2016年08月の記事一覧 | 加藤浩子の　La bella vita（美しき人生）

「ようこそオペラ！」重版になりました。

　「オペラ入門」のスタンダードな１冊をめざし、２０１１年に刊行した「ようこそオペラ！」（春秋社）。　これまで講座などでお話しさせていただいた内容に手を加え、オペラって何？に始まり、スタンダードな演目、見比べ聴き比べの魅力、歴史、鑑賞ガイドなど、これは！と思うツボを網羅し、オペラ入門のテキスト的な１冊になったかな、と思っています。　すこしずつですが、受け入れていただき、刊行から５年にして、重版が決まりました。　店頭に並ぶのは９月の末になりそうですが、未チェックの方、この機会に、ぜひご興味を持っていただければ幸いです。　詳細はこちらでご覧ください。　http://www.shunjusha.co.jp/detail/isbn/978-4-393-93557-6/

August 30, 2016

夢見た1日〜ドロットニングホルム宮廷劇場、ミンコフスキ指揮「ドン・ジョヴァンニ」

　たぶん、今年最後の長旅に出ています。　今回のメインは「続バッハへの旅」。北ドイツのバッハゆかりの地をめぐり、ケーテンのバッハフェスティバルを聴く、２年に１度のツアーです。毎年やっている「バッハへの旅」は、中部ドイツのバッハゆかりの地をめぐり、バッハの足跡はほぼ網羅するのですが、唯一、遠すぎて外してしまうバッハゆかりの地が北ドイツ。それで、そこを中心のツアーを時々やっています。　今回は、バッハめぐりの頭に、アムステルダムでコンセルトヘボウオーケストラを聴く日程（希望者のみ）もつけましたので、すべての旅程をいれると１３日間。　とはいえ、こういう機会に、プライベートで何か別のものも聴ければ聴いておきたい、という欲張りな私は、ツアー前後に何かないかキョロキョロします。今回、引っかかったのが、スウェーデンのストックホルム郊外にあるドロットニングホルム宮廷劇場で上演される「ドン・ジョヴァンニ」でした。　ドロットニングホルム宮廷劇場は、１８世紀の後半に建てられた劇場がそのまま残り、使われているという、とても珍しい＆貴重な劇場です。席数は５００に満たず、シャンデリアはいまだに蝋燭、そして、当時の舞台機構がそのまま残っているのです。嵐を起こしたりする機械仕掛けも手動。　この劇場、本格的に使用されるようになったのは戦後のこと。ひんぱんに使われるようになったのはここ２、３０年のことのようです。オペラやバレエが、夏の間だけ、２、３演目上演されます。オペラはバロックものが多く（機構が生かせるから当然でしょうか）、オーケストラは宮廷服を着て演奏することが多いよう。　私がこの劇場のことを知ったのは、９０年代に、ここで収録されたピリオド楽器によるモーツアルト・オペラの映像（LD)を見てからです。その頃はまだピリオド楽器のモーツアルトオペラは今ほど一般的ではなく、まだまだ新鮮でした。アルノルト・エストマンの指揮もきびきびと新鮮で印象に残りました。彼の「ドン・ジョヴァンニ」は、しばらくこの演目の愛聴盤でした。　それから２０年以上がたち、念願のこの劇場デビューをすることができました。それも、「ドン・ジョヴァンニ」で。　今回、ドロットニングホルム宮廷劇場に来たい！と思ったのは、何より指揮者と演目です。マルク・ミンコフスキの「ドン・ジョヴァンニ」だったからです。彼は昨年からここで、モーツァルトのダ・ポンテ三部作を指揮しており、昨年がフィガロ、今年がドンジョヴァンニ、そして来年が「コジ・ファン・トウッテ」です。今回、下見をして、よかったら、来年、「コジ」を入れたツアーを作れればいいな、という考えもありました。　結果として、とても素晴らしい体験ができました。　まず、宮殿へのアプローチが素晴らしい。ドロットニングホルム宮殿は、それ自体世界遺産なのですが、ストックホルム郊外といっても、湖に沿ってかなり行ったところに、湖に面して建っています。もともと夏の離宮として建てられたそうですが、今は現国王一家の住まいでもあるとか。ちなみに国王は自分で運転して移動するそうです。日本とは全然違いますね。　ストックホルムは、一方がバルト海、一方がこのメーラレン湖に面している水の都。ご存知のように北の街ですから、ほんとに夏らしい、爽やかで快適な日は１年に３０日くらいしかないそうです。その季節、メーラレン湖は船がさかんに航行します。今回も、ストックホルム中心部から船に乗りました。　鑑賞当日は、とてもラッキーなことに好天。（これが雨だったら、船でのアプローチは目も当てられません。。。）湖の上からストックホルム旧市街の街並みを、そして森や、その間に点在するしゃれた家々を眺めながら１時間ほどのクルーズは、とても快適でした。宮殿の建物が見え、ぐんぐん近づいてきたときは息を呑みました。想像したよりずっと立派な宮殿だったからです。　湖のほとり、フランス式の大庭園を背後に控えて立つ宮殿は、典型的なバロック時代の建物。インテリアもそのまま残り、タイムスリップさせてくれます。開け放った窓から見える湖と空の青が、今どこにいるかを教えてくれる。最高です。　劇場は、宮殿の建物の脇に、独立して建っていました。外観もシンプルなら、なかもそう派手ではありません。ホワイエにあたる場所は、いくつもの小部屋に仕切られ、１８世紀の衣装や楽器が飾られていました。　劇場内部は、セピア色、といいたくなる壁の色と意匠。舞台は奥行きが２０メートル近くあり、舞台前の左右の壁には楽師用のバルコニーが残ります。客席はベンチで、座り心地はいいとはいえませんが、演奏の素晴らしさが痛いお尻を補ってくれました。　公演の詳しいレポートは、来月発売の「音楽の友」に書きますが、とにもかくにもミンコフスキの推進力にみちて柔軟な指揮が素晴らしかった。音楽が前へ前へと進んで行く。同時にとても緻密で、各パートの音が生き生きとして、人間が戯れ合っているような生命力に満ちていました。うーん、彼の考えるモーツアルトが立ち現れたな、という感じでしょうか。　Ivan Alexandreというひとの演出（詳しくは記事をご参照ください）は、装置はシンプルですがとても動的で、ミンコフスキの指揮とよくあい、一体化していました。歌手も若手ばかりですが、指揮、演出にぴたり。あるいみ理想的なモーツアルト・オペラだったかもしれません。　終演後、ミンコフスキに短いインタビューができましたが、こちらも記事をご覧いただければと思います。ひとつだけ、彼が、この三部作を、「大好きな日本」でやりたい、と思っていることをお伝えしておきます。　開演前、明るかった空も、１１時近い終演後にはとっぷりと。ライトアップされた劇場が、宵闇に浮かび上がって幻想的な情景でした。　

