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カテゴリ:君がいるから
BL小説です、興味ない方、嫌悪感を抱かれる方はご遠慮下さい。
午前の仕事を終え屋上に上がった。 流石にオフィスや社食で栢山の弁当を開ける訳にはいかずここに来たのだった。 空を見上げると少し霞んだ青空が広がる。 風が穏やかで心地良い。 「おい!さっくん」 あの日以来、顔を合わせることの少なくなった倉本が久し振りに顔を覗かせた。 藤野自信、避けて居た訳ではなかったが自然と倉本とは距離を置いてた。 「その呼び方止めろって言ってるじゃないか」 照れ隠しに怒って見せる。 「う?いいじゃないかお前と俺の仲なんだから、お、弁当か?」 ひょいっと弁当の包みを取り上げ勝手に開く、鮭のおにぎりと梅干のおにぎりが行儀よく並ぶ脇におかずが綺麗に詰められている。 栢山の気遣いに嬉しさを隠しながら倉本を見ると卵焼きを摘んで口に放り込んだ。 「旨いね、腕上げた?」 その言葉に高校時代を思い出した。 藤野が自炊をしているのを知ってアパートに押しかけて来ては食事を集るのが日課に成っていた。 それは大学の寮に入るまで続いた。 迷惑だとは思わなかった。 子供の頃、二人の秘密基地で倉本の母親に作ってもらった弁当を食べのを同じに思い出した。 「それ、栢山が作った」 「ぶっ!早く言えよ」 「だってお前が悪いんだ」 「栢山にお前を託したのは正解だったかな。。。」 寂しげな倉本の声、弁当箱を返して天を仰ぎ、タバコを取り出し火を点け吸った。 紫煙が揺らめきながら昇っていくのを見詰めながら言葉を続ける。 「悔しいよ、お前が幸せで。。。」 「倉本。。。」 「お前抱いたの間違いだった、未練で一杯だ、なぁ、藤野、こんな俺でもまだ親友だと思ってくれるか?幼馴染でいてくれるか?」 切なげな声、タバコをもみ消し藤野を抱き寄せる。 藤野の答えは分かってる。 だがあえて本人の口から聞きたい言葉で有った。 出合ってからずっと片想いのまま、それで良かった。 いや、そうでなければならなかったのだと抱いて気付いた。 「倉本、苦しくない?」 「すげぇ、苦しい、だけどお前の2番良いんだよ、俺は。。。」 「俺の影に成ってくれるんだろ?」 「お前が傍に居る事を許すなら俺は影になる」 「倉本、居てよ傍に。。。俺って凄い贅沢だな」 「お前はそれで良いんだよ、幸せになれ、その権利はお前にも有るんだ」 「俺は倉本を不幸にしてる」 「俺はお前の隣に居るだけで幸せなんだ気にすんな」 腕に力を入れて抱き締める。 恋人ではないが傍にいて幸福感を味わえる。 それで良かった。 「これは栢山に内緒だぞ」 そういって口付ける。 それは恋人のそれとは違う。 「アイツ、怒るだろうな」 「ふん、栢山だけに美味しいことはさせない」 「倉本、お前は本当に良いのかそれで?」 「あの日、お前が引っ越して来た時から決めてたんだ、気にするな」 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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