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テーマ:読書(8213)
カテゴリ:本日読了
2021/09/26/土曜日/曇り時に小雨
〈DATA〉 平凡社/1974年出版 岡 茂雄著/ #図書館本、後購入 〈私的読書メーター〉から 〈本に縁あり名付けて本縁?ありがたや。素晴らしい読書時間は出版人岡茂雄氏の人間性故。大正昭和にかけ当にこれから盛大に花咲く斯学、人類学民俗学考古学或いは登山鳥類の、出版を通し顕となる大家お歴々の人物描写は計らずも、氏の人間を表す。軍人を辞め出版人となる動機は文末ようよう数行出てくるが、岡書院の堅牢な装釘と金銭省みぬ営業の不味さは軍人出自を彷彿。また現状の悪弊看過せず自分を勘定に入れず新規を即行動に移す軽やかさは生来の性か。熊楠に愛され阿南惟幾に直に乞われ軍復帰とは!岩波、筑摩、出版知識の愛心、信濃にあり。〉 書名の本屋風情とは編集人として懇意にしていた柳田國男氏が、同席で写真撮影の時か何かに岡氏に発した言葉だ。名誉を重んじる士家の末裔とあれば当初肚にすえかねもしたものの、商人道に生きんとするものがこんな事ではいかんと反省もし、爾来之を座右としたかもしれない。その出版人の大いなる理想も敗戦色濃い中に倒れ、本屋風情にすら届かなかったことを晩年述懐している。 学会の大人物と世間に知れ渡る人もその欲気殺気の揺れ幅には人として度し難い者多く、しかしながらその仕事のみは矢張り優れていると認めざるを得なくもあり。 南方熊楠のような人間スケールは、あらためてこの本で生き生きと伝わりある訳だ。 渋沢栄一嫡孫、日銀総裁、大蔵大臣、財界人にして民俗学者である渋沢敬三氏が岡氏を頼んで、有望な研究者に金銭支援した事はもっと知られてよい。敬三氏自身は擦り切れたシャツを着用し、私人として家族で移動するときの汽車は3等だったという。真の一流とはこんな具合だろう。 事実を歪める事がどうにも許せない、岡茂雄という人の気性は何とも懐かしい、慕わしい。いくたびか泉下の父の顔が回顧された。氏は士家の出で明治の人で必ずしも父と同じくはしないけれど、山側に育ち軍に属し、(父は公務員だったが3度応召され曹長で終戦)一家の反対を押し切り商売人となった点など。氏の発意は学問であったが父のそれは宗教哲学であったと理解している。 氏はそれでも郷に快く?迎えられたが、父は正門から出して貰えず、裏門から母親だけに見送られて家を出て以来疎遠で生きた。昔の人とはそんな風であったのだなあ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.09.27 18:44:02
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