秋色
わたしは「秋色」が好きだ熟れた柿の実の赤枯れ葉の色高く澄んだ 深い空遠くまで染めていく夕日葡萄の深い赤紫針葉樹の深い緑冷たい夕風は すこし生成り色で明け方の風は ほのかに透明な群青色夏には きっぱりとした原色が似合うけどこの移ろいゆく つかの間のあいまいな季節の あいまいな色が好き同じ あいまいな季節でも「春色」というと 淡いパステルカラーや 桜色一般的に 女性が好む色とされているけれどわたしは あまり好きではない薄ぼんやりとした色が 嫌いなわけではないのだけれどなぜだか このレモンイエローだのペパーミントグリーンだのサーモンピンクだのという『パステルカラー』が どうもいただけないのである同じようないろでも翡翠色だの朱鷺色だのだと何だか「いいな」と ほっとする古来 日本色のあいまいさとはきっと そういう微妙な感覚的なものなんだろう季節によって 風の色が少しずつ 変わっていくように風の色で 街の色が少しずつ 変わってゆくように