人気作と人気公演の間〜METライブビューイング「あなたが選ぶベストテン」雑感
少々前の話で恐縮ですが、METのライブビューイング、10周年記念として行われていた人気投票、「あなたが選ぶベストテン」の結果がでました。 詳しくは以下のサイトで見られますが、ざっと順位を書きますと、 1位「カルメン」、2位「メリー・ウィドー」、3位「ワルキューレ」、4位「エフゲニー・オネーギン」、5位「ウェルテル」、6位「連隊の娘」、7位「ランメルモールのルチア」(デセイ主演)、8位「フィガロの結婚」、9位「ニュルンベルクのマイスタージンガー」、10位「湖上の美人」となっています。 http://met-live.blogspot.jp/2015/09/10.html 1位の「カルメン」は、個人的にも、全体を見て1作〜作品の魅力と出演者の魅力、公演のレベルの高さ〜と言われたら私もこれを選ぶだろうと思っていた演目なのですが、ほかも含めてとても興味ふかい結果でした。 2位の「メリー・ウィドー」は、コアなオペラファンとしては意外な演目かもしれませんが、この作品自体の人気がとても高いそうで、主催者によれば2014−15シーズンの演目のなかで一番入りが良かったそうなのです。「400席ある東劇が満席になったのは初めて」だとか。 3位の「ワルキューレ」も、演目の魅力と、カウフマンら出演者の魅力、両方あるのだろうなと思いました。 4位以下で面白いなと思ったのは、演目というより出演者の人気とか、全体を見た上での満足度が重要なんだな、ということです。(「フィガロ」と「マイスタージンガー」は演目自体の力も大きいと思いましたが) 4位の「オネーギン」はまずネトレプコ人気が大きいでしょうし、全体の演奏、演出のよさもあるのでしょう。5位の「ウェルテル」も間違いなくカウフマン人気。ソプラノとテノールの人気トップスターのおかげで、ややマイナーな作品が上位にきました。 6位の「連隊の娘」はちょっと驚きでした。演目自体もマイナーですし、今回のアンコール上演の演目にも入っていなかったからです。もちろん素晴らしい公演です。フローレス&デセイの魅力は鉄板ですし。なので、演目というよりキャストが素晴らしかったからからの人気なのではないかなと思えました。 7位の「ルチア」、これはネトレプコ主演のものも上映されましたが、デセイ版が選ばれたというのは、やはり彼女の十八番であり、そのすばらしさが伝わったからでしょう。 そして10位に「湖上の美人」が入ったことが、やはり一番びっくりしたことでしょうか。ほとんどの方は名前も知らなかったオペラだと思いますし。でも見てみたら「すごかった」。だからこその結果なのでしょう。 ランクインした作品では、総じて、歌手たちは、得意な作品を歌って本領を発揮しています。「ワルキューレ」のカウフマンしかり、「オネーギン」のネトレプコしかり。彼ら彼女らはイタリアオペラも歌うわけですが(カウフマンはMETライブではイタリアオペラはなかったかも)、一般的に人気が高いとされるイタリアオペラを差し置いて?得意なものが選ばれていることにはとても納得できました。 一方で、常に人気オペラの上位に来る「椿姫」「トゥーランドット」「アイーダ」などはランクインしなかった。やはり、見たあとの満足度が、ランクインしたものに比べて今ひとつだったのでしょうか。あるいは、足を運んだ人は多かったと思いますが、ベストテンに投票するような熱心なファンは少なかったのかもしれません。 ということは、マイナーな作品でも(マイナーといっても限度はありますが)、公演自体がすばらしいものの映像なら、たとえばオペラの入門のような内容の講座でも、紹介するべきなのかもしれません。どうしても、メジャーな作品を、と考えてしまいがちなのですが。。。 と、最後は自分の仕事に引きつけて考えてしまいましたが(苦笑)、そう考えてしまうほど、興味深い結果だったといえるかもしれません。