797050 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

弁護士YA日記

弁護士YA日記

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Profile

YYY0801

YYY0801

Calendar

Category

Free Space

〒420-0837
静岡市葵区日出町5-3
TEL 054-269-4590
FAX 054-269-4591
http://hinodecho-law.jp/
日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2022.09.23
XML
カテゴリ:留学
本当に不穏な世界情勢が続く中、現在、国連総会の一般討論演説が開催中です。NYタイムズ配信のビデオニュースでは、これまで、アメリカ、イギリス、フランス、トルコ、フィリピン、韓国、ウクライナ、ケニアの各首脳のダイジェスト演説が配信されていますが、その国にとって、今もっとも大事なことをその国らしい表現で伝えようとしていることが、とてもよく分かって非常に興味をそそられます。また、英語の発音とか表現の仕方とか、スタイルの違いも面白いですね。

さて、現在、米国イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)には、釧路弁護士会の伊藤啓太弁護士が、客員研究員として留学されています。

伊藤さんの研究テーマは、伊藤さんが地元で取り組んでいらっしゃるアイヌ民族の人権擁護のための活動をバックボーンにした「アメリカ・インディアンを中心に各国の先住民族の権利(特に漁業権)の水準を調査し,その発展に向けた理論を模索すること」だそうです。

伊藤さんとは、年度は違いますが、日弁連派遣のUIUCの客員研究員というご縁で初めてお近づきになりました。研究テーマをお伺いしたとき、本当に心から感動し、こういう方を派遣するために、日弁連の派遣制度はあるんだと心底思いました。アイヌ民族をアメリカの先住民族の権利と結びつけて考えようとされる視点が、テーマの公益性、地域密着性という観点から非常に優れていると思いましたし、釧路という地方で、日常業務に埋没し切ることなく、おそらく寸暇を惜しんで励まれたことと思いますが、日常業務ではなかなか使わなかったであろう英語を勉強してきた志にもただただ敬服しかなく、私自身、とても励まされました。

そんな伊藤さんから、この度、近況報告代わりにということで、釧路弁護士会向けに書いていらっしゃるイリノイ通信を送って頂きました。とても、活き活きとした筆致で、ユーモアを交えつつの、研究生活、日常生活、英語との向き合い方等盛り沢山の現在進行形の留学体験記、是非多くの方に見て頂きたく、伊藤さんから掲載許可を頂きまして、このブログにも転載させて頂きます。Vol.4までありますので、分割しての掲載になります。また、写真については、割愛させて頂きました。

伊藤さん、引き続き、心から応援しています!引き続き、充実した留学生活をお送り下さい。



イリノイ通信Vol.1
令和3年11月17日
              イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校 客員研究員 伊藤 啓太
1 大学と街
私は今年度,日弁連海外ロースクール留学制度により,米国イリノイ州のイリノイ大学に客員研究員として派遣されています。本年8月14日に渡米しました。イリノイ大学はシカゴ,スプリングフィールド,アーバナ・シャンペーンにキャンパスを構える総合大学で,学生数が5万1000人を超えるマンモス校です。

私が在籍している大学のロースクールは,そのうちのアーバナ・シャンペーン校に所在しています。アーバナ・シャンペーンは,自治体としては別々の市となっていますが,双子都市として,実質的に一つの街を形成しています。

街の規模としては,都市圏の人口は約23万人で,交通は大都市シカゴから南に飛行機で1時間,電車で4時間の距離です。北海道でいう札幌と釧路の間の感覚です。気候としても昼夜の寒暖差が激しいこと以外は,北海道と同様です。11月の寒さに他の学生は震えていますが,北海道から来た私には何ともありません。他方,私の借りたアパートの周りは,若い学生たちが毎晩のようにパーティーを開き,夜通し大音量で音楽を流しており,日常的な不眠に悩んでいます。

大学のキャンパスは両市にまたがっており,街の中心の大部分が大学関連の施設です。街の経済も大学を中心に成り立っています。こちらに来た当初は大学の規模の大きさに圧倒されました。上の写真は私が現地の空港に到着したときのものですが,その空港も大学が運営しています。
また,大学の図書館も巨大なもので,1300万冊を超える蔵書を抱えています。私は一度左の写真のメイン図書館の書庫に入りましたが,英語だけでなく世界の各言語の文献が揃っていて,日本語の本も古典も含め主要な文学作品はほぼ日本語版がありました。書庫をうろうろしていると,あまりの大きさに途中で迷子になってしまい,閉館時間までに出口に辿り着くことができませんでした。入り口が5階にあるということに最後まで気づきませんでした。膨大な蔵書がある一方,近年では図書のオンライン化が進み図書館自体の利用者が減少し,図書館閉鎖の話もでているようです。

