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カテゴリ:絵本
この絵本は以前に読んで、とても良い絵本だと思った記憶がある。
でも、ブログには書いていなかったようだ。 「だいじょうぶ だいじょうぶ」 作・絵: いとう ひろし、 講談社 【出版社からの内容紹介】 小さなぼくが不安な気持ちになると、いつもおまじないの言葉で助けてくれたおじいちゃん。 生きていくためのしなやかな強さを育む、心にしみる絵本です。 どくしゃのみなさんへ おじいちゃん、おばあちゃんをさそって、みんなで、さんぽにでかけよう。 ゆっくり、のんびり、あるいていけば、ほら、ぼくらのまわりは、こんなにも、たのしいことがあふれてる。――いとうひろし 幼い子供にとって、家の外に出ることは未知との遭遇ばかり。 散歩に出かけると、なんでも興味津々で触ったり見たりして、面白がったり怖がったりしながら様々なことを知ってゆく。 小さなボクにとって、おじいちゃんは不思議な世界へ手を引いてくれるガイドであり、 不安や恐怖を感じるときに「だいしょうぶ だいじょうぶ」と安心させてくれる、 心から信頼できる魔法使いのような存在。 ここには、祖父と孫の理想的な関係が暖かいイラストとともに表現されている。 思えば、私の息子たちもおじいちゃんが大好きだった。 実家に行くと、裏山や畑に出かける父が「いっしょに行くか?」と声をかけると 幼い息子たちは「行く、行く!」と喜んでついていった。 その時にどんな会話が祖父と孫の間で交わされていたのかわからないが、 知識が豊富だった父は、きっと草花のことや木々の種類、その陰にある野草や毒草、 飛び交う鳥の名前など話してくれたのではないだろうか。 父は孫とのそんな時間をとても楽しみにしていたし、一緒に作業したりすることも喜んでいた。 特に、幼い頃から戸外で遊ぶことが大好きだった長男は、父について歩くことがとても好きだった。 現在、息子たちが農業をしているのも、 きっと幼い頃のそんな体験が土壌となったのではではないだろうか。 私には、祖父との思い出はあまりない。 私が小学校に入る前に、祖父は脳卒中で倒れた。 記憶に残る祖父は、歩いてはいたけれどその動作は緩慢だったし、 言葉も少し不明瞭なところがあった。 だから、私は元気な祖父の姿を知らない。 祖父は初孫の私をとても可愛がってくれたそうだ。 生まれて間もない私のことを川柳のように詠んだものを、随分前に見たことがある。 はっきりとは覚えていないのだが、 「わが孫は 肥えて賢く色白く 乳もよく飲み 笑顔なお良し」のような感じ… それを見た時に、私は祖父の愛情をその文字と言葉から強く感じて なんだか泣きそうになってしまった。 そして、自分が本当に可愛がられていたんだなと実感することが出来た。 それなのに、次第に老いてゆき、脳卒中の発作も繰り返し、自宅で寝たきりになった祖父を 私はそれほど大切にはしていなかった。 実家は農家だったので、自宅で寝ている祖父はたいした用事もないのに私をよく呼んだ。 「おーい おーい」という声が聞こえると、 私は「ああ、またか」と煩わしく思いながら祖父の枕元に行った。 大抵、「水が飲みたい」とか、「鼻を拭いてくれ」「布団をかけてくれ」などという用事で、 それが終わると私はさっさと枕元を離れた。 すると間もなく、また「おーい おーい」の声が聞こえる。 ある日私は、面倒くさくなって 「おじいちゃん、用事があるなら一緒に言ってよ」と文句を言った。 それを聞いたときの祖父の悲しそうな顔を、私はずっと忘れることが出来ない。 今ならわかる。 祖父は、私の顔を見たかったんだと思う。 孫に世話をしてもらうことが、ささやかな喜びだったんだろうと思う。 でも、当時の私にはそれがわからなかった。 祖父は元気なころから優しい人だったと聞いている。 だから、何度も私を呼んで煩わせることに、悪いなと思っていただろう。 祖父は体が不自由ではあったけれど、決してボケてはいなかった。 それは私にだってわかっていた。 私や妹たちが同じ部屋で話したり遊んだりしているのを、ニコニコして見ていた。 不自由になり、散歩も出来なくなり、スムーズに話すこともできなくなり、 どれほどの悲しみや切なさを感じていたか、今の私には想像できる。 自分の言いたいことも、スムーズには伝えられないのだ。 それでも、イライラして声を荒げたりする祖父ではなかった。 それなのに、私はそんな祖父に冷たい視線や言葉を投げかけていた。 こう書いていても、後悔で息苦しくなってしまう。 祖父が亡くなったのは、今の私と同じ69歳だったのだ。 ごめんなさい、おじいちゃん。 あの時、「おじいちゃん、何度呼んでくれてもだいじょうぶだよ」と言ってあげればよかった。 でも、きっとやさしいおじいちゃんは、あちらの世界から言ってくれているだろう。 「だいじょうぶ だいじょうぶ。おまえがいてくれて嬉しかったんだよ」と。 「あの時はちょっと悲しかったけれど、おまえの気持ちはわかっているからだいじょうぶ」と。 私がそちらの世界に行った時は、私をちゃんと見つけてね。 そちらの世界には、おじいちゃんもおばあちゃんもいるから、私は安心しています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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