桜は春に咲くものと決め込んでいたのですが、年がら年中咲いている不断桜があることを知ったのは、3年前に秋の湖東三山を訪ねた時でした。
百済寺、金剛輪寺でも咲いていましたが、最も有名なのは西明寺の不断桜です。秋の陽に照らされて咲いていたこの桜は、樹齢約250年、天然記念物に指定され滋賀県の文化財でした。
湖東三山から帰って間もなく、いつもの散歩コースで不断桜を見つけました。これまで気づかなかっただけで、我が町にも直ぐ近くに不断桜があったのです。時は11月初め、市役所玄関先の庭で白い小さな花をつけていました。
それ以来、散歩で通りすぎる度に注意して見ていると、一年中何時でもぽつりぽつりとほんの僅かでも花を咲かせて絶やすことがありません。
それでも緑が萌え出す春先から、木の葉が色とりどりに艶やかに染まる秋が終わって落ち葉の季節になるこれまでの長い間、この小さな白い花は、周りの樹木にひっそりと隠れて全く目立ぬ存在だったのです。
右上の写真ではあまりはっきりと見えませんが、時折寒風が通り抜ける晴れ渡った冬空の下で、白い可憐な花を咲かせていました。下の写真を見ると、これまで主役だった緑の松と黄葉した銀杏が引き立て役に廻り、控えめでも健気に咲く不断桜を一生懸命盛り立てているかのようです。