【令和の奇ゲー】The Stillness of he Wind【美しくも残酷な最期の時間を過ごすゲーム】
見渡す限りなにもない荒れ果てた荒野の中で年老いた主人公である「タルマ」は暮らす。かつてタルマは家族にも恵まれ子供たちの声で賑やかな暮らしをしていた。しかしながら一人、また一人と村を去っていき今では年老いた彼女だけがそこに暮らしている。それでも彼女はそこを離れようとしない。朽ち果てつつあるヤギ小屋やチーズ小屋にもほど離れた「ただの岩」にも風車にも彼女にとって大切な思い出だ。彼女は愛情や絆に溢れたかつての思い出と共に生きている。時折届く手紙が彼女が知る唯一の外界の情報だ。その手紙(多くは身内の都会の話)たちはタルマにとって小説のような物語のようなどこか他人事のように感じてしまうものとなっている。彼女はただただ植物を育てたりヤギから乳を搾ってチーズを作ったりニワトリの卵を回収したり夕飯に卵料理を食べて寝るだけのゆっくりゆっくりのんびりと静謐な時間が流れていく。老婆なので歩みも行動も凄く遅い。しかし、後半になるにつれて自然の厳しさと共に親族にも恐るべき不幸が訪れることになる。ある日見た夢。タルマの家の前で佇む白い人影からおびたたしい数の黒い人影が離れていく。白い人影だけはひとりぼっちでそこから動かない。その隣には老いたタルマ。白い人影は過去のタルマなのだろうか?また、ある時に見た夢。彼女の家から左へと映像が流れていく。そこには夥しい数の墓。そして禍々しいほどに巨大な建物。この光景が意味するものとは一体。ある時狼が現れた。狼は彼女の大切な山羊を殺した。当然のように。やがて黒い雨が降ってきた。潤沢にあったチーズも。全てダメになっていた。植物は枯れ果て山羊は弱り料理を作るための薪もない。どんどんどんどん心が折れていく。早く楽になりたい。と、プレイしながら思うようになる。まるで真っ暗なトンネルに迷い込んでしまったように。エイミーが行方不明になったという。エイミーとは恐らく、タルマにとって姉妹に当たる人物だと思われる。その後の手紙によると、エイミーは踊り狂って全身の骨がねじ切れバラバラに砕けて死んだらしい。以前届いていた差出人: ミーと書かれた手紙がエイミーから届けられたものだと分かったのは先ほどの訃報を受け取った後のことだった。届けられた時は一体この手紙はなんだろうと思っていた。異常なほどに希望に満ち溢れたそれはよくよく読むと狂気すら感じるものであった。この手紙をしたためた後、エイミーは踊り狂って亡くなったに違いない。親切に手紙を届けてくれたり山羊の食べる草などの貴重な物資を物々交換してくれた人も遂には来なくなってしまった。全ての光が消えた。外に出たところで酷い風が吹きすさび何もすることができず弱り切って満足に動くこともできない。タルマには最早最後に届けられた手紙を読むくらいしかやることがない。眠りにつくタルマ。もう目覚めないでくれとも考えてしまう。深すぎる雪に閉じ込められた家。タルマはまだ家から出てきてしまった。生きていることの喜びよりも哀しさが勝ってしまう。人間というものの生命力の強さ。それは時に残酷でもある。誘われるようにして雪に埋もれた狼を追い払うためのショットガンを手にするタルマ。よく生きた。それしか言葉がない。そしてエンドロール。最終的には真っ暗な画面になってうんともすんとも言わなくなってしまった。ゲームを終えたその日、私はなかなか寝付けなかった。我々は数多の最先端テクノロジーや享楽と引き換えにして「タルマ」を忘れ警戒心を怠ってしまった。その結果として極度に漂白され多くの人々は自由を差し出し相互に争う仕組みが作られた今の個の世界がある。この怒涛の嵐吹きすさぶ多くの墓標が待ち受ける新世界で私は家族を守り切って死ねるだろうか。その途方もない労力を考えると元々弱々しい光明も消えそうになる。Twitter↑風流先生おすすめ商品掲載中経由購入などありがとうございます!1984 (角川文庫) [ ジョージ・オーウェル ]楽天で購入風が吹くとき [ レイモンド・ブリッグズ ]楽天で購入黒い雨 (新潮文庫 新潮文庫) [ 井伏 鱒二 ]楽天で購入ジブリがいっぱい SPECIAL ショートショート 1992-2016【Blu-ray】 [ 宮崎駿 ]楽天で購入すばらしい新世界〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫) [ オルダス・ハクスリー ]楽天で購入ゼイリブ 【通常版】【Blu-ray】 [ ロディ・パイパー ]楽天で購入