August 24, 2016

２年ぶりに、びわ湖ホールの「オペラ入門講座」を担当します！テーマはイタリアオペラ！

講座のお知らせが連続して恐縮ですが、関西では、２年ぶりに、びわ湖ホールの「オペラ入門講座」を担当します。　いちばんの目的は、年度後半に上演されるふたつのドニゼッティ・オペラ、「ドン・パスクァーレ」と、「連隊の娘」の楽しみ方をご紹介すること　両方とも、とくに日本ではあまり上演の機会に恵まれないオペラなので、魅力をしっかりご紹介できればと思っています。　もちろん、オペラの楽しみ方の「イロハ」もお話しする予定です。とくに、ドニゼッティの生まれ故郷でもあるイタリアのオペラを中心に、オペラの楽しさをお話しできればと考えています。　詳細は以下をご覧ください。　https://www.biwako-hall.or.jp/performance/2016/02/04/31-2.html 　関西のみなさま、お待ちしています！　

August 16, 2016

秋の学習院生涯学習センターのオペラ講座は、「オペラでわかるヨーロッパ史」、新展開です

　残暑お見舞い申し上げます。　このところ、ご無沙汰ばかりで申し訳ありません。　ちょっと気が早いですが、秋からの講座のご案内です。　定期的にオペラ講座をもたせていただいている学習院生涯学習センターでは、「オペラでわかるヨーロッパ史」関連の講座を開講いたします（９月から）　学習院のほうでは、もともと、拙著「オペラでわかるヨーロッパ史」が刊行される前から、この内容で講座をもたせていただいていました。本は、講座でお話ししたことがベースになっています。　ですので、今回は、新しい材料をもとに（たくさんあるんです！）、「オペラ」と「ヨーロッパ史」について解説いたします。蛮族の侵入（アッティラ）から、ジャンヌ・ダルク（ジョヴァンナ・ダルコ＆オルレアンの少女、火刑台上のジャンヌ・ダルク）、中世ドイツ職人社会（ニュルンベルクのマイスタージンガー）、ジャポニスム（蝶々夫人）まで、内容は多彩です。　http://open.gakushuin.ac.jp/course/detail/2016/B/042/ 　講座後には有志でランチ会をしています。オペラおしゃべりも楽しいですよ！お待ちしております。　

August 16, 2016