ドイツ中で話題の映画、「香水」は、今日が一般公開初日だった。
ドイツではなぜか、木曜が映画の一般公開初日。公開初日に観る映画、何年ぶりだろう。覚えがない。
真ん中に座るのが好きなのだが、公開すぐは難しいので、避けることが多いのである。
観客の入りは、500人くらいのホールで85%くらいだったかな。
ここはまだ学校が夏休み中なので、高校生くらいの年頃の観客も結構いた。
へーえ、と思ったら、学校の教材にも使われているらしい。
さて、内容。
とにかく原作に沿った作り。
原作はご存じだろうか。
歴史をベースにしたミステリーなのだが、
誰がどう殺すというのは分かっていて、その手順と理由を眺めていくストーリー。
主人公はくっさーいサカナ市に産み落とされ、社会底辺部に育った、奇特な嗅覚の若い男。
匂いの保存法を知るために調香師に弟子入り。
その後は内緒。
2時間の超大作。
映像、きれいです。しかし人間くさい。
メイクも、単行本カバーに合わせた、濃い、濃密さが漂うメイク。
香りを嗅いだときの演技が、俳優によって少しずつ違って、面白い。
無名俳優の起用は、成功です。
これがブラピだったら、ブラピが役をこなしている映画になってしまうわけで、
原作の描いている世界に観客のもつブラピの世界のイメージが重なってしまう。
しかし、匂いのでない映画でよかった。
でたら、耐えられないところも多分にあっただろう。
悪臭の表現はサカナ市の鮮度の落ちたサカナたちから始まり、
薄汚れた服、埋められた髪、服、・・・
嗅いだことのある人は蘇ってくるけど
なぜか吐瀉物の描写はなく。
あれが一番耐えられないと思うんだけどなー。
さて、良い匂いの方ですが、
香水の嗅ぎ方が、優雅です。それが、最後の男の振る舞いにも効いてくる。
主人公にとってのもっともかぐわしい匂いは、どうやら女の人の匂いだったようで。
しかも、一人をのぞいてすべてが生娘。
単に処女を良い匂いだと思ったのか、
それともその処女性=無垢・潔白などなどを意図的にハートノートにしたいと思ったのか、
進むうちに解釈の可能性が広がっていく。
館の守りの緩さなど、正面はきっちりしても、周りなどは
へぇ~結構アバウトでどうしようもないのだなぁ・・・なんて、
メインストーリーとは別のところで 面白かったりして。
ふつーに幸せになれなかった男の物語。
人として、何が欠けていたのだろう。
原作(訳)読んでなくても、まったくOK, 日本語の訳は、文庫化されて改訂されたのだろうか。
初版の訳は、意訳と話削りのオンパレードだと
独文授陣と当時の院生たちに非難されていました。
訳の妙は、特に文学作品に関しては、意見が分かれるところですが。
そういうわけで、映画の方が忠実だったりしてね(笑)
そうそう、映画に出てくる黄色い果実、ミラベルといい、
プラムの一種(現に、黄色すももとも呼ばれる)ですが、
ドイツでは、さくらんぼよりちょっと大きいかな、巨峰かなくらいの大きさなのですが、
映画ではテニスボールくらいある。
フランスの、ナンシーなどが名産地らしいのですが、
そこら辺は土が良いのか、それともナンシーミラベルが大きい種類なのかな。
MAOねぇさん、解説どうぞよろしく。
追記。
ナンシーミラベルというのは、大きな黄色スモモを指すようで、
これが映画で使われていた模様です。
但し、フランスにお住まいのMao姉さんによれば、
ミラベルはフランスもドイツも変わらない様子。
映画に出てくる「ミラベル」は、ミラベルにしてミラベルにあらずです。