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カテゴリ:アメリカニュースメモ
これまでも何度かお伝えしてきた鎮痛薬オピノイド関連訴訟の最新ニュースです。
大手薬局チェーン(CVS,Walgreens)が、それぞれ、約50億ドル、両者併せて約100億ドルの資金を拠出して和解に応じることを発表しました。今後10年以上かけて支払っていく内容のようです。原告は、数千もの州政府、地方自治体政府、Tribal governmentと呼ばれるNative Americanの自治政府とのこと、参加する当事者数、和解金額、どれをとっても、凄まじい規模ですよね。 もっとも、原告の大多数が和解に合意することが和解成立の絶対条件ということなので、まだ成立するかどうかははっきりしていないようです。 それにしても、これまで、責任を激しく争っていた薬局チェーンが、自ら巨額を拠出することになる和解に参加することになったなんて、本当に驚きのニュースです。 薬局の主張としては、自分たちは医師が処方した処方箋に従って薬を顧客に渡しただけで何の責任を問われる余地がないというもので、私的には、そりゃそうですよね、と正直思ってしまいます。処方箋を持って行く客が求めていることは処方箋通りの薬を処方してもらうことであって、薬局には裁量がほとんどないような気がするからです。 しかし、この主張が、昨年11月に陪審評決で否定されたのに続き、今年8月に連邦裁判所で裁判官による判決でも否定され、薬局の責任が認められたことが、今回、薬局が和解に参加する大きな転機となったとのことです。原告代理人、良く粘りましたね。 既に巨額和解に合意していた製造業者、卸売業者に加え、薬局が加わることで、和解基金の規模、枠組みがはっきりしていくことが期待される状況において、今後の関心は、この巨額のお金をどう分配し、どう使っていくかを決めることに移っていくようです。 先行する製造業者、卸売業者の和解内容は、薬物使用の教育システムや啓発教育、患者の治療等、州の薬物対策政策のための基金を設置したり、製薬会社や販売業者とは独立した情報収集機関を設立し、流通量を監視するというものですので、薬局の参加でも基本的にこの枠組みは変わらないのでないかと思われます。 数千の当事者、しかも、州政府や自治体政府が原告という状況で、上記のような、単純な損害賠償とはかけ離れた配分案を作成する和解条項作成は、もはや立法措置に等しい作業ではないかと推察され、司法の役割を深く考えさせられます。 ちょうど日本では、今、10年以上続いた複数の原発事故損害賠償請求訴訟が最高裁で確定し、原子力損害賠償紛争審査会で、判決などの分析調査が行われ、長らく改訂が行われていなかった中間指針が改訂される方向で議論が進んでいます。 オピノイド訴訟も2013年頃から始まっているそうなので、この約10年間、日米それぞれの司法が大規模な不法行為にどのような役割を果たし、どのような結果を社会にもたらしたのか、考察してみたいと、ふと思いました。形にできるか分からないですが、自分なりの視点と軸を持って、司法の役割を考え続けていきたいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022.11.05 10:47:02
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