カテゴリ:国際政治
第一次世界大戦(34)
ドイツ軍部のあがき…2 軍部から首相就任と休戦交渉をまとめてほしいと依頼されたマックス大公は、すぐに休戦を申し入れてほしいという軍部の要請に対し、いきない休戦を申し込むと、足元を見られて不利になることを上げて、ドイツの現状から見て,無理でない戦争目的の先ず内外に宣言すべきだと主張しました。 10月2日、参謀総長のヒンデンブルクが,大本営を離れてベルリンにマックスを訪ねてきます。平和交渉の担い手に相応しい人物は、マックスをおいていない。だからマックスには是非とも首相を引きうけてもらいたい。こう考える軍部の必死さが読み取れる行動でした。 ヒンデンブルクに対しても、マックスは持論を展開し、すぐに休戦を提案することの愚を説きました。 「軍部はウィルソンの14ヶ条を基礎とした平和条約を結びたいと言っていられるが、その際にはエルザス・ロートリンゲン(アルザス・ロレーヌのドイツ語表記)2州と東ドイツのポーランド人居住地域(ポーランド回廊ほか)を失う事を承知しているか?」とマックスは、ヒンデンブルクに問い掛けます。 ヒンデンブルクの答えは書面で寄せられ、現存しています。彼は、ドイツが割譲を求められる領土は少なくて済むと,考えていたのです。 「最高軍司令部は、フランス語を話すエルザス・ロートリンゲンの小部分の割譲には賛成する。しかし東ドイツの領土割譲など、もってのほかだ」と。 今にも全戦線が崩壊するかもしれないという危機にあって、なお敗戦は部分的であるという幻想にしがみ付いているのですから、あきれたものなのですが、これが当時のドイツの最高権力者の実態でした。軍人にはとかく、この手のタイプがいるようです。第2次大戦の日本が、あの状況になるまで、敗戦を受け入れなかったのも、この手の軍人が独裁権力を握っていたが故であったことが、思い起こされます。 ヒンデンブルクらは、休戦期間中に部隊を再編成して、再度戦闘に踏み切ることが可能であると判断していたのです。 ドイツが再び戦闘を起こしうるような条件で、協商側が講和に応じてくれる可能性がないという事など、彼等は考えようともしなかったのです。 休戦になれば、敵側の軍事的優位を知る兵士達が、再び立ちあがる戦意など、まったく見せないであろうことに、現場を知らない軍指導部は、思い至らなかったのです。彼等は、ドイツ国内の、特に農村部の不満と窮乏が,既に沸騰点に達していることにも、気づかずにいたのです。 続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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