カテゴリ:プレバト俳句を添削ごと査定?!
夏近し書肆の森ゆく子象かな 胸躍る図鑑に百獣春の宵 ノスタルジー鱒あてに読む魚図鑑 懐かしやタケノコ掘りを兄たちと 夏近し恐竜図鑑踏むチワワ 開き癖図鑑の虎に春夕焼 桜蘂降るハシビロコウ瞬く
プレバト俳句。 お題は「動物図鑑」。 今回も、 ちょこちょこと添削を添削しています。 ◇ ファーストサマーウイカ。 夏近し 書肆しょしの森ゆく子象かな 暗喩が評価された稀有な俳句。 本屋の図鑑コーナーよりも、 むしろ絵本・童話コーナーが見えてきます。 なんとなく宮沢賢治の「オツベルと象」っぽく見える。 主観的な比喩には違いないのだけど、 なぜか客観的なリアリティを感じさせるのは、 たぶん実際の場面が、 ちょっとファンタジックだからなのだと思う。 上五で切ってるのに「かな」で締めるのは、 一般的なセオリーに反してるけど、あまり気にならない。 ◇ 研ナオコ。 懐かしや タケノコ掘りを兄たちと 筍を掘りしかの日や 兄二人(添削後) 夏井先生の《楽しいな俳句》では、 最後に「楽しいな」を消去して季語に置き換えるのですが、 いかにも初心者らしく感情語をそのまま詠嘆しちゃったと。 ちゃんと消せよ(笑)。 梅沢はほんとに指導してるの? … ところで、 添削句は、中七を「や」で切ってます。 本来、 中七を「や」で切る場合は、 下五に季語を置くのがセオリーだろうと思う。 そうしないと、前段と後段のバランスが取れず、 下五がたんなる付け足しみたいになってしまうから。 先生はこのセオリーをあえて破ってますが、 それについての解説もとくにありませんでした。 ふつうに考えれば、 カットを割る必要もないのだし、 筍を掘りしかの日の兄ふたり でいいと思う。 ◇ おいでやす小田。 胸躍る図鑑に百獣 春の宵 百獣の図鑑や 春の夕焼ゆやけはや(添削後) これも感情語を上五に置いちゃったのね(笑)。 添削では、 下五を「夕焼はや」としていますが、 映像でなく時間の経過をいうのなら、 むしろ「日暮はや」のほうが適当かな、と思います。 ちなみに「春の暮」という季語は、 本来は《春の日暮れ》でなく《晩春》の意味なので、 作者はそれを使わなかったそうです。なるほど勉強になった! ◇ キスマイ宮田。 ノスタルジー 鱒ますあてに読む魚うお図鑑 鱒あてに子どもの頃の魚図鑑(添削後) これも感情語を上五に置いてしまった。 添削句では、 大人になった自分を主人公にしてます。 しかし、 作者自身は父を詠んだらしいので、 その意図を活かすなら、 鱒あてに魚さかな図鑑をめくる父 のようになるかと思います。 ◇ 皆藤愛子。 夏近し 恐竜図鑑踏むチワワ かりに、 「チワワ」の代わりに「赤子」だったら、 ほのぼのとした情景に見えるだろうけど、 最強のハチュウ類と、 最弱のホニュウ類を対比したことで、 なにやら、わたしには、 進化の歴史を壮大に皮肉ってるように見えます。 驕れる者も久しからず。苛酷な生物淘汰の句。 ◇ 千原ジュニア。 開き癖 図鑑の虎に春夕焼 春夕焼 図鑑の虎に開き癖(添削後) 描かれた場面は、 「図鑑」と「春夕焼」の2カットで構成されるのだから、 原句は、切れの位置がおかしい。 その意味で、添削が正解。 なお、先生の解説では、 《季語の「春夕焼」は差し込む光ではない》とのことで、 助詞の「に」の役割に疑問を呈していました。 …もっとも、 助詞の「に」には《並置》の用法もあるので、 (たとえば「月に雁」のような言い方) 原句の用法が間違いだとまでは言えません。 ◇ 梅沢富美男。 桜蘂さくらしべ降る ハシビロコウ瞬く え、何これ? ほんとに梅沢が作ったの? 2つの動詞を並置して、 まるでスローモーション動画みたいに仕立てた破調の句。 そもそも「ハシビロコウ」って、どっから出てきたの? あ、そっか。動物図鑑か…。 ともかく、 内容的にも、形式的にも、 今までとはだいぶ作風のちがう驚きの一句。 よくいえば型破りで放胆だけど、 悪くいえば奇を衒ってるようにも見えます。 ちょっと梅沢らしからぬ作品! それほど好きじゃないけど!(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.05.09 12:48:48
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