カテゴリ:映画・アニメ・音楽
NHKプラスで「没後15年~氷室冴子をリレーする」を見ました。
今年6月に北海道ローカルで放送された番組。 萩尾望都や藤田和子が出演してました。 30分弱の番組でしたが、 北海道では《43分の拡大版》も放送されたとのこと。 特設サイトには、 出演者インタビューの全文が掲載されてます。 https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-n753ef2a5e0bb ◇ もちろん、わたしとしては、 斉藤由貴がらみで、 萩尾望都と氷室冴子の関係が気になるのだけど、 両者の出会いについての話はありませんでした。 … わたしが知ってる範囲でいうと、 氷室冴子は、 もともと萩尾望都のマンガを愛読してて、 高校時代には漫画家になることを夢見てて、 大学時代には「トーマの心臓」に言及した評論も書いてる。
そして、作家デビュー後には、 同じ北海道出身の藤田和子のマンガの原作を担当。 宝塚歌劇団をモデルにした「ライジング!」という作品で、 その取材のために1年ほど宝塚市に住んだのですが、 1988年に「ポーの一族」(小学館叢書)へ解説を寄せ、 1993年の「氷室冴子読本」で萩尾望都と対談したころに、 2人の共通の趣味になったのが、その宝塚だったのです。 同じ93年には、 三重県で上演された萩尾望都の舞台作「斎王夢語」を、 2人で一緒に観劇したらしい。 さらに2001年、 氷室冴子が斎宮歴史博物館の学芸員と対談したのですが、 その学芸員が氷室冴子の死後に書いた記事によると… 氷室冴子もまた、萩尾望都と同じように、 斎宮を舞台にした作品の構想をもっていたようです。 …じつはコバルトの対談の時に、斎宮を舞台にした平安時代小説の新作、という話で盛り上がったのです。 ◇ とはいえ、 氷室冴子と萩尾望都の出会いが1993年だとすれば、 意外に遅かった気もします。 由貴ちゃんのほうは、 映画「恋する女たち」に主演した1986年に、 雑誌「non-no」で萩尾望都と対談してるし、 翌87年には「斉藤さんちのお客さま」にも迎えてる。 ちなみに、86年の萩尾望都は、 甲斐バンドのアルバム「らいむらいと」再発版で、 ジャケットのデザインを手掛けていました。 もしかすると、 そこで長岡和弘との接点が生まれて、 由貴ちゃんとの対談に繋がったのかもしれません。 氷室冴子が「ポーの一族」の解説を書いた翌89年には、 由貴ちゃんも「トーマの心臓」に解説を寄せています。 ◇ 由貴ちゃんは東宝の女優ですが、 もともとの東宝の母体は宝塚だし、 由貴ちゃんのお母さんも宝塚に憧れた人です。 また、 映画「恋する女たち」を監督したのは大森一樹ですが、 彼も芦屋市の育ちで、何かと宝塚には縁がありました。 1987年の映画「さよならの女たち」も、 大森一樹が撮ったわけですが、 もともとは氷室冴子が脚本を手掛ける予定で、 彼女の宝塚在住時の自伝的な作品になるはずだった。 そう考えると、 氷室冴子、萩尾望都、斉藤由貴、大森一樹は、 みんな宝塚という共通項でつながってた感じ。 ◇ いずれにせよ、 氷室冴子が萩尾望都に出会うのは必然だった。 長年の愛読者だったのもあり、 同じ宝塚ファンだったのもあり、 案外、斉藤由貴が両者を繋いだのかもしれない。 たとえば「クララ白書」の物語の舞台が 女子校の寄宿舎だったりするのを考えると、 たしかに氷室冴子の作品は、 萩尾望都の影響をたぶんに受けていたと思えます。 ◇ …とはいえ、 両者の作品が共通のテーマで繋がってるかというと、 それはそれで、ちょっと疑問に感じるところはある。 今回のNHKの番組も、 「氷室冴子は男性社会と戦っていた」 というスタンスで作られてましたが、 実際、氷室冴子は、 男性社会との葛藤を乗り越えることで、 女性としての自由を獲得しようとしてたのでしょう。 しかし、萩尾望都の場合は、 あまり男性社会を仮想敵にしてるようには見えない。 むしろ「母との葛藤」や「父との葛藤」という面が強く、 それゆえに彼女のテーマには現代性と普遍性を感じます。 そもそも、 「女性による少女マンガ」だけを読んで育った氷室冴子と、 「男性による少年マンガ」から影響を受けた萩尾望都では、 作家としての起点や基盤がちがってる気もする。 ◇ …余談ですが、 わたしは以前の記事に、 由貴ちゃんと富田靖子の共通点について、 両者とも「シャア推し」で「谷山浩子推し」と書いたのだけど、 考えてみたら、 由貴ちゃんが「恋する女たち」に主演した1986年に、 富田靖子も「なんて素敵にジャパネスク」に主演したのよね。 映画じゃなくテレビだけど。 たんに主演しただけなので、 べつに両者が「氷室冴子推し」とは言えませんが(笑) (由貴ちゃんがとくに氷室冴子を愛読してたとも思えない) なお、今回のNHKの番組では、 酒井若菜がナレーションを務めていました。 彼女はまぎれもない「氷室冴子推し」のようです。
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最終更新日
2024.01.01 09:15:52
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