とある純文学の朝に
今回の「家曜日」は、うちの三女、フレンチブルドックのウリちゃんの、近況報告。現在ウリちゃんは、トイレ、甘噛み、食糞などの、しつけの真っただ中です。ウリちゃんはまだ子犬なので、トイレシーツ以外でお漏らしをしてしまったり、人や家具に甘噛みをしてしまったり、自分のウンチを食べてしまったりします。そんなウリちゃんに、妻のU子が、毎日毎日、執拗に、根気よく、繰り返し繰り返し、しつけを執行しています。てかさぁ、正直ねぇ、ぼかぁ、見ていられませんよ。見ていると、何だか自分がしつけられているような気になってきて、つらいですよ。「あのぉ、今日はもう、そんぐらいで勘弁してあげたらどうかなぁ。」なんつって僕、ぼそぼそっと呟き、時々ウリちゃんへ、助け舟を出してやるんすけどね、はぁぁぁああああ??? 今、えーわえーわでしつけを怠ったらいかんのっ!成犬になってからでは、悪しき習性の改善を図るのは困難なのっ!しつけは、犬にとっても、飼い主にとっても、メリットのある事なのっ!大砲、ちゅっどーーん!舟、撃沈。けっ、何が「メリット」だ、偉っそぉ~に。シャンプーの詰め替えじゃねえぞバカヤロー。ったく、どこの誰が、どの口で言ってんだ? 自分だって、毎日毎日うんこばぁ~っかしとるくせに。とかなんとか、僕、こそこそっと言い返そうもんなら、てめ、今 、な、な、なんつったぁー!ちゅっどーーん!沈みゆく舟に、二発目、追い撃ち。このキ○○○! △△ポ野郎! ◇◇◇にして、■■■にした挙句、▽▲〇にしたろか!とても書けない、罵詈雑言。舟、木っ端みじんっす。海の藻屑っす。・・・まあ、確かに、U子様のおっしゃる通り、しつけは子犬のうちが肝心なのは、間違いない。てか、僕の見ている限り、ウリちゃん、近頃トイレはおぼえたみたいなんすけどね~。問題は、甘噛みよ、甘噛み。妻や子供達への甘噛みは、徐々に減っているらしいのですが、僕、めっちゃ噛まれてっから!え!嘘!ガブガブ噛まれてっから!何故か僕だけ傷だらけ、痛てぇーの、なんの。なんかさあ、仕事から帰ってもさあ、一家の主(あるじ)が帰って来たって扱いじゃねーもん。あきらかに「あ、でっかいオモチャが帰って来た!」って出迎えだもん。手足をもがれ無残に床に転がっている犬用のオモチャのように、僕もそのうち八つ裂きだっての、あはは。犬が噛んだら、現行犯で相手の目を見て、「ダメっ!」と叱って、即ハウス(犬のゲージ)に入れる。妻は、これを繰り返し繰り返し行え!さすれば甘噛みは無くなる!と断言しますが・・・。てか、家に帰った途端に、ズボンの裾にガブッときて、ぶいんぶいん引っぱられてさ、帰宅早々、「ダメっ!」って叱って、ハウスに入れてさ、しばらく反省させてハウスから出してやる、その出しがけに、速攻でガブッといかれてさ、即「ダメっ!」つって、ハウスに戻してさ、また、出しがけに、ガブッといかれてさ、また、ハウスに戻してさ、あ、煮ってさ、あ、焼いてさ、あ、喰ってさ、・・・つ、つれえ。これっぽっちも、楽しくねえ。このままじゃ、キャッチ&ガブガブ&リリースの関係で、僕とウリとの生涯幕を閉じちゃうからさ、最近は、ウリに噛まれた事を妻に隠してウリとスキンシップを続けるという、飼い主として決してしてはならない行為を、僕はちょいちょいしています。だはは。妻がキッチンで料理をしている時などに、ウリを妻から見えない角度でハウスから出す。出しがけに、すでに腕をガブッといかれていますが、しめしめ、妻は気付いていない。無我夢中で僕の腕を咀嚼(そしゃく)し続けるウリを、妻に背を向けながら抱っこして撫でてやる。・・・ああ、かわいい。・・・ああ、なんて愛くるしいのでしょう。・・・ああ、いとおしい。