7月12日の新聞を読んで
きょう7月12日、第21回参議院選挙が公示され17日間の選挙戦が始まった。 ニュースを見ていた蓮太郎くんが「(結果が)たのしみだ」という。それを聞き、わたしは時勢の気分を代表することばだなと思った。 参院選もだいじだが新聞を読んでもっとも気になるのはパキスタンで起きた政府による市民大殺戮だ。政府の指令により軍隊や警察が自国民に銃を向け殺しまくるという1989年の第二次天安門事件と同じことが繰り返されてしまった。 モスクにいる人々を日本のメディアは「過激派」と呼んでいるが意味がさっぱり分からない。 せめてイスラム原理主義者といえば分かりやすいのにどうして、わざわざ「過激派」などという分かりにくい呼称を用いるのだろう。イスラム原理主義がどういう宗派かについてわたしはよく知らないが、単に「過激派」と呼ぶだけでは何も伝わらないことぐらいは分かるのだ。 海外のメディアは、たとえば英国BBC放送は「resistance in the Red Mosque」という具合に「抵抗組織」と呼んでいる。 ロサンジェルス・タイムズ紙は「反逆者(rebel fighters)」と書き、同時にそれがかなり複雑な組織体であることも報じている。 ムシャラフ大統領(President Pervez Musharraf)は彼らを100人以上も殺したが、そこには本当に殺さなければならない理由なり事情なりがあったのかというと、わたしは疑問をもつ。 周知のようにムシャラフの背後には米国政府がいてパキスタン政府をいわゆる「テロとの戦争」に駆り立てている。今回の急襲はその延長上の出来事であるのは歴然としており、市民と学生を対象とした無惨な殺戮はブッシュ政権の意向によるものと考えればコトの輪郭が見えてくる。 米国政府はイスラム原理主義を殺せば「テロとの戦争」が終熄し世界が平和になるという展望をもっているのだろうか。 もっているわけがない。 米国政府が「テロ」と呼ぶ集団が、もしも米国のような重武装の軍事行動をとれる状況にあったらゲリラ的な爆破計画なんぞは企てないのだ。市場などに自動車爆弾を仕掛けるよりも最新鋭の戦闘機にミサイルを積んでワシントンやらニューヨークやらを攻撃するほうが効果的なことは自明ではないか。 ところが現実にはそういった軍事力は米国の専有物となっている。そして米国の国益だけを一方的に求め、その成就に執着し、邪魔する者が現れれば排除するというわけで、要するに「ブッシュの我が儘」を完徹させるのである。 しかしブッシュ政権はイラクで失敗しアフガニスタンでも失敗し、いままたパキスタンでも市民の声を無視するという失敗を冒した。 パキスタンで100人単位、アフガンで1000人単位、イラクでは数万人の市民を殺しまくることでブッシュ政権は、そりゃ莫大な利権も得るのだろうが、じつはさらに大きな怨嗟に取り巻かれることにもなるのである。 そうして再び「テロ」が横行する。 現に、イスラマバードの急襲殺戮戦が終わった数時間後「アルカイダのナンバー2」とされるアイマン・ザワヒリがパキスタンのイスラム教徒に、ムシャラフ政権に対する報復攻撃を呼びかけたではないか。 Hours later, Ayman Zawahiri, who is said to be the No. 2 leader of Al Qaeda, called on Pakistani Muslims to wage holy war against the government of President Pervez Musharraf in retaliation for the assault on the mosque.(ロサンジェルス・タイムズ紙)