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Jun 30, 2011
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カテゴリ:南極半島クルーズ

平成23年3月11日午後、ラジオの緊急地震速報チャイムが鳴った。パソコンの手を休め聞き耳をたてた。「2時46分頃、震源は三陸沖、深さ10km、マグニチュード7.9(後に9.0に修正)、震度7・・・」。乾いた声が響いた。
殆どのテレビ局が、地震のライブ放送に切り替えた。被災状況が刻一刻と映し出された。津波に襲われる。現実の出来事かと目を疑う惨状が広がる。被災地は停電して、原子力発電所の炉心冷却装置が働かない。翌12日に、福島第一原発1号機が爆発した。放射能汚染の危険が高まり、避難指示が拡大した。地震発生から2カ月近くも経った今でも、傷跡は深く痛々しく、余震の不安も消えない。
瓦礫の山を見せられ、未だに救い出そうにも救い出せない尊い命が埋まっているかと思うと居たたまれない。

地震発生の日、私は、冊子を九分通り仕上げ、明日にも完成させようとしていた。しかし災禍で心が揺れた。それから4月下旬までのひと月半ほど、私は冊子を忘れた。うっかりではなく、意識して忘れた。冊子に納めた写真の世界は余りにも綺麗だ。それに引き替え、この惨状は何なのだ。落差が大きすぎる。被災者は、戸惑い憔悴しきって避難所に逃れ、不安を抱えて窮屈な生活を送っている。
しかし私には、義援金募金にささやかな協力をする以外、手を差し伸べる術はない。とても南極の景色に酔いしれ、旅の余韻に浸れない。巨大地震と大津波に原発事故が重なり、今なお余震が止まず、破壊された原子力発電所が撒き散らす放射能汚染の恐怖も遠のいていない。

だが、地震発生直後から、国をあげて救命救助に向かった。募金や応援セールが始まった。ボランテイアが動き、チャリティーイベントが催された。世界中から支援の手が差し伸べられた。震災支援コンサートが開かれ、芸術活動やスポーツ行事も平常に戻り始めた。プロ野球が開幕しJリーグが再開し、海外で活躍するアスリートから応援のメッセージが届いた。被災者は音楽を聴いて慰められ、スポーツ選手の活躍を見て勇気づけられた。被災地と被災者を忘れてはならないが、過度の自粛は鎮まり、人々は各々の立場でできることを始めた。4月下旬、私も冊子の編集作業を再開した。

地震を知り先ず気にかけたのは、岩手県藤沢町の姉のことだったが、次に脳裏を走ったのは岩手町の様子だった。そのわけは、今年1月29日付日本経済新聞夕刊の内館牧子さんの「青い雪」と題するコラムに拠る。内館さんは1月9日、岩手町の「石神の丘美術館」に隣接するレストランで、窓をふさぐ雪が青く光るのを見た。その時の感慨を「それは水色の小さな灯がともっているかのようで、幻想的なことと言ったら言葉を失う。(中略)この時ほど環境保護を感じたことはない。何の根拠もないのだが、環境汚染された地域に青い雪があるわけはないと思ったのだ。そして、人間が出現する前の、太古の雪はきっと青かったに違いないとまで想像してしまった。」と記す。この下りを目にし、我が意を得たりと膝を打った。「あとがき」で述べた「pristine」即ち、「『太古の』青く光る雪や氷」を、つい数日前に、南極で見てきたばかりだったからだ。雪や氷が青く光る原理は、今や科学的に、光りの波長の違いなどから解明されているが、私は「環境汚染がないから青く光る」と素朴に考えても「環境を汚してはならない」との意識が十分に高まると感じている。
幸い岩手町の地震被害は、甚大ではなかったようで安堵している。

目にも見えない放射能汚染が、地球と生きとし生ける物にとり、どんなに恐ろしいか実感した。福島第1原発から放出された放射性物質は、北半球はおろか、南半球のオーストラリアやフィジーでも観測され、地球規模での拡散が確認されている。南極に及ばないという保障はないだろう。クルージング前に渡された「環境省地球環境局」の冊子に、「南極は人類共通の財産」とあった。財産だから汚してはならないが、汚すのはいつも人間だ。だから、環境汚染による災難はすべて人災だ。どんな天変地異が起ころうと、人が関わらないところに人災はない。自然を崇め自然の摂理に寄り添って生きる大切さを思う。そして今は、旅で撮った南極の「美しい」景観をそのまま未来永劫に残すためには、環境に優しい自分にもできる小さな行動を、積み重ねていくしかないと思っている。

日本の「美しい」もまた南極に劣らず、全国津々浦々に数限りなく点在するが、桜は格別だ。今年の桜前線も、何事もなかったように被災地にもきて、被災地を越えて北上した。その折り、4月24日「日経俳壇」入選の「さくらさくらさくらさくら万の死者」の句の前に釘付けになった。大船渡の桃心地さんの作。臆面もなく、倣うことをお許し戴けたものとして私は、南極の「こおりこおりこおりこおり万の彫刻(ほり)」を撮って来たと自負して、独り悦に入っている。
そしてもしも、震災が起こらなければ入選句は、「さくらさくらさくらさくら万の息吹(いき)」とでも詠まれたのではと思うと悔しい。しかし何時の日にか、そんな春の日が、必ずやってくることを信じて疑わない。(平成23年5月1日)

 
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最終更新日  Jun 30, 2011 09:40:24 PM
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