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テーマ:読書(8198)
カテゴリ:本日読了
2023/07/07/金曜日/腫れ上がり
〈DATA〉 新潮文庫 編者 太宰治 昭和49年3月30日 発行 平成21年4月20日 四十刷改版 令和5年1月10日 四十五刷 〈私的読書メーター〉〈面白い。言葉と感情の連弾と疾走。どうみても若きハムレット=旧制高校時代の太宰治。金木の生家、斜陽館は当時周囲を圧倒し当にお城であったろう。津島家をデンマーク国王一家に置換。一大事はお家=お国の存続。番頭一家のいわば庶民クラスの交情なんぞは夾雑物、家政円滑のかなめは振舞いであり感情は糊塗され、見た目至上。若いハムレットは立場を理解するも甘えたい、訴えたい。オフィーリアに言葉で愛が欲しいと漏らして反論される。彼女といい王妃といい、ぶれない存在の周囲をとち狂う男たちが戦争を前に体面を繕おうと躍起。これ戦中作品〉 率直に言えば、太宰治はそんな好きな作家ではない。 そもそも教科書の『走れメロス』が初対面というのもいけなかった。教えられる道徳がイヤな年頃にこれはフィクション過ぎた。 周囲の文学少女に背中を押されるように読んだ『人間失格』は読むのが苦しい作品だった。 それから何年も経って3.11の事を伺った方から勧められて読んだ『駆け込み訴え』 大変驚くべき作品だった。その才能は信じられた。 本作はそれに連なる作品で、心理描写と言葉が溢れもつれ、渦の中に引き込まれる勢い。 新潮文庫版には他に短編四つが含まれる。 『女の決闘』は、当時の逐次刊行6回に登壇した、何というかオリジナルを解説しつつ太宰治文学を建築する講座、のような実験的作品。 その技巧の手の内をどこまで披露したかは私なんぞには理解及ばぬ。それに比べると『乞食学生』は素朴ながら、太宰治という人の美質が素直に表現されて、また師匠の井伏鱒二のような諧謔を持ち合わせ、わたしなんか大好きだなあ、これ。 熊本君の鼻エピソード、バスを待ちながら爆笑堪える。ゼンチンナイグの鼻などにじむ。 しかし。後年この人喰い川と地元の人に言われた玉川上水での入水自殺が重なる事実を呼び起こせば、腹に下駄の後、背中に冷水、ピカピカの革靴。 ↓桜桃忌6/19 2023 ↓6/17の山梨の桜桃 2023 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.07.07 09:51:59
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