大学の敷地内には日本庭園もあり,一度行ってみたところ,周りの自然とは調和していませんでしたがそれ自体としてはかなりよくできたものでした。

大学周辺にはリスやウサギがたくさんいてかわいいです。生ゴミに寄ってくるのもこちらではカラスではなくリスですが,個人的には日本のカラスが懐かしいです。

また,11月に入り,道沿いの楓の木の紅葉が始まり,目の保養になります。

なお,アメリカではよくある話のようですが,大学のフットボールチームのマスコットとしてかつてインディアンのイメージが使用されていました。フットボールはアメリカでは大変人気のあるスポーツで,試合のある日は街中がフットボール一色になります。マスコットのイメージはイリニ・インディアンの酋長イリニウィクです(このイリニがイリノイ州の語源と言われ,この点は北海道の地名の多くがアイヌ語に由来するのに似ています)。15年ほど前にこのマスコットの使用が差別的だとして変更を迫られたところ,ファンからはイリニウィクに対する愛着はあっても差別的な意図はないとして使用の継続が求められました。しかし,歴史的に見てそのような主張は通用しないということで,結局のところ変更になったようです。


2 研究

私の研究テーマは,アメリカ・インディアンを中心に各国の先住民族の権利(特に漁業権)の水準を調査し,その発展に向けた理論を模索することです。現在は,研究と基礎として,その分野の基礎的な書籍・論文に当たっています。

また,客員研究員には,それぞれに研究をサポートするホストの教授が就くことになっています。私のホストはHeidi Hurd教授です。教授ご自身は不法行為法・環境法等がご専門で先住民族の問題は専門ではありませんが,同じく研究者であったお父様がカナダの先住民族ファーストネーションズの研究を専門にされていたということでした。学期が始まった当初に他の客員研究員やその担当教授と共にディナーに招待していただきました。とても気さくな方でしたが,同時に私を助けるのだという使命感のようなものをお持ちで,アメリカの大学の懐の深さを感じる一場面でした。また,教授からはカナダの先住民族の歴史を扱った文献をプレゼントしてもらい,大変参考になりました。なお,そのディナーの際は他の教授からも「あなたが先住民族の研究をされる方ですか?」と聞かれ,教授連の中で以前に私のことが話題になったようでした。彼らからしても珍しい分野なのかもしれません。

客員研究員はロースクールの講義を2つまで聴講することができますが,残念ながら,先住民族・インディアン関係の講義はありません。何も受けないのもどうかと思い,現在刑訴法の講義をオンラインで受講しています。今学期もコロナの影響のために半数近くの講義がオンラインです。客員研究員は学生ではないので,ソクラテス・メソッドでも教授から当てられることはなく,高みの見物といったところです。学生の回答のレベルは私が卒業した日本のロースクールと変わらない気がしますが,ソクラテス・メソッドがスムーズに進んでいく点は違いを感じさせます。

ロースクールの図書館に行ってみると,多数のインディアン・先住民族関係の文献が所蔵されていました。また,興味深かったのは,連邦最高裁裁判官の伝記が数多く並んでいることでした。日本ではこのような伝記はあまりないと思います。しかも,大学の図書館だけでなく街の図書館にもたくさん並んでおり,社会の中に占める裁判官の位置づけが日本とは異なるのだろうと感じました。

ロースクールを離れると,イリノイ大学ではアメリカン・インディアン・スタディーズと題したインディアン関係の講座群があります。また,インディアンの学生団体としてネイティブアメリカンハウスという団体があり,先日そのネイティブアメリカンハウスが主催したイベントに参加してきました。
受付の方に私がイリノイ大学に来た理由を話すと,それであればGreat Lakes Indian Fish and Wildlife Commission(直訳すると五大湖インディアンの魚・野生動物委員会)を訪問するといいと言われました。GLIFWCは複数の地元インディアンの部族が,19世紀にアメリカ政府と結んだ条約の際に確保した漁猟権について,権利の実現のための漁場の管理等を共同で行っている団体のようです。大変興味が湧きましたので,ぜひ訪問したいと考えています。研究がある程度進んだ段階で,自動車を購入し,そういった現地調査も開始する予定です。


