明るい光も与えてくれるのが彼の本。
人間の能力の不思議さや潜在性、どんなに重度の障害と言われる個性があっても、
理解しようとする人や、一緒に彼らの困難を乗り超えようと試行錯誤する人がいれば、
人はきっと幸せに向かって歩くことができるし、
その人なりの人生の幸せを抱きしめることができるのだと。
テレビや新聞では、人間の醜さや欲望がむき出しの情報が流れ、こちらの心もどんよりしてくる。
そんなときに、このような本を手にすると「人間って捨てたものじゃない」と思える。
いつもありがとう、東田直樹さん。