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弁護士YA日記

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日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2017.01.05
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カテゴリ:東日本大震災

原発事故に伴う強制避難は、ある日突然、着の身着のままで、住んでいた「地域」から追い出され、どこか別の場所に住むよう「強制」されることを意味する。

住んでいた「家」を突然失うことだけでも、非日常そのものだが、地震、台風、土砂崩れ、津波などの自然災害によって、または火事等によって、この非日常がもたらされることはある。

しかし、住んでいた「地域」を「突然」失うという事態は、原発事故発生前には存在しなかったのではないだろうか。

ここで指摘しておきたい。
「家」を失うことと、「地域」を失うことは質的にまったく異なる事態である。

「家」は多くの人にとってかけがえのない資産であることは間違いないが、居住するための「箱」である。誤解を恐れずにいえば、金銭換算が可能な代替性があるものが「家」である。
一方で、「地域」は、金銭換算ができない。「地域」には、「家」だけではない、「職場」、「近隣関係」、「友人」、「趣味」、「家族の歴史」などが詰まっている。「家」や「職場」は金銭換算ができるが、その他の要素を金銭換算することは不可能である。

また、地域は、その地域に住む住民がいてこそ成り立つ。
たとえば、「家」を失った住民が大勢いても、住民が存在する限り「地域」がなくなることはない。
住民がいれば災害等の規模にもよるだろうが、「家」やインフラの再建によって、「地域」は復興(広辞苑の定義によれば、「いったん衰えたものが、再びもとの盛んな状態に返ること」)することが理屈上は可能である。
そして、「地域」の復興が、住民一人一人の復興とも重なり合う場面も出てくるだろう。
逆に言えば、住民一人一人の復興が「地域」を復興させることに自然と繋がってくる。

しかし、その「地域」に住民がいない場合はどうか。
「地域」の復興とは何を意味するのだろうか。
そしてまた、「地域」に住んでいた「地域」を失った住民一人一人にとっての「復興」は何を意味するのだろうか。

・・・分からない。頭も心も痛くなるほどずっと考えても分からない。
この6年間、関弁連災害対策本部で事務局をしていたので、管内の様々な災害に弁護士会としてどう対応するべきかを事例を通して学んできたつもりですが、分かりません。
原発事故はやっぱり「自然災害」じゃない、「人的災害」だから、「家」を失った場合と「地域」を失うことは根本的に違う現象だから、自然災害の知見がそのまま活かせないということだけしか分かりません。

黙っていないで、何か意見があるなら対案を出せ、分からないとか言っている場合じゃないだろう、答えを出せ、何をして欲しいんだ、何が必要なんだ、どこに予算をつけてほしいんだ、どんな支援が必要なんだ?

そんなこと言われても分からないです!
対案がないと発言しちゃ駄目なんですか?
何もいらない、元に戻して欲しい、は対案じゃないんですか?
絶対に絶対に起きてはいけない事故だった、お願いだから、事故前に戻してください、じゃ駄目なんですか?

どこにもぶつけられない叫びがふつふつと心に渦巻いているので、あなた一体この6年間、そんなどうしようもないこと考えてきたの、それでも専門家なの、法律家失格じゃないの、と言われるかもしれませんが言葉にしてみました。

それでも、「地域」を失った人々のために、私たちができること、分からなくても私はずっとずっと考え続けたいと思っています。






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Last updated  2017.01.06 10:52:42
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