お菓子の話
毎日毎朝、ねむい。 このごろは朝に限らず午前中も午後も、一日中まんべんなくねむい。 かつてなかったことである。 おまけにからだが重い。そのせいか膝が痛い。痛いといえば眼が痛い。肩も首も痛いし、すでに3年越しともなる右手の筋挫滅だが痛みも激しくなっている。 もはやぼろぼろだな。 ぼろぼろなのはからだだけではなく、アタマというか頭脳回転というか、ことばにする以前の想念にかかわるはたらきがぼろぼろで、これが困ってしまう。 おととい、大坂間さんが、かみさんも出演した演奏会を聴きにきてくれたことはすでに書いた。 帰りに合流して飲み食いを愉しんだのだが、その場で、からだ以外の困ったぼろぼろがあからさまになったのだ。 パリのお菓子屋さんのことが話題に上がっていた。 ぼくは市場の立つビュシー街に面したお菓子屋さんについて「万難を排して行くべし」と伝え、ただしそこには2軒のお菓子屋さんが並んでいるから気をつけてとも話していた。 さらに、気が向いたらサロン・ドゥ・テに入ってみるといいともいい、ふいにリヴォリ通りのアンジェリカを思い出したのだ。あそこもサロン・ドゥ・テで、マドレーヌだったかモンブランだったかが「アンジェリカの何々」として知られている。 あ、書き忘れたが大坂間さんはいまケーキ作りに夢中で、パリへの研修旅行を目論んでいるところなのだ。 アンジェリカはスノビズム一杯の店だが話のタネにぜひ行ってケーキを食べてくればいいと、ま、ぼくはそういいたいわけだが、ここで伝えるべきはアンジェリカという店がむかしマルセル・プルーストの行きつけだった事実なのである。 ところが、ぼろぼろになったぼくのアタマはプルーストの名を口元まで運んでくれない。 「え~と、ほら、失われた時を求めてを書いた作家さ、名前を度忘れしてしまったよ、ほらほら、誰だっけなぁ」。 我ながら呆れました。 パリはともかく、お菓子の話というと京都がはずせない。 大坂間さんはケーキとともにパン作りの勉強もしており、いや勉強はもちろんだがすでに教えている人であり、京都に行ってきた話もあったのだ。 で、ぼくは、京都に行くと必ず寄る喫茶店でパンを作っている店のことをいおうとして、ありゃ、こんどはこの店の名前が出てこない。 ほどなく思い出し、いまは駸々堂とすんなり書けるけれど話のまっ最中に店名が出てこないとなると聞いている側は何の話かさっぱり分からず、いやはや、まるで話にならなかったのである。 そう、駸々堂です。 こんど京都に行ったらあそこのパンを試してみてください。そして評価を聞かせてください、大坂間さん。 そうそう、写真は上記おとといの演奏会場。 上野奏楽堂といっても、じつは上野には芸大構内の奏楽堂と、この旧・奏楽堂の2つの奏楽堂がある。ややこしいことであるが、滝廉太郎もピアノを弾いたという文化財ふう奏楽堂はここだ。