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2023年11月04日
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テーマ:読書(8244)
カテゴリ:読書


​「母という呪縛 娘という牢獄」齊藤 彩/著


​​
【内容紹介】
深夜3時42分。母を殺した娘は、ツイッターに、
「モンスターを倒した。これで一安心だ。」
と投稿した。18文字の投稿は、その意味するところを誰にも悟られないまま、放置されていた。
2018年3月10日、土曜日の昼下がり。
滋賀県、琵琶湖の南側の野洲川南流河川敷で、両手、両足、頭部のない、体幹部だけの人の遺体が発見された。遺体は激しく腐敗して悪臭を放っており、多数のトンビが群がっているところを、通りかかった住民が目に止めたのである。
滋賀県警守山署が身元の特定にあたったが、遺体の損傷が激しく、捜査は難航した。
周辺の聞き込みを進めるうち、最近になってその姿が見えなくなっている女性がいることが判明し、家族とのDNA鑑定から、ようやく身元が判明した――。
髙崎妙子、58歳(仮名)。
遺体が発見された河川敷から徒歩数分の一軒家に暮らす女性だった。夫とは20年以上前に別居し、長年にわたって31歳の娘・あかり(仮名)と二人暮らしだった。
さらに異様なことも判明した。
娘のあかりは幼少期から学業優秀で中高一貫の進学校に通っていたが、母・妙子に超難関の国立大医学部への進学を強要され、なんと9年にわたって浪人生活を送っていたのだ。
結局あかりは医学部には合格せず、看護学科に進学し、4月から看護師となっていた。母・妙子の姿は1月ころから近隣のスーパーやクリーニング店でも目撃されなくなり、あかりは「母は別のところにいます」などと不審な供述をしていた。
6月5日、守山署はあかりを死体遺棄容疑で逮捕する。その後、死体損壊、さらに殺人容疑で逮捕・起訴に踏み切った。
一審の大津地裁ではあくまで殺人を否認していたあかりだが、二審の大阪高裁に陳述書を提出し、一転して自らの犯行を認める。

母と娘――20代中盤まで、風呂にも一緒に入るほど濃密な関係だった二人の間に、何があったのか。
公判を取材しつづけた記者が、拘置所のあかりと面会を重ね、刑務所移送後も膨大な量の往復書簡を交わすことによって紡ぎだす真実の物語。
獄中であかりは、多くの「母」や同囚との対話を重ね、接見した父のひと言に心を奪われた。そのことが、あかりに多くの気づきをもたらした。
一審で無表情のまま尋問を受けたあかりは、二審の被告人尋問で、こらえきれず大粒の涙をこぼした――。
殺人事件の背景にある母娘の相克に迫った第一級のノンフィクション。

図書館で予約して借りた本である。
この本を読んで、完全に自分とは関係ないことだと思える人は幸いだと思う。
少なくても私は、この加害者の気持ちが多少は理解できたし、運悪くこのような母親の元に育ったなら、殺さないまでも母への過剰な抵抗で何か事件になっていたかもしれないと思う。
そしてまた、母親の娘への異常な支配は、やはり母親の育ちにあっただろうとも思う。
願わくば、このような状況に追い込まれる前に、
何とか父親が母と娘を引き離してほしかったけれど、
それも現実にはなかなか難しかっただろうとは思う。
本当にやり切れないけれど、彼女がその後の人生をできるだけ穏やかに生きてほしいと願う。
時折見られる尊属殺人事件には、状況は違ったとしても
長年にわたる親の子に対する支配や虐待が背景にあるはずだ。
子どもは親を選べない。
幼い頃は特に、生きるためには無条件に従うしかない。
その過程で、誰かが気付き子どもを助けてあげてほしいと願う。





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最終更新日  2023年11月04日 09時55分30秒
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