|
カテゴリ:読書日記
広島に原子爆弾が投下された日。 先日、小さい頃に読んで強く印象に残っていた「おこりじぞう」を図書館で発見した。 原爆投下直後、優しい笑顔のお地蔵さんを、はぐれた母親と間違えて、みず、みずとねだる女の子。 どんどん細くなる女の子の声を聞いたお地蔵さんの顔がみるみる憤怒の表情に変わり、怒りで見開いた目から、玉の涙が転がり出て、女の子の口に入る。水を飲んだ後、息絶えた女の子を見届けて、憤怒の地蔵の顔が崩れていく。 子供時代の鮮やかな記憶そのままの場面。ここまで人の心に強烈な体験を焼き付ける文学の力は凄いと思いながら読了すると、後書きに、こんな一節があり、なるほど、確かにこの作品には、原爆の持つ醜さが、まさしく「はりつけ」になっていると、腑に落ちた。 …児童文学の仲間うちで、原爆の民話を書きたい、と一人が提案し、すぐにみんな賛成しました。わたしも賛成しました。けれど、民話というものは、長い年月を風雨にさらされ、気がついてみたら残っていた、というものではないかとも思いました。それでも民話風の語り口、方法というものは、原爆という、人間の生活とは百パーセント反発する醜悪なかたまりを、原稿用紙にはりつけにしてしまいたい、というときの一つの道になるかもしれない、と考えました。 ずっと語り伝えなければならない日。 心を込めて家族で合掌しました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.08.06 19:04:24
[読書日記] カテゴリの最新記事
|