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カテゴリ:読みきかせ
日本人らしい生活感を絵本にさせたら右に出るものはいない、と私が考える林明子は、ゼロのご贔屓の絵本作家のひとりである。『おふろだいすき』『こんとあき』。どちらも言わずと知れた人気作品だが、これらに引き続きもう1冊お気に入りができた。
常のごとくろくにタイトルも確かめずに乳幼児コーナーから数冊引っ掴んで急いで自動貸出機を通して持って帰った本の1冊。10秒でも20秒でも図書館にいる時間を短くしないとゼロが館内の「迷惑」発生機になってしまうのである。その中での今回の大当たりがこれ。『きゅっきゅっきゅっ』。このタイトルに心当たりがなくとも、セット売り↓でご存じの方は多いのではないか。
1歳のお誕生日の贈り物として人気の箱入「くつくつあるけのほん4冊」。ただしうちの子たちのように、本はさっぱりの赤ちゃんもいないわけではないので、あらかじめリサーチは要るかも。1冊ならともかく4冊組なので。うちでは読書家のゼロでさえ『きゅっきゅっきゅ』以外は「やーない(要らない)」と言う。『おつきさまこんばんは』はもしかしたらそのうち楽しめるかもと思っているのだが、どうだろう。『おててがでたよ』はなんだか「それくらいオレだってできる!」的にはりあっちゃうみたいで楽しめないらしい。傍目には微笑ましくもばかばかしいのだが。 そう言えば私も高校生のときに読んだ『桃尻娘』の主人公が初読ではまったく受け付けなかった。話自体は好きで、同じ大学の同じキャンパスに進学して読んだ3巻目はレナちゃんに共感もした。そこでハタと気がついたのが、高校生の癖に子どもそのままに振る舞っていた彼女に、自分はどうも嫉妬していたらしいということ。ずるい、と。1巻目が児童文学、2巻目がその次くらいで3巻目からが青春小説なのだと思うと話の構造も腑に落ち、性格付けにも納得いき、そして3巻で自分と「友だち」になったレナちゃんの子ども時代として改めて見返したらばするりと読めて、何に腹を立ててたんだかという感じに。 『きゅっきゅっきゅっ』はスプーンでスープを飲めるようになった幼児が、一緒に並んでスープをいただくねずみくんやうさちゃんやくまさんのお世話をしてあげるお話。こぼした子はぼくがきゅっきゅっきゅっとふきふきしてあげるのよ。すっかりたべおわったら、あら、おくちのまわりがよごれてる子だあれ。ママにふきふきしてもらって、きゅっきゅっきゅっ。 自分でできるよ、だけでなくお世話だってできるよ、がいいらしい。ぬいぐるみを手に聞いているときは、ゼロもお世話をしてあげるふり。自分がテーブルにこぼした飲み物を台布巾で拭きとるのが好きな子なので、ふきふきはお手のものなのだ。「きゅっきゅっきゅっ」と声に出しながらタオルを持つ手を動かしている。 何も持たずに私の膝で聞くときは、自分がお世話をしてもらうモード。お腹をふき、お手々をふき、あんよをふく段になると足裏がくすぐったいのまで忠実に再現。もちろんラストはたっぷりと。しかしこういう甘えっぷりは1歳児のものではなかろうか。いや、癇癪の起こし方とか道でひっくり返って足ばたばたは2歳らしい反抗期そのものなんですが。まあいろいろ凸凹はあるよね。 林明子はタッチも描写も繊細で、うまいなあといつもうならされる。ほっぺたが赤すぎるのだけが個人的に苦手。そこは『はじめてのキャンプ』にしても。あとこの『きゅっきゅっきゅっ』は背景のレンガ色が少し濃すぎるかなあ。ぬいぐるみのバックとしては悪くないんだけど赤ちゃんの肌の色を濃く見せすぎているように思う。なおぬいぐるみのうち、くまだけが左手にスプーンを持っている。こういうさりげなさは凄みがある。あたりまえにさらっとやれるのだ、この画家は。 裏表紙まで物語のその後が描かれるのはいつもながらのおまけ。『はじめてのおつかい』もそうだけれど、このエピローグが子どもに本の中の世界が実在することを信じさせる効果を大発動するのだ。あ、まだお話つづいてる!というお楽しみでもあり。子どもがしあわせになるツボを心得ている作家さん。 ↓よろしかったら押してください お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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