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2024.03.26
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テーマ:読書(8218)
カテゴリ:本日読了
2024/03/26/火曜日/止まぬ雨の日


近頃稀に見る良い読書時間をもった。



〈DATA〉
出版社 作品社
著者 ジョン・ウィリアムズ
訳者 東江一紀
編集協力 布施由紀子

2014年9月30日  初版第1刷発行
2015年10月30日初版第9刷発行


〈私的読書メーター〉〈よい小説は遥か遠い所へと読む者の心を運び、これが体験でなく読書であったことに戸惑いをもたらす。そんな作品だ。最終章、静かに涙をこぼす。涙の源泉が何であるかも掴みきれない。ストーナーは幸せだったのか不幸せだったのか。そんな線引きは意味を成さず、ただ控えめでよき人の偽りのない人生があったのだと感得する。学問への感激、「死にゆく肉体に生が振り付ける舞踏のような」老いの横溢も全て受容する。ストーナーの両親が一人子の彼の全てを受け入れたように。その愛はストーナーが肉体を去る間際に更に大きな光に変容し彼を包容する。〉



ウィリアム・ストーナーは、「大草原の小さな家」のように、夫婦だけで原野を開墾する農家の一人息子として生まれた。彼をめぐるごくわずかな人びとが、どの人も細大漏らさず描写されている。

無学だが心から息子を愛する両親

風変わりだがこれまた心から英文学を愛する指導教授スローン。彼が暗唱するシェイクスピアのソネット!これがこの物語終章に共鳴しているのだ。

二人の学友の内、一人は志願した第一次世界大戦で命を落とす。若くして逝った友はストーナーにとって決して不在ではない。

一目惚れの美しいイーディスとの結婚狂想曲。彼女の極端さは振り切れ方が戯画的だ。プロテスタント的な純潔鬱屈の犠牲者のヒステリーと、静かで繊細だった、引き裂かれるまでは彼の支えでもあった娘。家庭の中に居場所のないストーナー。

同僚、厄介な学生、大学内の政治的駆け引き

キャサリンとの出会いは淡々としたものだ。

大学院指導ゼミ受講者だった彼女が目を通してもらえないかと差し出した学位論文。その出来栄えに蘇生するかのようなストーナー。

英文学の理解、感受性、方向性を一にするような二人の官能の日々、完璧な恋愛はストーナーに初めてもたらされた精神と肉体の一致でもあった。これこそが彼にとっての聖なる結婚という化学反応だ。

二人の逢瀬はやがて引き裂かれることを理解した上での最後のクリスマス、雪の山小屋。

短かくも文学的な実りの多かった二人の結晶ともいうべき学位論文は何年か後、出版される。
キャサリンの献辞、W・Sに を扉に符して

このイニシャルはかの英語圏の文学王、ウィリアム・シェイクスピアと同じではないか。


そして時代背景。第一次世界大戦、禁酒法、世界大恐慌、第二次世界大戦。穏やかな時などないのだ。


従軍を匂わせるストーナーに、激昂するスローンの、戦争の後の人間の荒廃に関する話は、心に留めおきたい。

この教授は、武力によるものではない戦争についても言及する。それはストーナーの研究者としての未来を暗示してもいる。


〈感想をありがとうございます。この小説は小津好み、というか当時米国で振るわずフランスでヒットした、という背景もうなづけました。ストーナーの、見を控えて観をよくする態度や極限の悲哀に雪の風景に同化するところ、禅観すら覚えました。真に結ばれたキャサリンとの間に文学の子どもを残しましたが、その献辞のイニシャルがシェイクスピアに一致している点、冒頭のソネットがこだまします。ものの哀れを翻訳の大和言葉が掬い上げるようで。 こんな小説に再び出会いたいです。〉





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最終更新日  2024.03.26 10:52:25
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