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カテゴリ:感動した本・映画・音楽
相続の申告を依頼され資料を集めていくと、最後に葬式費用の明細を目にすることになる。
お布施「読経料」は? 戒名は? もちろん領収書なんかあるわけもないが確認をしなければならない。 相続人はいくら支払えばよいものか解らず、世話役さんから相場を聞いてなんとなく支払っていた。 なんと 訳も分からず80万円を支払っているのである。さらに話を聞くと戒名は生前に授かっていたという。 いったいお布施とは 戒名とはなんぞや? ふらっと 本屋へよったら 一冊の本が目に飛び込んできた。 島田裕巳著「葬式は要らない」 タイトルだけをみると強烈である。 島田氏によれば、膨大な数存在する仏典では、戒名について説明されていないというのである。 戒名料についての説明がどれも奥歯にものがはさまったような言い方しかしていないというのだ。 島田氏自身も、天台宗の「葬式と戒名のつけ方」の冊子からの説明を引用している。 「仏門に帰入する」・・・・俗界をはなれて仏教の信者になることを意味する。 戒名は その人間が仏教徒になった証として授かるものだという。 つまり出家した僧侶がその証として戒名を授かるもので、一般の在家の信者が死後に授かる戒名は日本にしかない独特の制度なのだそうだ。 出家したはずの僧侶が妻帯し、酒も飲む。どちらも五戒によって戒められているものだ。 日本の仏教が葬式仏教に成り果て堕落してしまっている原因は、戒名と戒名料なのだというのである。 さて ちょっと歴史を紐解けば、仏教式の葬式が開拓されたのは道元であるという。 鎌倉時代。日蓮は、法然や親鸞の念仏宗をもっぱら批判していた。さらに真言宗や天台宗の密教の実践も批判していた。 日蓮亡き後、日蓮宗にも加持祈祷を行うようになり、密教が殆んど全ての宗派に浸透していくのである。 曹洞宗においても経済基盤を確立するために、加持祈祷や祭礼を取り入れていくことになる。儒教の影響を受けやすい禅宗は祖先崇拝が重視され、 それが死者の供養にも用いられるようになり現在の姿に変わってきているのであるという。 実家が曹洞宗である私としては、父や母の葬式を思い出す。 巨大な祭壇、生花、高額の戒名(と思う。兄が喪主なのでわからない)…。浄土を目の前に出現させようとしていた。 日本の葬式は世界でダントツに高くなり、平均して231万円という破格の葬式費用と成っているのである。 さて 戒名に話を戻すと、戒名は自分でつけても良いのだそうだ。そのまま 俗名で葬ってもらっても良いという。 「こうしなければならない」という決まりは特にないのである。 ただ 遺族側としては、世間体もあり また「やれるだけのことをやってやりたい」という気持ちがあり、死後も華やかに暮らせるようにと願うのも事実である。 核家族化が地方にまで進んでいる現在。 既成の葬式に対する疑問はますます高まってきており「直葬」や「家族葬」のような身内だけで静かに見送る葬式が今後増加してくるのではないかと記していた。 しかし島田氏は「自分の葬式については家族に任せたいと思う」となんとなく締まらない結末なのでした。 あの白洲次郎さんは、「葬式無用、戒名不要」と遺言したという。 最後までなんとかっこいいことか。 安西節雄 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.04.19 08:27:24
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