『寅太郎伝説その2』
~真夜中の病院~宇宙人熱も冷め、毎日アルバイトに精を出していた寅太郎。サッカーに興じていた時に折れた膝の後遺症で、ある日突然膝が曲がらなくなってしまった。大騒ぎの末、友達に病院に連れていってもらい、簡単な手術入院をすることになった。物心ついてから病気らしい病気をしたことがない寅太郎は、いたって元気だ。手術後6時間は物を食べてはいけないと言われても、お腹がすいて仕方がない。おにぎりやら、カステラやら、チョコレートやら、枕元に並べて時間が来るのを楽しみに待っていたが、様子を見に来た看護士さんに、目につかないところにしまっておくように注意される。突然の入院だったため、空いていたのは、おばあさんが三人入っている四人部屋。なにやら話しかけられたりもする。話がかみ合わないこともあるが、「まあ、お年寄りだし・・・」と思っていた。夜になると、看護士さんが「この部屋はちょっと賑やかいかもしれないけれど、いろんな人が集まっちゃってる部屋だから・・・」と事前に忠告に来てくれたが、「まあ、おばあちゃんだし・・・」と思っていたらしい。ところが真夜中になると、隣のおばあさんは演歌を歌い出すわ、前のおばあさんは宙に誰それが浮いていると言い出して、その見えない人と話を始めるわ、大きな声を出す人は看護士さんと夜のお散歩に出かけるわ・・と、そうとう賑やかだったようだ。「早く退院したい・・・」と一晩で病院を後にした寅太郎君だけれど、暗い病室の中で身動きもできず、宇宙人より身近でかつ奥の深い「生きていく」姿の一片に触れた一晩だったようだ。よかったら、クリックしてくださいね! ↓ ↓ Thanks!!