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カテゴリ:絵本
「まほうつかいのむすめ」
アントニア・バーバー/文、エロール・ル・カイン/絵、中川千尋/訳 内容(「BOOK」データベースより) むかしまほうつかいと、そのむすめがくらしていました。 むすめは、長い間、父親とふたりきりの生活だったのでふと、母親のことを知りたいと思うようになりました。 そして“むすめ”としか呼ばれない自分のなまえのことも…。 1987年ケイト・グリーナウェイ賞佳作。 この絵本は、ガイドブックでは「私という存在」というジャンル。 当市の図書館では所蔵しておらず、リクエストで道立図書館から取り寄せてもらった。 手に取ると、美しい東洋的な絵の絵本である。 父親の魔法使いは、「世界のてっぺんにある白く冷たい国のお城」で、 娘が望むものを魔法でなんでも与えながら育てているが、 名前もない娘は孤独であり、読書で知った違う世界に憧れるようになります。 やがて娘は、父親との知恵比べの末、鳥となってお城を飛び立ち…。 この絵本を読んでいる時、私は久しぶりに ワクワク・ドキドキしながら物語の世界に入り込む感覚を味わっていた。 「私の名前は? 私のお母さんは?」 抑えられない内部からの欲求は、単に自由や違う世界を知りたいというものではない。 「自分は何者なのだろう」という、自分のルーツを知りたいという願いのように思えた。 この絵本は、何度読んでも様々なことを考えさせられ、その絵も含めて楽しむことが出来るだろう。 やくしゃのあとがきによれば、作者のアントニア・バーバーは、 ベトナムから迎えた養女のためにこの物語を書いたという。 この物語で「限りある人の世で幸せを見つける術」について語ったのだそうだ。 それを知り、深い感動を覚えた。 子どもにとって「物語」には、そんな意味があるのだ。 直接的には彼女の養女へのものだったのだろうが、 それは全ての親がわが子に伝えていくべきものなのだ。 この物語に東洋的&多国籍的な美しい絵を描いたル・カインは、シンガポール生まれ。 少年時代に、日本・インド・香港・サイゴンなどを転々としながら育ったとか。 彼の内部に、それぞれの国での体験や美しいものとの出会いが、 このような不思議で美しい絵を描くことのつながったのは確かだろう。 孫が幼い頃に、この絵本を読んであげたかったなと思う。 追記 自分のルーツを知りたい欲求は、きっと誰にでもあるものだと思う。 近年、不妊治療にも様々な方法がなされているだろうし、 様々な事情から養子となるケースも多いだろう。 成長してそのことを知った時、育ての親への思いとは別に、 「自分の遺伝的な親を知りたい」という思いも持つだろう。 子どもの遺伝的なルーツを知る権利についても、ついつい考えてしまった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年02月01日 08時30分06秒
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