3 大学生活

客員研究員には,キュービクルというデスクが割り当てられ,他の客員研究員やJSDと呼ばれる学生と机を並べています。JSDはPh.D(日本でいう博士号)の取得を目指す学生で,また大学の中での就職を求める立場なので客員研究員とは真剣度が違います。なぜか欧米人はおらず,アジア・アフリカ出身の学生が多いです。一日中,机にかじりついて勉強している学生もいて,見ていて身が引き締まります。たまに私が勉強の邪魔をして話しかけますが,笑顔で対応してくれます。
研究以外にも大学では客員研究員のために様々なプログラムを用意してくれています。毎週行われるワークショップでは法学の各分野の先端的諸問題についてゲストの講師からのレクチャーがあります。私も都合が許す限り出席し,よくわからないながらわかった風な顔をして聞いています。また,イリノイ大学には多くの海外からの学生がおり,異文化交流のイベントも各種行われています。

11月11日にはロースクールでIntercultural Nightと題したイベントがあり,私は他の日本人留学生とともに日本代表として参加しました。今年日弁連から派遣されたもう一人客員研究員の方が在日朝鮮人ということがあり,日本代表は韓国代表と合同で参加することになりました。話題性としてはそれで十分であり,私としては付け足し程度でブースにアイヌの写真でも飾ってくれればいいと思っていました。しかし,知らないところで話が進んでおり,私がアイヌの切り絵を製作し,さらにブースを訪れた人に切り絵製作を体験してもらうということになってしまいました。そもそも手先が不器用なため,出来上がったものの質は非常に低かったですが,このようなイベントで本物の文化を伝えることはできないと開き直り,何とか無事に終えることができました。


4 日常生活

こちらに来てまず心配だったのは,当然ですが英語のことでした。空港やホテル,大学では,わかりやすい英語で話してくれるためか特に問題ありませんでしたが,地元の人のスラング(俗語)は全く分かりません。一度訳も分からずバスの中でおじさんにまくし立てられたときはつい日本語で返してしまいました。いずれにせよ私の語学力不足は明らかなので,まずは,リスニング対策としてテレビを買い,食事中にニュースやスポーツを見たり,昔日本でも放映されていた「アーノルド坊やは人気者」というホームドラマを見て,笑いながら英語を学んでいます。

次に心配だったのが食事の点ですが,世界中から学生が来ているためか世界中の料理を食べることができます。中華料理,メキシコ料理,タイ料理などが人気です。中でも中華料理店が街の至るところにあり,私がグルメでないこともありますが基本どこもおいしいです。また,大体の店がテイクアウトできるようになっていて便利です。日本食では寿司が大人気で,寿司店は当たり外れはあるもののいくつかあります。しかし,聞いてみると,どの店も経営しているのは日本人ではないようです。また,寿司は特にですが,外食は値段が高く,10ドル(現在のレートで約1150円)以下で済ますのはほぼ不可能です。そこで,週の半分以上は自炊をして費用を浮かせています。中でもイタリアンは安く,例えばパスタにすれば2~3ドルで満腹なるので助かっています。食事には概ね満足しています。

また,部屋は賃貸を借りています。交渉の際,不動産会社から,それなりの部屋とホラー映画の舞台のようなあばら屋を紹介されましたが,皆様からのカンパを思い出し,前者に入居することにいたしました。改めて御礼申し上げます。

なお,渡米前から車を買うべきか悩んでいましたが,街中をMTDと呼ばれるバスがきめ細かく周回しており,しかもイリノイ大学の学生は基本無料で乗れるのでとても便利です。普段の生活に車は必須ではありません。ただし,釧路同様に郊外に大型店舗が軒を連ねているので,車があれば世界が広がることはたしかです。また,シカゴやインディアンの居留地への訪問のためにも来年には車を買う予定です。
また,普段は椅子に座って本を読んだりパソコンを操作する時間がほとんどですので体がなまります。エクササイズとして,休日には街の探索も含めてジョギングをしています。加えて,大学から地元の社会人フットサルチーム「Oldengrays」(直訳すると灰色のおじさん達)を紹介してもらい,入団して毎週汗を流しています。

最後までお読みいただきありがとうございました。
以上

続きは、​こちら​です。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2022.09.23 12:32:02



© Rakuten Group, Inc.