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弁護士YA日記

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http://hinodecho-law.jp/
日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2014.06.04
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カテゴリ:東日本大震災
依頼された案件を解決するにあたり、他の専門家の助けを借りることがある。お医者さん、司法書士さん、税理士さん、建築士さん、その他色々な職種の方に日頃からお世話になっています。

先日は、急ぎで税理士さんにお聞きしたいことがあり、知り合いの税理士さんに片っ端からお電話したものの、皆様お忙しくてなかなかつかまらない。とうとう、相馬時代にお世話になった税理士のS先生にまでお電話してしまった。

結局は、S先生もお忙しくて、すぐにはお話できなかったのだが、折り返しのお電話を頂き、本当に随分久々に、お話することができた。

S先生には、相馬時代に事務所の経理を教えて頂いたほか、美味しく楽しい席を何度かご一緒させて頂いた。「なんて手のかかる弁護士なんだ!」と嘆かれつつ、蟹の爪の中にある身の食べ方とか、甲羅酒の飲み方、とか、一生、役に立ちそうなスキルも沢山教えて頂き、大変に感謝しております(笑)。

ただ、今も相馬にいらっしゃるS先生とのお話は、どうしても震災からの復興に及ぶ。あの悪夢から丸3年。復興どころか様々な問題が深刻化している現状をお聞きし、ただもう苦しく悲しかった。
私は毎日何をしているんだろう・・・。

話題は多岐に渡り、美味しんぼ問題についても意見交換。S先生との深い信頼関係があっての会話なので、詳細をご紹介することはできないが、最終的には「因果関係がはっきりしていない損害があんなにもクローズアップされる一方で、因果関係がはっきりしている損害はどんどん埋れていく」という結論に達した。

「因果関係がはっきりしている損害」とは何か。
原発事故発生により、様々な意味で環境が激変した方々が、先が見えない日々の中で、心身のバランスを崩してしまう、という損害である。
S先生のお話によれば、仮設住宅に入っていらっしゃる方の状態は特に深刻で、うつ病やアルコール依存性の方も決して珍しくはないという。

それはそうだろう。日常生活の基盤があってさえ、何らかの原因で強いストレスがかかれば調子を崩してしまうものなのに、突然、日常生活を基盤ごと失くした方が心身共に健やかで過ごせる方が不思議である。
少なくとも私は、同種の状況下で、3年持ち堪える自信はない。

この話をお聞きした時、昨年5月に、富岡町の方々が入居されている仮設住宅を原子力損害賠償支援機構による法律相談のため訪問したときの光景が鮮やかに脳裏をよぎった。あの時、相談に訪れた60代の男性に、「ここは強制収容所ですか」と語気鋭く問い詰められたのだ。

郡山駅からタクシーで30分以上かかる仮設住宅は、昼食を買うためにコンビニエンスストアに行く際にも車を出さなければならないほど、周囲に何もなかった。子どもの姿も声も聞こえなかった。

「富岡町という共通項しかない私たちが、この辺鄙な場所の狭く壁の薄い仮設住宅に押し込められ、いつ出られるのかも分からない。こういうのを強制収容所と呼ぶのではないですか。弁護士さん、違いますか。」

目を真っ赤にして、こみ上げてくる激情を大きな声で止めどなくぶつけてこられるあの方の想い、私は、ただただ目をしっかり見つめながら頷くことしかできなかった。
この訪問相談の詳細は以前に書きました。
http://plaza.rakuten.co.jp/yyy0801/diary/201305270001/

「因果関係がはっきりしている損害」は、日本中に存在しているにもかかわらず、注目されないまま忘れ去られる哀しみに堪えている。
でも、注目が集まっていない=無関心、ではないと私は思う。
損害のあまりの深さ、広大さに引き換え、有効な治療法も特効薬も提示できない難しさを直感的に感じ、無意識のうちにこの損害に蓋をしてしまっている人が多いだけではないだろうか。

かくいう私自身、「強制収容所」の事例を上げるまでもなく、目の前にいらっしゃる方のために、何の役にも立てていない悲しさは、この3年間、嫌という程味わってきた。率直に言って物凄く辛い。

でも、それでも、やっぱり、「因果関係のはっきりしている損害」から目を逸らしてはいけない。この損害について、万人に効き目のある速効性のある薬は存在しないが、敢えて対応策を挙げるとすれば、ひとりひとりオーダーメイドの「希望」を見つけることだろう。

私は、この視点を頼金大輔弁護士が自由と正義65号に寄稿された論稿、「福島第一原子力発電所事故から3年ー避難指示解除後における自治体の現状と課題」を拝読して感じた。
頼金さんは、様々な状況の方々のそれぞれのニーズに応えることの大切さを格調高く訴えておられ、非常に感動した。
ちなみに、自由と正義のこの号は、野村裕弁護士による石巻市役所からの使命感に溢れたご報告や、吉江暢洋弁護士による分かりやすい復興事業用地取得の問題点解説など、読み応えがある内容で、一押しですね。

どんなに苦しくても、「因果関係がはっきりしている損害」に果敢に立ち向かう勇気を持ちたいと強く思う今日この頃です。





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Last updated  2014.06.04 23:39:56
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