・・・「てか、痛てえなコンチキショー!」あ、しまった、心が、漏れた。妻「ちょっと、あんたぁ! 今、噛まれたんか?!」キッチンから妻が叫ぶ。やべえ、ばれた。・・・いいえ、噛まれていません。妻「噛まれたんか! 噛まれたんだな?!」・・・いいえ。妻「正直に言え! 噛まれたんだろ!」・・・ウリちゃんのぽっかり開いている口に、僕の腕がたまたま挟まってしまった。それを「噛まれた」と言うのであれば、噛まれたのかもしれないね。妻「はぁぁぁああああ??? 早く叱ってよ! 」・・・こら、もう、ウリちゃん。妻「真面目に叱れ!」・・・噛んだらダメだよね、ウリちゃん。長女「真面目に叱れ!」次女「真面目に叱れ!」わ、援護射撃。妻「さあ、叱れ!」長女「叱れ!!」次女「叱れ!!!」・・・つ、つれえ。まったくもって、楽しくねえ。ああ、しつけの道って、長く険しいものなのね。いっそのこと僕、自分がハウスに入りたい気分。ウリちゃん、本日、お散歩デビューしました。はじめての外の世界、怖がって怖がって、なかなか歩いてくれませんでした。さて、甘噛みより更に問題なのが、食糞よ、食糞。ウリちゃん、妻が見ていないところで、自分のウンチを食べてしまいます。U子さん、ニガニガスプレーやら何やらで、対策を講じてはいますが、成果はかんばしくない様子。フレンチブルドックには、食糞の癖のある子が多いとは言いますが、先代モモちゃんの時も、その癖に悩まされ続けたので、さすがの妻もウリの食糞にはへきえきしている。ある休日の朝、目を覚ました僕が二階の寝室から一階のリビングに降りると、妻が、ウリのハウスの前で、うなだれている。「また、食べてた・・・。」朝起きて見ると、ゲージ内のトイレシーツに連日ウンチを食べた痕跡があるらしい。「もう、つらい・・・。」と妻、意気消沈している。さすがの僕も、妻に同情しかけたその時、続けざまに妻がこう言った。真夜中の、ハウスのウンチは、我慢できない。・・・え? なになに??あの、U子さん、もう一度今のフレーズお願い出来ます?妻、リピート。真夜中の、ハウスのウンチは、我慢できない。いいね! 詩的なフレーズだね! ポエムだね! シュールだね!ポエトリーリーディングの会で、現代詩人が全身白塗り赤フン一丁で、開口一番に叫ぶよね!真夜中の、ハウスのウンチは、我慢できない。ぎゃははははは! なんつって大笑いする僕に、ちょっとは真面目に考えてよ!と、妻ご立腹。それをしり目に、僕、さてコーヒーでも飲むかと、お気に入りのコーヒーカップをカップボードから探す。あれれ?おかしいな、僕のコーヒーカップがない。 探しても、探しても、どこにもない。「あのお、U子さん、僕のコーヒーカップ知らない?」「ああ、あれ? ほら、花瓶に使っとるがね。」よく見ると、リビングの棚の上に、僕のコーヒーカップ。 花を活けて飾っとる。おいおいおい。僕のコーヒーカップは、花瓶じゃない。と僕が文句を言うと、妻、先ほどの仕返しか、突然大笑いして、「いいね! 純文学の書きだしみたい! その小説、私読みたい!」だって。・・・憎ったらしい。妻曰く「あんたのカップを花瓶にした訳ではない、もともと花瓶として使っていたカップで、ある時から、あんたがコーヒーを飲むようになったのだ」とのこと。花瓶が、カップになったのか。カップが、花瓶になったのか。さてさて、それが、問題だ。と、僕、思わず呟いて。その後、夫婦で、腹がよじれるほど大笑い。カーテンを開けると、馬鹿にしているかのような、ちょっと腹立たしいほどの青空。寝ぼけまなこに向かって飛んでくる、鋭い朝の光の矢を、二・三本手で払い落す。とある純文学の朝に、笑い疲れた僕たちは、座敷犬と一緒に、陽だまりに、寝そべったのでした。にほんブログ村