自己と周りを見つめる:構造主義
今に生きていて、「構造主義」を知らないのは損だ、とこの本を読んで思いました。『はじめての構造主義(橋爪大三郎著、講談社現代新書)』、「構造主義の入門の名著」という評判を長く保っている本です。では、なぜ、「構造主義」は知らないと損か、ですがそれは平たく言えば、19世紀までの西洋のものの見方(西洋を中心的に考えていく考え方)を「新しい見方:構造主義」で論理的に<ぶち壊した(過激にいうと・・)>ことによって後の時代に大きな影響を与えているからです。著者は、構造主義を『西欧を中心としてものをみるのをやめ、近代ヨーロッパ文明を人類文化全体のなかに謙虚にいちづけなおそう、という試みだ』と述べています。「構造主義」を知ることによって、今までの西洋のものの考え方を知り、その後の考え方も知ることができる、という「一度食べて二度おいしい」学習ができます。著者は、はじめて構造主義を唱えた「レヴィ=ストロース」という人が、「構造主義」という<アイデア>にたどり着くまでをていねいに追うことで、時代を鮮やかに描き出しています。また、「構造主義」が生まれるまでの西欧の思想を古くはギリシア時代からさかのぼって説明しています。非常にきめ細やかで奥深い内容で、拾い読みだけでも十分刺戟を得られる良書です。そして、最後には現代に生きる私たちにむかい、『思想というのは自分で積み上げることが肝心』、日本人、がんばれ、とエールを送っています。最後を読む前に、「構造主義」にたどりつくまでのストロースだけでなく、さまざまな人が、まさにひとつひとつ自分の考えを積み上げていく様子をたっぷり読み、かつ、それらを見事に薄い新書にまとめ上げている著者の構成力にふれているため、素直に「そうだな~」と思わざるおえません。さまざまな意味で勉強になる本です。ちなみに参考図書も幅広く紹介されているので、本格的にもっと読みたいという人にもばっちりこたえています。