|
テーマ:読書(8226)
カテゴリ:読書
「清浄島」河崎秋子著
![]() 風が強く吹きつける日本海最北の離島、礼文島。昭和二十九年初夏、動物学者である土橋義明は単身、ここに赴任する。 島の出身者から相次いで発見された「エキノコックス症」を解明するためだった。 それは米粒ほどの寄生虫によって、腹が膨れて死に至る謎多き感染症。 懸命に生きる島民を苛む病を撲滅すべく土橋は奮闘を続ける。 だが、島外への更なる流行拡大を防ぐため、ある苦しい決断を迫られ……。 「エキノコックス症」は、北海道に住む人間なら一度は聞いたことがあるのではないか。 キツネに寄生していると思っていたのだが、 犬にも寄生するということは恥ずかしながらこの本を読んで知った。 (道民として知らなかったでは済まされませんね、反省!) また、礼文島で発生しこのようなことが起きていたことは、まったく知らなかった。 色々な意味でとても勉強になったし、人間と他の生き物との関係を考えずにはいられなかった。 人間はいつも良かれと思って何かをしているのだが、 それがいつも期待通りの結果になるわけではなく、 時々自然界からとてつもないしっぺ返しをされることがある。 それに気付いた時には、人はその問題を解決しようと立ち向かうのだが 自然の力というものは人間の浅知恵をあざ笑うようなことがある。 河崎秋子さんの作品は、いつもとても考えさせられる。 文体も情緒的ではなくていつも何かを突きつけられるような感じなのだが、 それは決して冷たさではなくて大地に根差した強さと大らかさもある。 過酷な現実に立ち向かうには、人間同士の助け合いが不可欠だということも感じさせてくれる。 しかし、自己防衛の気持ちが強すぎると、それは差別や排除にもつながりやすいことも。 エキノコックスは現在進行形のものである。 本州から観光で来た人たち、キツネを見ても可愛いなんてエサを与えないで下さいね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023年05月12日 14時17分15秒
コメント(0) | コメントを書く
[読書] カテゴリの最新記事
|
|