カテゴリ:日本経済
バブルを考える(71)
長銀一時国有化決定 破綻前の段階での、長銀への再度の公的資金の投入は、結局断念されました。それが5千億円を超える関連ノンバンク向けの債権放棄に使われることが明らかでしたから、「バブルのツケをまたまた税金で払うのか」という疑問や批判に耐えられなかったからです。2年後同じことが「そごう」の倒産劇でも起こるのですが… こうして長銀の処理は、金融再生法に委ねられました。与野党の政策協議によって纏められた法案は、10月12日に成立しました。 この金融再生法の骨子は、破綻が心配される銀行を特別公的管理の下におくこと、即ち一時的に国有化することにありました。明らかに経営の自主性を喪失した長銀処理を念頭において、作られた法律だったのです。そこでは、一時国有化した銀行の株式は、いずれ他の金融機関に譲渡すること、特別公的管理の申請は、長銀自身が行う事なども合意されていました。長銀自身が申請するなら、長銀が債務超過に陥っているのか、否かといった政争になった問題を、玉虫色にしたままに出きるからです。 金融再生法は、第36条において、特別公的管理の要件を (1)債務超過に陥っていること (2)預金の払い戻しを停止する畏れがあること (3)預金の支払いを停止した時 の3点のうち1点でも該当した場合と規定していました。 この条文に与野党合意で、次ぎのように第37条が加えられたのです。 「金融再生委員会は、銀行がその業務または財産の状況に照らし、預金等の払い戻しを停止する畏れが生ずると認める場合であっても、…… 当該銀行につき、特別公的管理の開始を決定する事が出来る」 払い戻しを停止したのではなく、停止する怖れが生ずるのですから、現時点では生じていない場合でも、良い事になります。となれば実質債務超過か否かは、問われないことになります。政治問題化した長銀問題、債務超過か否かを棚上げする形で、与野党のメンツが共に立つ形で、長銀の運命を決したと考えることが出来ます。 98年当時、崩壊したバブルの膿を、外科手術で切開して、全てを取り除くことをせず、ひたすら先送りすることで、著しく体力を消耗した日本の経済界、特に産業界に君臨してきた金融界は、もはや民間銀行の破綻を、業界の力で処理する能力を完全に失い、政治にもたれかかる以外の解決法を用意できなくなっていたことが、この迷走劇の背景にある現実でした。 そして、金融再生法が成立したところで、今度は36条と37条のどちらを使うかが問題となりました。 続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.12.18 19:48:03
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